2004年大阪市人事委員会「職員の給与に関する報告及び勧告」に対する市労組連の声明
2004年大阪市人事委員会
「職員の給与に関する報告及び勧告」に対する市労組連の声明


                  《2004年9月7日・大阪市労働組合総連合執行委員会》

1.大阪市人事委員会は、9月7日(火)に市長と市会議長に対して「職員の給与に関する報告及び勧告」を行いました。その内容は、@公民較差(給与の減額措置が実施された後の給与と比較)1.76%(7,767円)を基本として「所要の措置を講じること」、A給与の減額措置が実施されなかったと仮定した場合の較差はマイナス0.02%(マイナス78円)、B特別給(期末・勤勉手当)は昨年と同水準の4.4月、などとしています。
 市労組連は、本年3月18日に「2004年度市人事委員会勧告(報告)の基礎作業に関する申し入れ」を行い「人事委員会は、地方公務員の『科学的人事行政』の遂行と『職員の利益擁護』の機関として」勧告すること、また、「総務省や外部からの不当な干渉を排除するとともに中立機関としての独立性を堅持すること」を求めてきました。また、9月1日には大阪労連と大阪公務共闘による「大阪経済の活性化に貢献し、国の勧告に追随せず、賃金改善等の実現を求める」要請書が、35の民間労働組合(全労連・中立など)からの賛同署名を附けて大阪市人事委員会に提出され、公務と民間の賃下げの「悪魔のサイクル」の解消と大阪経済の活性化に向けた強い意志が表明されるとともに、私たちのとりくみを大いに励ましました。
 本年の「報告及び勧告」における公民較差と「所要の措置」は、一昨年の「財政非常事態」宣言を理由とした賃金抑制策(賃金カット)の継続実施の状態を前提にしつつも、職員に実際に支払われている賃金(現在、減額措置適用中)に対しては事実上のプラス勧告に相当するものです。これは、国・他都市において2年連続のマイナス給料改定が行われた最悪の事態を本市において繰り返さない内容として、一定の評価に値するものです。
しかし、5年連続の年収ダウンに苦しむ組合員や家族の生活実態を踏まえた、生活改善要求からは大きくかけ離れたものであり、市労組連としてのいっそうのとりくみ強化が求められています。
2.一方、大阪市人事委員会が行った民間給与実態調査は、市内345の事業所を調査し、調査実人員が16,882人と報告しています。これは、「調査方法は変更していない」とする人事委員会の言明とは裏腹に、調査した事業所数の変更はないものの、調査実人員では1999年(5年前)の26,034人から大幅に減少し、調査対象を労働条件のより厳しい小規模事業所にシフトさせていることを示しています。
 日経連が本年6月3日と7月21日に発表した2004年春季労使交渉の妥結結果(加重平均)などを見ると、従業員数が100人未満の場合のアップ率は1.23%であり、規模が大きくなるにつれて上昇し、500人以上の規模の場合には1.64%アップとなっています。また、一時金では従業員500人以上の事業所で、夏季・年末の一時金は前年より3.075%アップしています。公務員の支給月数(4.4月)との関係で試算すると0.135月アップが必要となるものです。
 これは、小泉「構造改革」による賃金抑制政策が今日の人事院・人事委員会の作業に重く影を落としているものであり、市労組連が、「基礎作業に関する申し入れ」において、「比較企業規模を、1000人以上に改める」よう主張したことの正当性とともに、引きつづきその履行を強く求めるものです。
3.大阪市人事委員会「報告及び勧告」は、人事院が勧告した「給与構造の基本的見直し」問題と関連して、「能力や実績をより適切に把握できる評価制度や、その結果をより適切に人事給与処遇に反映させる仕組みなど(中略)本市の実態を踏まえ、引き続き研究検討を行う必要がある」と述べるに留まりました。
 人事院がすすめる「給与構造の基本的見直し」は、小泉「構造改革」を推進する「物言わぬ公務員づくり」を狙う「公務員制度改革」を給与制度面から具体化するものであり、到底認められるものではありません。市労組連は、この「見直し」問題に関して、@公務員給与の根本基準として生計費が原則であるにもかかわらず、その原則を完全に逸脱していること。 A成果・実績主義が最も早く導入された富士通などの民間企業で弊害・矛盾が露呈し、マスコミでも相当取り上げられる状況になっていること。などを指摘するとともに、「それらの問題点を把握することなく、さらには、大阪市の現行の勤務評定制度の検証を行うこともなく、人事院に追随した報告を行うことは、人事委員会としての勧告・報告制度に重大な禍根を残すことになる」と鋭く指摘してきました。「研究・検討」に留めたことは、このことが一定反映したものといえるものです。
いま、「公務員制度改革」問題は、ILO結社の自由委員会が勧告しているように労働基本権の確立が根本問題ですが、政府は、この問題を完全にサボタージュしながら、今秋の国会で「国家公務員法」の改悪や「能力等級法」の成立を強行しようとしており、緊迫した事態を迎えています。
 市労組連は、民主的公務員制度の確立とそれを保障する人事給与制度の確立をめざし、引きつづき大阪労連・大阪公務共闘とともに、民間労働組合や市民団体と連帯してとりくみを強化する決意です。
4.大阪市人事委員会「報告及び勧告」は、「男女共同参画の推進」「次世代育成支援対策推進」「総労働時間の短縮」「メンタルヘルス対策」などの推進や対策の充実の必要性について報告するとともに、労働時間問題については「特に管理職員においては、職員の労働時間の適正な把握に努めることが肝要である」と強調しました。
 メンタルヘルスを含めた職員の健康問題は昨年度もさらに悪化しており、その原因は住民ニーズの強まりによる行政需要が年々増大している一方、「行財政改革」により急激な人員削減が行われるなど、労働環境の悪化にあることは明らかです。
 市労組連は、この間、「労働環境の改善の課題」「メンタルヘルスを含めた健康問題」での交渉を重ねるとともに、労働時間の適正な把握や健康障害の防止にむけたとりくみ強化が「待ったなしの課題」であることを追求してきました。また、人事委員会が、労働基準監督機関としての役割と権能を発揮し、踏み込んだ報告・勧告を行うよう強く求めてきました。
 本日の報告はそれらの指摘を一定踏まえたものとして評価するものです。同時に、厚生労働省の通達(2001年4月6日)に示されている指摘事項の一つの「使用者の労働時間の管理責任」の強調したに留まっており、今後、人事委員会としての職場巡視など、労働基準監督機関としての本来の役割と権能を発揮されることを求めるものです。
 また、「男女共同参画の推進」について、「報告・勧告」では「女性職員の積極的な登用」を求めるとともに、大阪市当局が「次世代育成支援対策推進法における特定事業主」として「職業生活と家庭・地域生活との両立支援のための制度の円滑な活用について、引き続き検討し推進していく必要がある」と述べています。次世代育成支援対策推進法は日本が完全な少子化となり、国の行く末が案じられる事態に直面して制定されたものであり、大阪市が率先して条件整備をすすめることが公務職場としての社会的な使命でもあることに確信を持つことである。また、「円滑な活用」が担保されるための基本は、代替要員の配置であり、大阪市として育児休業の取得や代替要員の措置など抜本的な改善が必要です。
5.市労組連はこれまでも、賃金・労働条件は労使協議によって間題解決をはかることが基本との立場からとりくみをすすめてきました。
 2004年賃金確定・年末一時金闘争において、本日の人事委員会報告・勧告の積極面を大いに生かすとともに、大阪市に働くすべての教・職員の生活の向上、市民生活の向上をめざして、全力をあげてたたかうことを表明します。
 また、大阪市の「財政非常事態」の真の原因を明らかにし、その責任を追及し改善を求めます。さらに、世界の常識である労働基本権の回復をめざすとともに、民主的公務員制度の確立とそれを保障する人事給与制度の確立をめざし奮闘する決意です。
                                                                                                          以 上