2003年度大阪市予算案に対する大阪市労組の見解
2003年度大阪市予算案に対する
大阪市労組の談話

2003・3・1
大阪市役所労働組合
書記次長 斎藤彰英


  大阪市は、2月13日に2003年度予算案を発表しました。大阪市は、昨年11月19日に市会における磯村市長の「財政非常事態宣言」を根拠に、職員の賃金カット・昇給延伸を強行しましたが、その後、マスコミからも「職員給料の減額は、行政サービスのカットを進める狙いもある」(読売12/5)、「大阪市『福祉』大幅カット」(読売1/12)など財政運営の失敗を住民に押し付ける動きが指摘されていました。今回発表された2003年度予算案は、4月予定の市会議員や秋に予定されている市長選挙をにらんで、5K赤字といわれる第3セクター5社への貸付金について合計120億円を見送るなど、政治的な配慮が見られます。しかし、その内容は、新人工島・夢洲の開発やUSJの支援、「都市再生」の名による梅田北ヤードなどの巨大開発については、あくまで推進する一方、国民健康保険料・介護保険料、大学・専門学校の授業料値上げなど、市民には冷たいものとなっています。また、市税収入の大きな落ち込みや公債費の増加による財政危機を、有価証券の売却や956億円もの特別債の発行によって何とか取り繕っているものの、借金残高が5兆5,621億円になるなど、一段と厳しい状態となっています。

2年連続のマイナス予算

 一般会計は1兆7,884億円で、前年度より394億円(2.2%)減少して2年連続のマイナスです。特別会計を含めた予算総額は、前年度よりも328億円(0.8%)少ない4兆3,133億円となっています。
 歳入のうち市税収入は、前年度より397億円(6.3%)減の5,946億円を見込んでいますが、6,000億円を割り込むのは実に17年ぶりです。地価下落で固定資産税が5%減、不況の深刻化で法人市民税が10.3%の大幅減となっています。市税収入は、1997年度予算に比べて1,720億円(22.4%)も落ち込んでいます。
 今回の予算案では、こうした税収減に対して市債の発行や基金の取り崩し、有価証券の売却をすることで埋め合わせています。地方交付税については、前年度と同額の800億円を予定するとともに、借金である市債収入については、初めて発行する財政健全化債100億円を含めて2,280億円を予定しています。起債残高は、2003年度末で5兆5,621億円に達する見込みで、市民1人あたり214万円にもなります。さらに619億円を基金から取り崩すほか、健全経営の第3セクターである大阪メディアポート(株)の全株式を売却するとともに、市有地も売却しながら、合計126億円を予算化しています。それ以外に交通・水道の企業会計から60億円を借り入れすることになっています。

引き続き巨大開発の推進、3セク・土地信託への支援を継続

 昨年の確定闘争で市労組は、湾岸開発や赤字の第3セクターへの支援を徹底的に批判しました。その結果、2003年度の予算案では、私たちと市民の運動によって手直しをさせています。たとえば、夢洲の土地造成は、従来2005年度の完了を計画していましたが、それを2010〜11年度ごろに先送りすることで前年度の予算のほほ半分の35億に抑えています。新人工島も埋め立て工事を6年間遅らせ、2009年度からにすることで124億円(前年度205億円)にまで削減しています。しかし、これは事業の縮小・中止ではなく、単なる事業の先延ばしに過ぎません。さらに、前年度より増額しているものとして、関連事業の夢洲・咲洲の海底トンネル43億円(前年度36億円)、地下鉄・北港テクノポート線72億円(前年度60億円)などがあげられるとともに関西国際空港への出資貸付としての59億円も目立ちます。
 1997年度から総額1,000億円を5つの第3セクターに大阪市から超低利で融資することになっており、2003年度は約120億円の貸付金を計上するはずでしたが、市民の批判の高まりと政治的配慮から見送ることになりました。しかし、5Kへの貸付金については、「市は再建策がまとまり次第、貸付金を補正予算に計上する方針」(日経2/14)という報道もあります。選挙が終わった後に補正予算で5Kへの貸付金が復活する可能性が高いことに注意しなければなりません。さらに、5Kへの補助金やフロア賃貸料で引き続き70億円も支援することになっています。このようなもとで市長与党の自民党、公明党、民主党は第3セクターの大型ビル建設工事を受注したゼネコン会社から2001年の1年間で1億5,000万円を超える政治献金を受け取っているという事実もあります。
 昨年からの不祥事続きで入場者数が減っているUSJには新アトラクション建設のために新たに30億円を融資することになっていますが、大阪市が昨年11月に市の外郭団体間で資金を融資し合う「グループファイナンス方式」でUSJに50億円を貸し付けていることが明らかになったところです。その一方で、USJから米国ユニバーサル社に支払われるロイヤルティ(ノウハウ指導料)は、2001年度だけで約83億円にものぼっています。
 土地信託事業として、相次ぐテナントの撤退ですでに破綻しているフェスティバルゲートに2004年度完成の予定で交通記念館を入居させます。その整備費として約3億円を予算案で計上しているほか、10月以降半年間の賃料として1億4,000万を盛り込んでいます。大阪市は、昨年から市民向けの先端芸術の拠点としてフェスティバルゲートの約1,600uを借り上げて「新世界アーツパーク」を開催し、その賃料として年間1億4,000万円を払うなどの度を超えた支援となっています。

市民の願いにそむく

 「地対財特法(地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律)」が昨年3月末で法期限切れになりました。当然、同和行政の抜本的転換が求められていますが、大阪市は、「同和」を「人権」に置き換えて大阪市人権協会に事業委託を行なうなど、これまでの同和行政の温存をはかっています。一民間病院の芦原病院には新年度でも9億2,300億円を支援することになっています。同病院には「特別貸付金」の名目で1980年度から毎年貸し続けていますが、この間全く返済されていません。また、旧同和浴場へも1億4,000万円を助成しています。
 こうした一方で、市民の願いに背く予算案となっています。滞納世帯が2割を超えている国民健康保険料は3%の値上げが予定されており、これで4年連続の値上げとなります。しかし、国保料は26億円の財源があれば据え置きができ、USJへの新たな貸付金として予定されている30億円を振り替えればできることです。介護保険料(1号被保険者)を5.9%引き上げるだけでなく、市民から要望の強い利用料の減免は見送っています。障害者作業所や学童保育への補助金はすえ置くとともに、岸和田市や池田市で導入が決まった少人数学級は導入については拒否しています。全国的には7割以上で実施している中学校給食も、旧同和教育推進校のみの実施です。全国一の待機児を抱えている保育所は、新設するどころか民営化や統廃合により、今後5年で55ヶ所も減らす計画です。このように市民には非常に冷たい予算案になっています。
 しかし、市民の運動で前進したものもあります。小学校の米飯給食は週2回が3回に拡充されます。バリアフリーの施設では、地下鉄駅のエレベーターが10駅12基、エスカレーターが2駅4基設置されることにもなっています。中小企業に対する経営支援特別融資の申込み期限が来年3月末まで継続されます。さらに今年2月からは中小企業に借入金の返済資金を提供する新たな融資制度である「資金繰り改善特別融資制度」が創設されています。地域図書館の平日における開館時間も午前10時30分〜午後5時から午前10時〜午後7時までに延長される予定です。

市政運営を大型開発優先から市民・くらし優先に転換を

 磯村市長は予算案発表の記者会見で、市長の給料が「高すぎるのではないか」との質問に「市長の給料は中小企業の社長より安い」と反論し、財政難から給料をカットする首長が多いことについては「パフォーマンス。私は最近までその必要がなかった」と発言したことが報道されました。この発言は中小企業の経営の厳しさを理解しない不謹慎なものであり、労使間の信頼関係にもひびを入れるものです。そもそも現在の「財政非常事態」を招いたのは、わたしたちがくり返し指摘してきたようにムダな大型開発と第3セクターへの支援、失政による地域経済の落ち込みが原因です。5K赤字の第3セクターへの貸付金こそ見送ることになっていますが、「財政非常事態宣言」を行なった昨年11月には第3セクターであるUSJに50億円の融資を行ない、新年度でも30億円の融資を計上していることは、大型開発優先の市政運営の特徴をあらわしています。
 大阪市内では、9%を越える失業率に加えて生活保護世帯の急増など、市民の暮らしは深刻さを増しています。大型開発・第3セクター優先から市民・くらし優先の市政に転換してこそ、財政の再建も展望することができます。市労組はそのことを基本に引き続き運動を強めていくことにします。 
                                                  (以上)