これから、大阪市役所で何が起ころうとしているのか!
これから、大阪市役所で何が起ころうとしているのか!
 〜市民と職員の熱意と良識で真の大阪市改革を
<成瀬市労組委員長に緊急インタビュー>

2005年3月20日


Q1.いわゆる「厚遇な福利厚生問題」に大量のメールが市労組によせられていますね。

A 昨年10月26日時点での市労組ホームページへのアクセス件数は、累計5万件、2005年3月15日現在で8万件を超えました。市役所の労働組合でホームページを持っているのは市労組だけですからね。最近では、1日700件が最高です。これまでの労働組合のホームページでは例がないでしょうね。マスコミ報道、とりわけ、2005年2月4日の連合系市労連と市当局との団体交渉のテレビ報道があった後は、1日140件を越えるメールが寄せられました。この間のメールだけで672もあります。そのほとんどが労働組合に対するすさまじいほどの批判と抗議のメールです。しかも市労組のホームページを連合系市労連と誤解して送ってくるものが大半です。組合が違っていても伝わるものだと思っている方もいるかもしれませんね。しかし、これだけのアクセスとメールがあったことは市政刷新の貴重な財産ですね。

Q2.大阪市は、都市経営諮問会議を解散し、座長だった本間正明阪大大学院教授を解任しましたね。 

A 4月から市政改革本部を立ち上げ、諮問委員8人の方は改革本部に移るよう要請したんでしょ。ところが本間正明氏だけは解任されたわけですね。本間氏は大阪大学大学院経済研究科の教授、「大阪市都市経営諮問会議」の座長で小泉構造改革の理論的支柱となる人物。経済財政・郵政民営化担当相の竹中平蔵氏らとともに国の「経済財政諮問会議」のメンバーです。氏はイギリスに留学し、サッチャー首相が推進した「NPM行革」を研究してきた人です。ところが、関市長をはじめとする大阪市と本間氏の対立が明らかになってきたのは、氏が提案した総務省からの人材受け入れ、自らの市顧問就任、諮問会議タスクフォースメンバーの跡田直澄慶応大学教授の市長補佐官起用などの「人事の押し付け」に対する市当局の反発が原因と言われています。実際、根深いところでは国がすすめる道州制、太田府知事が主唱する「大阪都」構想(府と市の合体)と市が言う「スーパー指定都市」構想(府から独立した指定都市)の激しい対立があったのでしょう。げんに、本間氏は大阪府の行財政改革会議の顧問も務めており、関経連のシンクタンクと言われる(財)関西社会経済研究所の所長までしています。市長補佐官に名があがった跡田氏などは「大阪市だけでなく堺市も含めて大きな大阪都をつくった方がいい」という積極論者ですからね。奥田日経連会長の弟の奥田勉(株)大丸会長も諮問委員だったわけだし、まだまだ、バックラッシュがあると思いますよ。

Q3.福利厚生事業や手当の見直しをはかる、大平助役を筆頭とする「福利厚生事業等改革委員会」が1月13日に70億円削減の改革案を発表、引き続き、月27日の市会財政総務委員協議会には削減を180億円まで拡大、そして、2月18日には06年度までに240億円規模に削減することを公表し、今予算市会で審議されていますが、労使間ではなにがポイントなんでしょう。

A 1月27日の追加削減110億円は、最初の70億円削減とは違い、質的に大きな変化があります。一つは市健康保険組合を解散させ、市職員共済組合に統合する決断をしたこと、二つには市職員互助組合の労使負担割合を1対0にし、事実上福利厚生事業の外注化も辞さない判断をしたこと、三つには国の介入を受け入れ、管理職手当や主任手当を廃止し、成績主義賃金、成果賃金を来年度以降導入する腹を固めたことです。いずれもいわゆる「厚遇」とは別問題であり、便乗削減です。長年の労使交渉で先輩たちが努力してきたものを無にしようとするもので許せません。後の60億円減は市健保の事業主負担減1年30億円の2年分のことです。

Q4.市健康保険組合を解散させ、市職員共済組合に統合することはなにを意味するのですか。

A もともと国は民間に対しては組合健保を奨励し、政府管掌保険加入には難色を示してきました。カネを出さねばならないからです。しかし、地方公務員の健保を、1対1の共済組合に統合しても国としてはカネをだす必要はないから、老人保健や国保の退職者給付に莫大な拠出金をだして赤字になっても知らんぷりです。市健康保険組合は1926年(昭和元年)設立で、1962年(昭和37年)地方公務員等共済組合法成立以前から存在していたものとして「労使自治」が認められているのです。実はここに切り込んできたのです。市当局は今後2年かけて、まず、交通局健康保険組合と市健康保険組合を統合し、ついで市職員共済組合と統合するというものですが、健保の解散には組合会の4分の3の議決が成立案件です。しかもこれまで市健康保険組合に加入していた再任用職員、臨時的任用職員など3,000人は正規職員でないとして市職員共済組合に加入できず政府管掌保険に加入しなければならないなど、なんのメリットもないわけです。

Q5.二つ目に、市当局が市職員互助組合の労使負担割合を1対0にし、事実上福利厚生事業の外注化も辞さない判断をしたというのはどんなことですか。

A 「福利厚生制度等改革委員会」(委員長・大平光代助役)に、行政改革が専門の大学教授や労務を担当してきた企業役員ら3人の外部委員を起用することを決めたでしょ。えっと、「NPM行革」推進派の上山信一氏(慶応大教授)と、黒田晶志氏(大阪ガス取締役)、土屋隆一郎氏(JR西日本常務執行委員)でしたかなあ。

Q6.大平光代助役が「庁内だけで自浄できない」という市民の批判に応えたとして、山田昇総務局長ら市幹部の6委員を退任させて民間出身の3氏を加えた委員構成に衣替えしたことですか

A そうです。その中の上山信一慶応大学教授(公共経営学)や、あとで本間正明氏の腹心で「市長補佐官候補」といわれた跡田直澄慶応大学教授の足元、慶応義塾健康保険組合は約5,500名の教職員福利厚生業務を、業界第1位の(株)ベネフィット・ワンに受託させているのです。最近は防衛庁、財務省、厚生労働省、このほか都市銀行や日立グループなどが法定外福利厚生サービスを福利厚生代行業務会社へアウトソーシングするところが急増しているのです。中にはそのものズバリ、(株)福利厚生課という企業名もあるほど成長産業と見られています。市職員互助組合・市健康保険組合の「整理」にはなんと好都合ことではないでしょうか。腹だたしいことですが。ようするに1995年に当時の日経連が出した「新時代の日本的経営」論がわずか10年で公務職場まで浸透し、福利厚生など第2人件費までそぎ落とすところまできているのです。

Q7.市職員互助組合の市側負担ゼロ、市健康保険組合の市職員共済組合への統合はそれだけですむのでしょうか。

A なかなか。そんなものではありませんね。市職員互助組合の市側負担がゼロとなると当然に人件費も出なくなりますから市互助へ派遣している29名、それに互助組合連合、交通互助、水道互助、教互助などの担当職員が要員見直しの対象になるし、市職員共済組合に引き継ぐ業務もあり全部ではありませんが、市健康保険組合へ派遣している職員も含めた57名、交通局健康保険組合の8名、経理などそれに関連した職員を含めると総務局だけで100人近くが要員見直し対象になってくるわけです。労務管理、人事管理の中枢局=総務局の福利厚生部門を大量にリストラすれば、各局も容赦なくゴリゴリと人員削減を詰められていくのは常識です。12月の諮問会議の「市長への提言」もあり、しかも市長や大平助役は本間氏を解任したのですから、その意味で本間氏バリの人件費抑制を実行しないとマスコミからも叩かれるわけです。それに、今議会で「民間人の5年以内の任期月登用」(『日経』)の条例改正がされれば、各部局に配置されるだけに要員見なおしは大変厳しいし、実際、不退転で提案してくるのは必至です。在職死、メンタルヘルスなど大変なんですから、これに抗して全力を挙げたたかうのみです。

Q8.市健康保険組合が解散になれば、理事や組合会議員などもいらなくなるのでしょう。

A そうです。着眼点はあっています。市健保と交通局健保の組合側つまり互選役員計56名、それに互助組合としての存続があいまいとなっている市互助、交通互助、水道互助、教互助の互選役員100名近くがどうなるのか。市労組には現在互選役員はいませんが、いずれにしても時間内活動の制約は、この意味でも強まると見ておいてもいいと考えています。

Q9.三つ目に話された国の介入を受け入れ、管理職手当や主任手当を廃止して、成績主義賃金、成果賃金を来年度以降導入する腹を固めたとは具体的にはどんなことですか。

A 係長級の管理職手当や主任手当、変則勤務者手当は条例にも含まれており違法なものではありません。特に管理職手当については、この間、自治省・総務省に是正を求められても市当局は職務遂行に有効に機能してきたと主張してきました。今回、「勤勉手当の成績率導入」と絡めて提案していることからも、成績主義賃金、成果主義賃金に転換する考えだと判断しました。昇任昇格差別裁判の勝利和解で、昇任差別が一定是正された点からも拙速に廃止するべきでないという立場で主張しているのに、労使合意もないまま、いま3月市会に提案されています。廃止にいたる年間65万円の実損の激減緩和つまり経過措置もないままの乱暴な仕打ちに職場は怒っています。これまで主任手当についても私たちは特殊勤務手当でなく、課長代理や担当係長としてスッキリと発令し、管理職手当とするべきといってきました。係長級の管理職手当廃止と引き換えに、今年8月の人事院勧告の動向を見きわめ、成果賃金の高ランク格付けや、行政職5、6級扱いの検討などを考えているのかもしれませんが本当に粗雑な扱いです。市会最終盤にあたって「継続審議」や「激減緩和の付帯決議」を求めて、該当者も含めた市会各会派への要請行動もやるつもりですよ。

Q10.大阪市の福利厚生問題は、いよいよ全国的な問題として取り上げられてきていますね。

A 大阪都市経営諮問会議の発足が昨年6月だったでしょう。それにMBSの「カラ残業」報道の取材開始もその頃のようです。同じ時期から政府関係者、財界などによって準備されてきたのではないでしょうか。だから、日本経団連会長の奥田碩氏は年初に自治体でのトップダウンの強化を求め「労使癒着の自治体はただす」とまで言い放っています。こうした背景の下で大阪市都市経営諮問会議の「市長への提言」があることを見ておかねばならないと思います。
 奥田会長は、1月24日の記者会見でも、今年の課題として地方公務員改革を挙げて、「地方公務員の数が多く、給料も国家公務員よりはるかに高い。地公の水準は見直さなければならない」と発言しています。また、1月20日・27日の経済財政諮問会議では「04骨太方針」に記載された「公務員給与の抑制」を「公務員の人件費総額の削減」に改め、「国と地方公務員の『総人件費の削減』を07年度以降の消費税率引上げと一体的に改革する」ことを打ち出しています。
 要するに公務員の賃下げか、それとも消費税増税か、その選択を国民に迫る主張を展開しているのです。それから2月の諮問会議では、公務員人件費削減・定員削減などの実行を点検するため民間委員を中心とした「点検委員会」を設置して、2月27日には、奥田日経連会長など4名の民間委員連名で「公務員の総人件費の削減」の要請を諮問会議に提出しています。

Q11.まさに、大阪市がターゲットにされているのですね。

A それだけではありません。当時の全国知事会長の梶原岐阜県知事は、年初の記者会見で「地方分権の阻害自治体」として「組合癒着型」の自治体をトップにあげて、「大阪市の職員厚遇問題」を念頭に置いた発言をしています。
 「大阪市の職員「厚遇問題」を前面に押し出し、政府・与党・財界が一体となって「官公労たたき」の様相になってきています。さらに恐ろしいことに、自民党は、地方公務員の政治的行為に罰則規定(刑事罰)を設ける地公法・地公企労法の改悪の方針を固めて、給与制度だけでなく、アウトソーシングによる人員削減とともに公務員の労働運動そのものを敵視し、弱体化させる攻撃を仕掛けています。
 この狙いが行き着くところは、憲法改悪や「構造改革」の障害物としての自治体労働組合つぶし、それに大増税路線への国民の怒りの矛先を公務員に転化するというもので、私たちの真剣で、より攻勢的なたたかいが求められています。

Q12.国会論戦スタートの武部自民党幹事長や、公明党の草川参院議員会長の代表質問もまさに、そうですね。

A エエ。それから大阪市で言えば「腐敗しきった大阪市、税金を無駄遣している大阪市」というマスコミ報道は、なぜ「公」が必要なのか、大阪市は行政コストが高い、大阪市のダーティな公務員に行政の仕事を任すことはできないという声を意図的にあげさせています。ホンネはアウトソーシングをすすめ、「民間のできることはすべて民間で」という企業の利潤追求の対象物として自治体を食い物にする小泉「構造改革」を全国に先駆け実行をさせるねらいを持っています。指定管理者制度などの導入で民間大企業による市の施設のつかみ取りなんですよ。
 「福利厚生制度等改革委員会」のなかに2人も関西財界の大企業役員を揃えて、大阪市が2005年度当初に発足させる「市政改革本部」にも参加してもらうといっていますでしょう。そのJR西日本の土屋隆一郎氏は大阪駅北地区(北ヤード)開発は大きな関心を示しているのではないですか。それに諮問会議の「経済活性化」タスクフォース(専門部会)に「椛蜉ロ」の関係者3人が入っているのも同じことだと思います。

Q13.「市政改革本部」の話がでましたが大平光代助役は「改革委員会」の中間報告の際、「一から市民に勉強してもらっては間に合わない」と、市民を排除する姿勢を表明していましたね。

A だから2005年度に発足させる「市政改革本部」も民間人を参加するといっていますが、結局のところ関西財界主導になると思います。昨年12月に出した「市長への提言」では、「行政主導で行ってきた福祉施策が市民の自律意識を低下させ、さらなる都市・人の活力の喪失につながるという悪循環をもたらした」と言い放っています。
 福祉は亡国と言う、とんでもない話です。今後の行政の役割を「自律できる市民を支援する」ことであるとし、社会的弱者を排除するしくみをつくると言い、「納税する市民のみ顧客とする」発想が底流にあります。行き着くところは「職員に血を流させた、『選択と集中』の名によって市民にも血を流してもらわねばならない。」「集中は『都市再生』をキーワードにした新たな大規模開発」でしょう。だから私たちは、市長選挙で一緒にがんばってきた大阪市をよくする会がつくる「市民版大阪市改革検討委員会」の下支え役となって意見を言っていくつもりです。

Q14.ところで、委員長は3月末で退職され4月から市労組の離籍専従として活躍されるのですね。

A エエそうなんです。一人ぐらい公務員の制約なしに思いっきりなんでも話せ、動ける役員が居てもいいと思ったんです。心機一転で全力をあげるつもりです。まあ、挨拶をかねてどんどんいろんな職場に出向き、今日お話したようなものの裏話も含めて「これから大阪市役所はどうなる、どう変えねばならないか」などの懇談会をやりたいですね。

どうもありがとうございました。


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