2004年度大阪市予算の特徴について
2004年度大阪市予算の特徴について

2004・4・1
大阪市役所労働組合
行財政部長 田所 賢治


  大阪市は2月23日に關市長として初めてとなる2004年度予算案を発表しました。關市長は「やさしく 力強い 新生・大阪市」の実現をめざすと説明しましたが、その内容は「新生」どころか、従来を「継承」したものとなっています。予算案は、政府の「三位一体」改革の影響による地方交付税の削減やここ数年にわたる市税収入の急激な減少などを理由に、昨年と同様に大阪市は「財政非常事態」であるとし、昨年より行なわれている職員への賃金カットと職員削減の続行、そして、新たに退職金の削減を行うとし、市民のくらしにかかわる国民健康保険料や公共料金については値上げするなど、職員や市民にさらなる負担を押し付けるとともに、市民の切実な願いである小中学校の30人学級や中学校給食、介護利用料減免の実施や学童保育、障害者作業所の補助金の引き上げなどには背を向けた市民に冷たい予算を組んでいます。
 その一方、多額の借金を作り出した、ハコモノの巨大開発路線である「国際集客都市構想」には、なんの反省もおこなわず、破たん状態の三セク5社への補助金や家賃共益費、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)への貸付金などを計上するとともに、梅田北ヤ−ドの開発促進や夢洲などの巨大開発の続行など、借金のさらなる拡大と巨大な都市開発の持続という浪費型の開発優先の予算となっており、市民福祉の増進につとめるという地方自治体本来の立場からかけ離れた内容となっています。

借金で支えられた前年度並みの予算

 一般会計は1兆7,577億円で、前年度より△306億円(△1.7%)の減となり、3年連続のマイナスとなっています。特別会計を含めた予算総額は、前年度より186億円(0.4%)多い4兆3,319億円となっています。
 歳入の市税収入は固定資産税、個人市民税は昨年に引き続いての減収となっていますが、医薬品、電器業界からの法人市民税の増収が見込まれており、全体としては昨年より33億円増の5978億円となっています。市税収入は微増したとは言え、昨年と同様に不況を反映しており、ピークであった1996年度と比べると1,800億円も減少し、2年連続の6,000億円を割り込む低水準です。また、三位一体改革の影響により地方交付税が前年より△100億円削減の700億円となっており、交付税や負担金の削減額の合計は約△280億円となっています。
 予算案は、落ち込んだ税収や交付税等の削減などの減収にたいして、市債の発行や基金の取り崩しで埋め合わせをしています。借金である市債は、新設の地域再生事業債30億円を発行することと、職員数の削減に見合った範囲で発行できる財政健全化債を150億円増発しており、全体の市債収入は2,175億円となっています。さらに、473億円を基金から取り崩して収入に充てています。
 市債の増発による全会計での市債残高は過去最悪の5兆6,067億円となり市民一人あたり214万円まで膨れ上がっています。また、蓄積基金の残高は、ピーク時の93年度の3,825億円から1,068億円まで減っています。

さらなる負担を市民に求める予算

 市民への負担増では、国民健康保険料が2%アップし5年連続の値上げとなり、一人当たりの平均保険料が年額88,826円→90,603円となり、介護保険料(2号被保険者)については、8.4%の値上げで年額18,464円→20,010円となっています。また、幼稚園保育料、看護専門学校・助産師学院・保育専門学校の授業料が、のきなみ値上げとなっています。国民健康保険料は、一般会計から前年より10億円多い499億円を繰り入れしていますが、毎年膨れ上がる会計予算に見合う内容とはなっていません。

市民の願いに背を向けた予算

 市民からの請願・陳情が多かった高齢者福祉、子育て支援、少人数学級など市民のくらしにかかわる問題では、介護保険制度の拡充について、たびたび陳情されていた介護利用料の減免は検討されていません。昨年の市長選挙で關市長は、特別養護老人ホームと保育所の待機者・児童の解消を公約にかかげました。保育施策では、駅前ビル等での分園方式による保育所設置などをおこない、低年齢児の受け入れ枠を650名拡大するとしています。しかし、待機児童解消に前年度24億4900万円(定員900人増)から18億6400万円(定員830人増)に予算も規模も減らしています。全国ワースト1となっている1355人(昨年4月)の待機児の解消には程遠いものとなっており、既存の保育所への定員以上の詰め込み保育が予想されます。そして今年4月から3ヵ所の公立保育所を民間委託するとしています。特別養護老人ホームの整備も、前年度69億円から44億円に大幅に削減しており、市長公約からも大きくかけ離れています。小中学校での少人数学級の実現では、その実現を見送る一方で、長年の保護者の要望とは異なった、選別教育の実施につながりかねない、習熟度別少人数授業を実施するとしています。また、学童保育や障害者作業所への補助金は据え置かれていますし、中学校の給食の実施も旧同和校のみのままとなっています。

三セクなどの破たんの穴埋めと新たな巨大開発推進の予算

 市民の批判が集中した三セク三社の経営破綻の問題では、特定調停によって新たに出資金・補助金・家賃・共益費など約3,000億円を30〜40年かけて公金から支出することとなります。新年度では三社に対し補助金や家賃などで51億1200万円を支出します。さらに特定調停で求められた追加出資の104億円は補正予算で計上する予定で"隠れ支出"となっています。また、第2の破たんが予想される大阪ドームとクリスタ長堀には約11億円の補助金を計上していますが、大阪ドームについては200億円で大阪市が買い取ることが取りざたされています。国際集客都市の目玉であったUSJは約70億円の資金不足となっており、経営支援として前年と同様に30億円を計上。さらに補正予算でも20億円を追加する方針を市議会で明らかにしています。借金を350億円かかえたフェステバルゲート(土地信託事業)へは交通記念館の整備費として約3億円計上していますが、銀行側の調停案が成立すれば、市は200億円を負担することを補正予算(2003年度予算,04年9月執行)に盛り込ませています。
 さらには、オリンピック誘致に失敗したにもかかわらず、公共性も薄く採算性も期待できない夢州や新人工島などの湾岸開発に235億円もの巨費かけて計画を継続していますし、必要性に乏しい関空二期事業へも84億円の巨費を投じることになっています。
 都市再開発として梅田北ヤード(JR貨物駅跡地)の土地区画整理事業や推進事業に7,100万円の予算計上し事業を進めていくことになっています。

一般施策として継続されている同和事業

 同和事業は、すでに2002年3月末にて国の特別法の期限が切れていますが、大阪市では、一般施策として継続実施されています。たとえば、民間病院である芦原病院の運営助成費として8億6700万円、共同浴場の整備助成(2カ所)として6億1700万円、共同浴場の運営助成に7000万円も計上されています。また、人権協会や同和団体への事業委託、会館などへの職員配置も続けられています。

市民の運動により前進したものは

 特別養護老人ホームの待機者解消については、特養ホームを9カ所新設し、入所枠を589人増やすことにしています。また、老健施設を5カ所新設し、505人の定員増としています。ホームレス対策については、ホームレス自立支援センターを増設し、定員を280人から580人に拡充しています。また、交通バリアフリーでは、地下鉄駅のエレベーター設置が6駅で完成し、ノンステップバスが56車両増車されることになっています。
 それぞれの施策は、長年の住民要求を反映したものとなっていますが、内容的には、前市長が策定した計画を実施するにとどまっています。

大型開発優先から市民のくらしを優先する予算に

 磯村前市長は、西尾前々市長がバブル期に計画したベイエリアを中心としたハコモノ大型開発路線を継承し進めていくために、「国際集客都市構想」を発表し忠実に開発を計画してきました。磯村前市長の在職中の8年間を振り返るとハード面では、隔月のペースでハコモノのテープカットが行われるという異常なもので、その結果、8年間で約2兆円もの借金を増やし、市の財政を圧迫してきたといえます。關市長も、無駄な大型開発路線を継承し進めていくと表明しており、このままでは、ますます市財政は圧迫していくものと考えられます。市労組は、大型開発優先から市民のくらし優先への市政へ転換し、財政再建を進めていくことが必要だと考えています。財政圧迫を理由にした、市民や職員への新たな負担に対して反対していく立場から、情報公開と市民の対話を重視した運動を進めていきます。
                                            (以上)