こんな大阪市と日本をつくりたい
憲法・地方自治を生かし
 希望ある21世紀をめざす市労組運動の目標と提言



<構想案>
大阪市役所労働組合

はじめに

 私たちは、憲法改悪を阻止し、憲法と地方自治を生かし、希望ある21世紀をめざす市労組の目標と提言「こんな大阪市と日本をつくりたい」 (構想案) を作成しました。
 この構想案は小泉内閣が憲法改悪をくわだてるという歴史の岐路にあたって、同時にすすめている「構造改革」の内容とねらい、問題点をくらしと地方自治、平和の側面から明らかにしながら、日本国憲法の理念と世界の流れに目を向けて、希望ある地域・自治体としての大阪市のあり方を考えたものです。
 全体の構成は、はじめに特徴的な日本と地域の現状にふれながら、「いのちとくらし」「地方自治」「人権と平和」「維持可能な都市環境の再生」「自治体労働者」の5つの側面で「提言」しました。提言の内容もはじめに現状と問題を、その後に私たちの具体的提言を記述するように努めました。
 日本国憲法は、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」とその前文で高らかに宣言したように、戦争のない世界をめざす世界の流れの中で生まれ、今また、21世紀の平和のルールを求める世界の新たな流れの中で輝きを増しています。
 世界では、一部の富裕層とそれ以外の貧困層の拡大という「弱肉強食」の社会をめざすアメリカや日本の政治・経済に対して、ヨーロッパ・ラテンアメリカ・アジアでは、"ルールある経済社会"をつくること、地方自治の拡充、日本国憲法9条による平和の秩序、地球環境や「都市再生」の合言葉としてのサスティナブル・シティの理念などの流れが大きな広がりをもっています。歴史的なものを大切にして、自然環境を壊さない範囲で開発をすすめ、自動車交通に頼らない都市づくりがすすめられています。
 この構想は、政府に憲法を遵守すること、生かすことを求め、世界の流れと呼応して、憲法と地方自治が生きる地域と自治体をつくることをめざして作成したものです。
 そして私たちは、大阪市の職員及び市長・議員はもちろん、広く大阪市民に提案し、討論と共同のとりくみをよびかけるものです。


いま大阪市、そして日本はどうなっているのでしょうか

 大阪市というまちは、江戸・東京とも、京都とも違う、また、世界のどの都市とも違う歴史・文化・自然を持った独特の大都市です。


 大阪は古くから、商人のまち、商いのまち、日本の台所などと呼ばれる一方、「がめつく儲ける」というイメージも作られてきました。しかし、大阪の本当の姿は、たんに金儲けのための金儲けではなく、衣食住にとどまらず、文楽や歌舞伎に象徴される文化性豊かな生活とまちをつくるために働く、そういう風格を持つまち、また、困った人を見捨てない、「ゆきだおれを出さない」、人情の豊かさ、温かさ、客人をもてなす心を大事にするまちとして発展してきました。
 市民の足だった路面電車もたくさんありましたが、ことごとく廃止、八百八橋の川が埋め立てられ、その上に高速道路をつくり、鉄とコンクリートの岸壁、高層ビルがそれにとってかえられ始めたころから、「文化」の息吹が押しひしがれ始めたのです。いま、それを推し進めてきた歴代政府の施策と大阪市政のあり方が、大きくゆきづまってきています。「こんな大阪市と日本をつくりたい」(構想案)という私たちのねがいに21世紀の新しい息吹を取り込んでよみがえらせ、発展させる方向へ国政も市政も変えていけるチャンスを迎えています。

 いま、日本の国のあり方と地方自治は重大な岐路にたっています。憲法改悪のくわだてがさしあたっての政治課題となり、2007年の参議院選挙を衆議院選挙と同時選挙にして、併せて憲法「改正」の国民投票を行うという政治のだんどりがこまかく語られています。

 政府がすすめる「構造改革」は、財界とアメリカの意向を最優先に、国を挙げて日本の巨大資本のグローバル化を後押しする政策、海外を市場とする多国籍大企業の保護を目的とした「戦争をする国づくり」のために、憲法9条の「改正」をすすめようとしています。
 2000年に開かれた国連ミレニアム・フォーラムの「平和・安全保障及び軍縮テーマグループの最終報告書」では「平和への人間の権利に関する共同宣言の提案及び、世界人権宣言に『平和への権利』をふくめる」「すべての国が日本国憲法9条にのべられている戦争放棄の原則を自国の憲法において採択する」という提案がとりあげられました。
 日本国憲法は、日本の新しい世紀をひらく指針であり、とりわけ、第9条は、戦争の違法化という世界史の大きな流れのなかで先駆的な到達点を示す世界に誇る宝だと私たちは考えています。いまこそ、思想・信条の違いをこえて、有事法制の発動を許さず、憲法をまもりぬく幅ひろい運動が求められているのではないでしょうか。

 また、この「構造改革」は、自治体の「かたち」も、市町村合併から都道府県合併、そして道州制へ大きく地方自治制度を変え、地方財政のしくみのあり方や公務員の働き方の「なかみ」自体も変える大がかりな地方自治つぶしの「改革」をも実行しようとするものです。

 「構造改革」の進行のもとで、金融・産業・労働法制・商業・農業など大企業の利潤追求にとって障害となるあらゆる「規制」をとりはらう「規制緩和」や、年金・医療の給付の削減・負担の拡大を押しつける社会保障の解体、「官から民へ」のスローガンのもと国・自治体の公的責任を投げ出し、「官製市場の開放」を合言葉にしてすすめられる公的分野の営利化などが強引にすすめられました。

 その結果、トヨタなど日本の多国籍大企業は、リストラ効果によって史上最高の利益をあげ、金持ち層の資産保有額は過去最高を記録する一方で、失業者・倒産件数は高水準を記録しました。

 大阪市内でもバブル崩壊後の1995年から8年間で生活保護世帯は倍増し、7万世帯に達しています。仕事がなくて困っている失業者がほぼ10人に1人で全国最高、小中学校の就学援助を受ける市民も4年間で1.5倍に増え、2003年度には児童生徒の3割を超えました。国民健康保険料が高すぎて保険料が払えず、滞納世帯が2割を超え、自らの命さえ保障されない事態です。住む家まで失った野宿生活者は1万人を超えるといわれており全国最悪です。
 このような雇用・生活不安の増大は犯罪激増・凶悪化などの社会不安と無関係ではありません。大阪の町工場の労働者で、戦前の反戦川柳作家、鶴彬さんが投獄を覚悟で詠んだ作品、「手と足をもいだ丸太にしてかへし」「食堂があっても喰へぬ失業者」「銭呉れと出した掌は黙って大きい」が、まさに、今の時代でもあるかのようにリアルにせまってきます。
 社会保障・人口問題研究所は、日本の人口は2007年をピークに減少に転じ、50年後には、いまの8割、l00年後には半分の6,300万人にまで減少するという数字を明らかにしています。青年の失業率は、11%を超える水準に達し、417万人に及ぶフリーターや64万人のニートが存在しています。出生率が1.29と低下した少子化の進行は、日本の未来への警鐘となっているのではないでしょうか。

 私たち大阪市に働く職員は、日々のしごとを通して、大阪市のムダ使いの酷さと人びとのくらしの困難さ、疲弊するまちの姿を目の当たりにしています。

 この10年、経済活性化を旗じるしにすすめてきた大阪市の国際集客都市構想は、3セク事業の失敗に象徴されるようにことごとく破綻しました。それは既存の産業や「大阪のよさ」を軽んじ、「ハコモノ」「呼び込み」型の都市づくりに突きすすんだうえの破綻でもあります。
 しかも、その破綻による財政負担の額は、市民の理解を超えた規模になっています。WTC・ATC・MDCの3セク3社は「特定調停」によって今後3000億円の支出を予定し、阿倍野再開発事業は2100億円の赤字が見込まれ、埋め立てを続けている無人の人口島への海底トンネル工事も続けられています。また、土地信託事業としてすすめられたフェスティバルゲートの破綻処理には200億円がキャッシュで支払われました。200億円と一口で言いますが、北海道網走市、和歌山県橋本市、大阪府高石市、兵庫県赤穂市など人口約5万人の都市の年間予算規模(一般会計)に相当するものです。大阪市財政の破綻は、このような無謀な市政運営の結果です。
 大阪の価値あるものすべて−これまでの歴史・文化から経済・産業までに光をあて、生かす手だてを大阪に住み働く人びととともに共同で工夫することが大切です。アジアと世界から注目・尊敬され、世界中から人が集まってくる魅力ある都市は、そこに住む260万人の善良な市民の安心と誇りのある日々のくらしが実現してこそ初めて実るものではありませんか。

 この日本を「戦争をする国」にきりかえることなど、誰もが望んでいません。
 この国の人びとは、戦争のない平和な世界で自由に幸福に生きたいというねがいさえ叶えられないのでしょうか。「世の中がこのままでいい」とは誰も思っていません。私たちは、「多国籍企業・ゼネコン栄えて、民も地域も国も滅ぶ」だけの「構造改革」ではなく、大阪に住み働く人びととの対話と共同によって、人間が大切にされる希望ある国と地域づくりをねがって次のような地域づくり、自治体=大阪市づくりを提案します。




 憲法25条は、すべての国民に「健康で文化的な生活を営む権利」(生存権)を保障しています。ところが「構造改革」によって社会保障制度は後退し、くらしや地域経済の基盤が崩され、国と大阪市の公的責任の放棄が一層すすんで、新たな大収奪の様相すら示しています。
 完全失業者は300万人台の高水準で推移し、中小企業・自営業者の倒産が過去最高になっています。自殺者は5年連続で3万人をこえ、過去最悪となりました。
 一連の労働法制改悪によって、正規労働者は400万人減少する一方、それがパート、アルバイト、有期雇用、派遣労働など不安定雇用におきかえられ、いまや雇用労働者の3人に1人が非正規雇用となっており、働くルールが破壊されています。また、年金制度は国民の「生存権」を破壊する大改悪が強行されました。
 大阪市内の生活保護世帯の受給率は政令指定都市のなかで最高です。就学援助の受給世帯も急増しています。家計消費・消費購買力の落ちこみもきわだち、一世帯あたりの月平均消費支出は全国平均33万5千円に対して大阪市は31万8干円で、政令指定都市のなかで最低です。
 失業・倒産も大都市経済圏のなかでも最悪の数値を示し、市内の完全失業者数は12万人で日本一、ホームレスの数も全国の4分の1を占めるほどになっています。また、事業所数・従業者数の減少ぶりも大都市で最高です。大阪市が2002年秋おこなった製造業調査では、今後「廃業する」とした事業所が3割にものぼることが明らかになりました。
 大阪市はこのような市民生活の悲惨な状況を前にしながら、中小企業の営業や市民の生活を支えるのではなく、大規模開発の継続と第3セクターなどの破綻処理にみられるように、ゼネコンと大銀行の利潤を擁護するために巨額の税金を投入する市政を続けています。このことが市財政を破綻させた最大の原因です。

 私たちは、このような人の生命を軽視した非人間的な政治ではなく、人間らしく生きるために、人権、生存権を保障する社会保障を実施し、雇用を生み出し、地域経済を豊かに発展させる国と自治体=大阪市をつくります。そのためにも、大阪市財政を圧迫しつづけている大規模開発・第3セクターの破綻処理にこれ以上の市税投入をさせません。


1.人間らしく生きるため、社会保障を拡充します

 福祉、医療、公衆衛生、社会保障に対しては、「自立自助」「相互扶助」「受益者負担」の名で公的責任を投げ捨てるのではなく、国と地方自治体の役割を明確に、財政と制度の面で充実させます。市民のくらしの実態や社会保障へのねがいをうけとめ、子どもたちや障害を持った人、高齢者が人間らしく生きるための社会保障制度を拡充します。最低保障年金の実現、生活保護制度の改善でくらしを支えます。
 2003年にイギリス・ロンドン市長と労働組合(TUC)が貧困をなくすために積極的な共同行動を決めました。「貧困ライン」を社会的合意や国民的共通認識にして貧困をなくします。
 私たちは、市民の「福祉の増進」に尽くすことこそ大阪市がやるべき第一の仕事と考えています。

◆生活保護申請権の確立と救済もれのないように、申請を希望する人への適切な支援、援助を行います。そのためにも、社会福祉法に定める現業員の標準数を配置します
◆また、所得が生活保護基準に満たない市民への介護保険料、利用料の減免制度を創設します
◆高齢者が住みなれた地域でくらしていけるよう、特別養護老人ホームの増設と適正配置を行うとともに、実施が見送られてきた「街かどデイサービス事業」を創設します
◆障害者支援費制度が円滑に運営されるよう、福祉サービス提供事業者を拡充するとともに、障害者への申請・利用にむけた支援を行います
◆「大阪市障害者支援計画」を抜本的に拡充し、障害者施設の基盤整備を計画的に推進します
◆小規模授産施設、無認可障害者作業所などへの補助制度を拡充します


2.「健康都市」大阪市をめざします

 大阪市民の健康状態は極めて深刻です。平均寿命は男女とも政令指定都市の中で最下位が続いています。ガンの死亡率は全国一であり、結核は罹患率・死亡率とも全国平均の3倍とケタ外れに高い状態を示しており、どの指標をとっても大阪市民の健康状態は、主要都市の中でも最悪の状態となっています。あらためて、大阪市の役割が問われており、保健所機能の強化とともに生活・環境・労働条件の抜本的な改善が必要です。

@国民健康保険制度

 国民健康保険には市民の4割、109万9千人が加入し、世帯数では実に半数となっています。保険料が5年連続で値上げされ、滞納者は2割を超えています。保険料収納率は毎年低下し、国保財政をいっそう苦しくしています。

◆誰もが払える保険料とするために、引き下げと減免制度の拡充、たとえば生活保護基準の1.3倍以下所得の方への減免適用などを行います
◆保険料値上げの根源には国庫補助を45%から38.5%に引き下げられたことがあり、補助金の増額を強く国に求めます
◆皆保険制度を崩す制裁(短期保険証、資格証明書の発行)を中止します
◆ 安心して医療を受けるために、窓口一部負担金の減免制度を拡充します
◆高額医療費の受領委任払いの適用を広げます


A保健所

 人口260万人、昼間人口約400万人の巨大都市にもかかわらず、2000年4月から全市に1ヵ所の保健所に統廃合し、さらに2003年度からは各区の保健センターを区役所の福祉部門と統合して「保健福祉センター」としました。しかし、大阪市保健所に業務を集中させたため、住民のねがいである身近なところできめ細かいサービスを行うことが今まで以上に困難になっています。必要な部署には職員を増員し、市民の健康といのちをまもる自治体としての使命を発揮します。

◆「健康都市大阪」へ転換を図るため、総合計画を立てて推進します
◆基本健康審査の内容充実や選択検査、ガン検診などの料金を無料にするなど受診率を抜本的に改善します
◆中小企業の従業員や自営業者などの健康診断を重点的に、健診費用の助成や休日・夜間など健診機会を増やします
◆結核対策を抜本的に強化します
◆「ぜん息児等医療費助成制度」の年齢制限を撤廃し、すべての公害被害者を救済する制度にあらためます


B福祉医療費助成制度

 大阪府の老人医療費助成制度の原則廃止や障害者医療費助成制度などの一方的な補助内容の見直しは、大阪市にも重大な影響をもたらしています。老人・障害者・母子・乳幼児の各福祉医療費助成制度がはたしてきた役割を重視し、現行制度の維持・拡充をはかります。国に対しても重度障害者医療費助成制度の実施を求めていきます。

◆市の老人医療費助成制度の復活と拡充にとりくみます
◆乳幼児医療費助成制度の所得制限を撤廃します
◆高齢者医療の改悪に伴う負担増を緩和するために、市独自の助成制度を新設します
◆重度障害者医療費助成制度を継続し、内部障害者に関しては身体障害者手帳3級まで対象を拡大します


3.地域産業を振興し、中小商工業を守ります

 社会保障や環境保全、農林漁業を再生し、「地産地消」の推進など地域産業振興を重視した政策をすすめることで雇用を増やし、地域内循環を生かした持続可能な地域経済を発展させます。
 中小企業が集積する自治体の責務として、@市内の実態調査を行うA常時、海外移転や逆輸入が市経済におよぼす影響の統計数字などを公表し、大阪市への貢献度を測定するB市として、税金など公的資金で利益をふやす大企業や大銀行には、地域経済に対する責任と貢献を求めるCアジア経済への真の振興・貢献や環境改善などに考慮した企業活動を求める、ことなどをすすめます。

◆大阪の「よさ」、「強み」に光をあて、市内には、金型や冶金、板金など日本一の基盤技術集積や繊維、薬品など多様な卸売業があり、これを生かした中小企業支援と雇用拡大策をすすめます
◆大企業と金融機関に社会的役割を発揮させ、中小企業振興のための市長の責務、市民の理解、中小企業の努力などを明確にした「大阪経済再生・中小企業振興特別条例」を制定し、そのもとで中小企業支援のためのセンターづくり、施策に反映させる実態調査や事業所のデータベース化、教育、医療、福祉など生活密着型の官公需発注の拡大と民主化などをはじめ、諸政策の立案をすすめます
◆業者や市民の意見を反映し英知を集めて地域産業振興計画を作成し、中小商工業者の経営基盤確立への支援、融資制度の新設、拡充などで地域産業の発展をめざします
◆「大店法」を改正し大型店の出店を規制します


4.大企業の社会的責任を求め、雇用を生み出し、働くものをまもります

 雇用問題の核心は、経済再生とどうリンクしているかにあります。大手企業が、疲弊する中小零細企業や地域社会を見捨てるのではなく、自らの持続的成長のためには、地域社会を大切にする姿勢を示すことがポイントです。EU連合はグリーン・ペーパー(大企業の社会的責任)で「持続的成長のためには企業は社会的役割を果たすこと」を求めています。これが、競争時代にあっても、経済のバブル化を最小限に食い止め、地域経済と市民生活を維持しようとする力となっています。雇用問題の解決策なくして、経済の成長は有り得ません。青年から中高年までの雇用不安を解消する大阪市の役割を明確にして、解決をめざします。
 雇用対策は国や都道府県の仕事とされてきました。しかし、国は「雇用対策法」を改正し、第5条に「地方公共団体は、国の施策と相まって、当該地域の実情に応じ、雇用に関する必要な施策を講ずるように努めなければならない」との条項を加えました。今こそ、全事業所、全中小企業を対象とする経済対策が必要です。

◆そのため、@失業者を生み出さないための施策A新たな雇用を創出するリアルな施策B失業者の生活対策を充実します
◆リストラアセスメント(影響調査と評価)を制度化します。大規模な工場閉鎖や移転、労働者削減(解雇)を計画している企業には、6ヵ月程度の猶予期間をもって事前にその影響評価、およびその緩和策、対象労働者の「再就職援助計画」の提示を求め、市民と関係諸団体に公表し意見を得たうえ、大阪市としての評価と意見を公表します


5.野宿生活者問題の解決をめざします

 現在まで実施されている国の「ホームレス」対策は「自立支援センター」や「仮設一時避難所」が中心です。これらの施設は、プライバシー保護という居住環境の面だけでなく、安心して就労自立できる雇用の場の確保が困難です。また、それぞれの施設自体が、開設期間を限定されており、入所者自身の入所期間も6ヵ月という限定つきとなっています。
 国の考え方は、この自立支援センターに入所して自立可能な状態になってから(居宅保護を含む)生活保護をかけるという立場に立っています。これまで市は、単身者の要保護者には、施設入所や入院などの「収容保護」方式をとってきました。したがって生活保護施設では恒常的な定員超過の状態が生じ、しかも退院、退所と同時に生活保護が廃止されるため、再び野宿に戻る構造ができあがり、その結果、行旅病死亡人として年間約300人もの人が路上でいのちを奪われています。
 野宿生活者問題を解決するためには、「ホームレス自立支援法」の成立により、財政的措置を国に任せるのでなく、大阪市として上乗せした独自施策を実施します。

◆生活できる賃金保障のために、地域住民にも役立つ環境美化・リサイクル等の公的な就労事業を実施します
◆建設関係や森林伐採、ヘルパーなどの職業訓練については、国の「日雇労働者技能講習事業」を活用し新たな職種の拡大を行います
◆現在実施されている高齢者特別清掃事業を現在の月3日から10日就労できるようにします
◆国へ「緊急地域雇用創出特別交付金」の延長と拡大を求めるとともに、あらたに就労場所の確保をはかります
◆自立支援センターや仮設一時避難所という「法外援護」に限定する野宿生活者の自立支援策だけでなく適正な生活保護法の運用が必要であり、生活保護行政を実態に応じて改善します
◆野宿生活者の健康問題を重視し、保健・医療対策を充実します


6.国際労働基準へ到達させ、「働くルール」を確立します

 経済のグローバル化のもとで、国際労働基準の遵守は当然のルールです。日本が世界に信頼される国として発展するためにも、私たちはILO条約や勧告、国連人権規約などの遵守を政府に求めます。
 ILOは21世紀に入って、人権擁護と労働者保護の大切さを再確認した「ディーセント・ワーク〜はたらく価値のある仕事の実現をめざして」の提起など新しい展開をみせています。私たちは「大量解雇規制指令」(事前協議義務)、「既得権指令」(企業譲渡指令:労働関係承継義務)「労使協議指令」「賃金確保指令」などを定めているEUに学んで、日本での確立・適用をすすめ、「働くルール」を確立します。

◆全国一律最低賃金制を改善させます。ILO94号条約にもとづき、公務・公共関連事業で働くすべての労働者の労務単価の明記など、公正・適正な執行を通じて「生活保障賃金」の確保を求める「公契約法」を制定し、大阪市においても「公契約条例」を制定します
◆アメリカでは「リビング・ウェッジ(最低生活賃金)条例」を施行している自治体が77を超えています。これは官公需発注にさいして、最低賃金の金額(大阪では1時間704円)を大きく上回って発注し、貧困層の生活改善をはかろうとするもので、大きな実績をおさめています。大阪市でもこの考えを取り入れ、中小零細企業・業者の収益、労働者、市民生活を改善します


7.くらしをささえる公平な税財政制度を実現します

 「年金や社会保障の財源」を口実にした消費税増税の動きが表面化しています。自民・公明両党の「税制改革大綱」では、2007年度をめどに「消費税を含む抜本的税制改革を実現する」が合意され、年金制度改革をめぐる自民、公明、民主の三党合意は、「社会保障制度全般について、税、保険料等の負担の在り方を含め、一体的に見直し」を行うことにし、民主党も2007年度から「年金目的消費税」として、消費税を8%に引き上げるとしています。
 消費税はその導入の時も、5%への増税の時も「年金など社会保障の財源」が口実にされました。しかし消費税が導入されてから社会保障はよくなるどころか改悪の連続でした。
 消費税は導入以来16年で148兆円になります。一方同じ時期に法人3税(法人税・法人市民税・法人事業税)は大企業減税や不況の結果、145兆円も減りました。金持ち減税の影響も大きく、所得税の最高税率も1986年には70〜65%あったものが、1999年には37%と減税です。

◆近代的な税の大原則は、「所得の多いものは多く、少ないものは少なく」「生きてゆくために必要な生計費には税金はかけない」ということです。消費税の増税や所得税の控除見なおしではなく、この大原則にもとづく公平な税制度をつくります

8.少子社会を克服し、子どもたちの声に耳をかたむける

 出生率は毎年最低記録を更新し、少子化は日本社会の深刻で危機的なゆがみとしてあらわれています。また多くの国民が不安をもち心を痛めている少年犯罪、いじめ、児童虐待、少女売春などの増加も、国民のくらしを痛めつけ、個人の生活も家族の一員としての責任も無視した「働かせ方」を野放しにした結果です。競争と管理の教育は子どもたちの成長と発展を妨げています。
 大阪市での少子化の進行はとりわけ深刻であり、次世代育成支援対策の強化が必要です。
 保育所に入れない原因は、保育所が不足しているからです。ところが、大阪市は、2000年3月末以来、保育所の廃止・休所を行い、さらに財政難を理由に、2003年5月28日、公立保育所の民間委託計画(10年かけて50ヵ所以上を委託)を発表しました。
 学童保育は全国に1万3797カ所(2003年5月)ありますが、どの自治体も学校施設をはじめ児童館など公的施設を活用することに努力しています。その結果、公的施設を開設場所にしているのは80・2%です。大阪市のように民間施設はわずか19・8%です。

◆公立保育所の統廃合や民間委託化をやめ、保育所の新設をすすめ、「つめこみ保育」と待機児童を解消します。保育所に必要な経費を確保します
◆学童保育に学校の空き教室(余裕教室)を積極的に活用します。学童保育指導員の身分保障など学童保育事業を確立します。子どもが放課後、安全に過ごし、豊かに成長・発達を保障する児童館・学童保育の条件整備をすすめます
◆2003年7月に成立した「次世代育成支援対策推進法」は、深刻な少子化に対して、「国、自治体、企業による対策が求められていることを認めた」ことは重要な側面であり、子どもが育ちやすい環境を整えるための総合的な施策をすすめる点では積極面も持っています。積極面を最大限活用して、要求前進をはかります。
◆サービス残業の根絶、長時間労働の是正をはじめ、人間らしく働くルールを確立し、徹底すること、若者の安定した仕事づくりで自立した子どもを生み育てる経済的基盤をつくることをすすめます。
◆社会のゆがみや矛盾、困難を民主的に打開し、子どもを守る社会のルールを国民的な合意ですすめます。
◆教育基本法を生かし、子どもたちの「意見表明権」(こどもの権利条約)をみとめ、社会参加をすすめます





 日本国憲法では国民主権、基本的人権、恒久平和を支え、具体化するものとして地方自治が位置づけられました。自治労連などが発表した地方自治憲章案は、「憲法が保障するこれらの権利は、地域での人びとの暮らしと営みのなかにこそ具体的に保障されなければなりません。それは、すべての人びとが、地域で生まれ、育ち、地域で人間としての営みを行い、その人生をすごすからです。」とよびかけ、憲法がその基本原則の一つに地方自治の保障を掲げた意義についてふれています。そして地方自治法は「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする」(第1条の2)と地方自治体の役割を定めています。地方自治の主人公は住民であり、住民のための住民による自治が地方自治の大原則です。憲法92条は「地方自治の本旨」としてこのことを位置づけています。
 しかし、いますすめられている市町村合併の強要と都道府県合併、道州制や「三位一体の改革」、自治体業務の市場化、ニュー・パブリック・マネージメントと言われる企業的自治体運営、すべての公的業務を競争原理にさらし、民間開放推進の横断的手法としての「市場化テスト」(官民競争入札制度)導入など、「自治体の再編」、規制緩和のすべては、地方自治を否定するものです。

 私たちは地方自治体の権限と財源を拡充し、市民が生きいきと行政に参加することを求め、憲法15条が定める「住民全体の奉仕者」として、大阪市職員がその専門性を発揮できる市民本位の自治体=大阪市をきずきます。

1.市民とともに、住民自治をつらぬきます

 強制的な市町村合併、「一の地方公共団体のみに適用される特別法は、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない(憲法95条)」の規定を弾力化して国会の議決だけで可能とした都道府県合併、そして財界の強い意向ですすめられる道州制は地方自治と相容れません。
 大阪市は、2003年8月に「新たな大都市制度のあり方に関する報告」をまとめ、大阪市域内の行政をすべて大阪市が担当する「スーパー指定都市」をめざすことを打ち出しました。しかし、スーパー指定都市になったとしても、行政への市民参加が促進されるわけではありません。多種類の都市制度の存在は、行政システムとして複雑であり非効率です。大都市制度にとって大切なのは、「市長の強力なリーダーシップ」よりも住民が行政の担い手となる住民自治がどのように保障されるのかです。人口260万人の都市にとって区役所の役割が重要になりますが、区役所には自治機能としての権限がほとんど与えられていません。しかも大阪市では区役所の機能を削減しているのが実態です。教育係の廃止、就学援助事務や法人関係の税務事務を本庁に集中するなど、区役所から市民を遠ざけています。
 憲法95条に定められた住民の投票は「広島平和記念都市建設法」(1949年8月6日施行)の制定にあたり初めて行われました。市町村合併の是非を住民投票で決めるという流れも本流になっています。

◆住民が行政の担い手として参加できるようシステム(住民協議会など)づくりを呼びかけます。
◆区役所に公園・河川・生活道路など区レベルの街づくりを担当する部門の設置をはじめ、中小企業の経営相談・支援業務の窓口や情報公開担当係を配置し、市民と行政との距離を縮める機構と体制をつくります。
◆地域・自治体のあり方を幅広く議論し、合併の是非は住民投票で決めることを求めます
◆政府、都道府県による市町村合併の強要、権限・役割・財源保障の縮減等をやめさせます
◆都道府県の合併構想策定事務は自治事務であり、政府・総務省に都道府県の自主的判断を尊重させます


2.「民主的・清潔・ガラス張りの大阪市」実現で市民参加をすすめます

 憲法に規定された民主主義の原則をさらに発展させ、「民主的・清潔・ガラス張りの大阪市」を実現するため、国民の知る権利の保障・充実、情報公開・市民参加・住民投票制度の確立などを含む自治基本条例(仮称)の制定が必要です。住民基本台帳ネットワークは凍結し、市民のプライバシー保護の立場から大阪市は「参加せず」、個人情報保護法や条例の制定など個人情報保護を徹底することが大切です。
 市民のための新しい大阪へ変革するうえで、一番求められるのは、市民の声を市政に力強く反映する基本姿勢と体制です。そのために秘密主義・官僚主義を排し、徹底した情報公開を行なうことです。

◆福祉、保健、衛生、教育、文化など、市民と直接に接する現場を重視する市政をめざします
◆区役所の機能と権限を強めます。そして、市民とかかわる現場重視を貫くための人員配置や予算の裏付けを強化します
◆お年寄り・女性・青年などのボランティア、NPOなどの知恵と経験を生かすなど市民参加を強めます
◆「大企業地域貢献度基準」を策定し、市民に結果を公表します、そのため、従業員1000名以上の大企業には、@関連下請企業取引関係の健全度(下請企業・労働者代表等から聞き取り)A新卒者の採用、雇用維持と雇用創出など雇用貢献度とパート労働者など不安定雇用労働者の処遇改善貢献度Bサービス残業根絶・労働時間短縮貢献度C温暖化、ゴミ問題など環境改善課題貢献度(アンケート調査)を内容に毎年度計測し公表するD銀行や信金信組など金融機関には貸し出し金額、地域貢献努力度を加えます


3.人権や生存権保障の立場から公的責任で業務を拡充します

 コストや市場原理優先の立場から自治体業務の民営化、民間委託、企業参入がすすめられています。しかし地方自治法第1条でも明確にしているように、地方自治体の行政は、単に能率ではなく、「民主的にして能率的な行政の確保」であり、国民主権の立場から、その生存に必要な権利・利益を実現してゆくという点にその存在意義(公共性)があります。
 大阪市は、公立保育所のほかに市バスやゴミ収集を民間委託化し、4つの市民病院、24の地域図書館、天王寺動物園、美術館、博物館、環境科学研究所、大阪市立大学などの施設を独立行政法人化し、指定管理者制度による企業参入もすすめています。

◆市民の人権や生存権保障の立場から公的責任による業務の拡充をはかります

4.地方自治を生かした地域・自治体を保障する国をつくります

 地方自治を守り、生かした大阪市をつくるためには、国が生存権を保障するナショナルミニマムの設定と、財政的責任を負い、地方自治体との民主的協力関係の確立が求められます。
地方自治法第1条の2第2項では、「地方公共団体に関する制度の策定及び施策の実施に当たって、地方公共団体の自主性及び自立性が十分に発揮されるようにしなければならない」と定めています。ところが小泉内閣は、ナショナルミニマムはすでに達成され、また「個性を競い合う=自治体間競争の時代」に入ったとして、地方交付税の削減など財政責任を放棄し、併せて合併の強要と規制緩和、「地方自治制度の弾力化」で地方自治を破壊しようとしています。

◆地方自治を拡充することは、日本の民主主義の発展にとって重要です。そのための事務・権限の民主的再配分など国の責任と民主的関係をめざします
◆確実に税源移譲を実施させ、あわせて地方交付税は財源保障機能と財政調整機能を併せもつ制度としてひきつづき堅持し、充実させます





 地方自治は、憲法に保障された人権、民主主義、そして平和的生存権を市民の身近なところで実現することを使命としています。こうした地方自治の立場から非核・平和の自治体を求める運動が進められ、非核宣言自治体は、自民党のたびかさなる妨害にもかかわらず全自治体の75%を超える2,514自治体(日本非核宣言自治体協議会調べ)に広がり、日本政府に核兵器廃絶条約の締結を促進するよう求める自治体決議も1,488自治体にのぼっています。(2000年10月現在)
 そしていま憲法改悪が重大な局面を迎えています。自民党は、憲法「改正」試案を2005年中にまとめ、憲法「改正」を問う国民投票法案を民主党、公明党とともに2005年の国会に提出し、2007年の国政選挙で憲法改正の国民投票を行うという政治日程が具体的に語られています。また有事法制によって、自治権と地域住民の平和的生存権を脅かすものを拒否する権利が奪われ、11の府県で現職の自衛官が危機管理担当として配置されています。大阪でも「府国民保護検討委員会」が開催され、府警本部、大阪市危機管理室、管区海上保安本部、陸上自衛隊師団の代表も参加しています。
 一方、広島市長が会長をつとめる「平和市長会議」は、2020年までの核兵器廃絶をめざし、緊急行動への支持を呼びかけました。これには、欧州議会や、全米市長会議(約1,200都市が加盟)が支持を決議しました。

 私たちは、平和都市・大阪の実現めざし、「核兵器廃絶」「軍事基地の撤去」などを世界の大きな流れとも連動しながら自治体としても平和外交をすすめ、非核・平和の自治体=大阪市をめざします。

1.日本国憲法9条を生かし、大阪市からも平和を発信します

 「改憲」「有事法制」「海外派兵」「教育基本法改悪」など、小泉内閣の危険な「戦争する国づくり」の流れに対して、多くの有識者が危機感を高め、井上ひさし、梅原猛、大江健三郎、奥平康弘、小田実、加藤周一、澤地久技、鶴見俊輔、三木睦子氏の9氏が、憲法を生かし守る国民的な運動を呼びかけた「9条の会」の発足など、憲法を守る草の根からの運動を呼びかけたさまざまなとりくみが広がっています。1999年、オランダのハーグで「世界市民会議」が開催され、各国の議会に向けて、「日本の憲法9条のように戦争放棄宣言を採択すること」をよびかけました。また、EU憲法の制定に際してイタリア議会下院がEU憲法に日本国憲法第9条の内容を明記することを求めたように、憲法9条の理念こそ世界の主要な流れです。
 日本国憲法9条を中心とする「平和のルールづくり」をめざし、「戦争をする国」づくりへの改憲の策動をゆるさず、憲法擁護の広大な共同の構築をめざします。「アジアの一員」として地域の平和、安定、繁栄に寄与します。基地も安保もない日本をめざします。

◆大阪市がすでに発表している「平和都市宣言」、「大阪港の平和利用に関する決議」に対する評価を低めることなく、@いかなる形でも、大阪湾、大阪港での軍事演習に反対する態度を表明しますA有事関連法案に関連し、大阪港の軍事利用には明確に反対を表明しますB自衛隊からの軍事演習への協力要請は拒否します
◆「非核大阪港宣言」や侵略戦争への反省を明記した「平和都市宣言」など、平和をアピールし、平和に貢献する大阪市にします
◆韓国や中国などかつて日本が侵略した国々との交流の拡大に貢献する国際化にふさわしい自治体=大阪市をめざします


2.憲法、教育基本法と「子どもの権利条約」を生かします

 「戦争する国づくり」と連動して、東京都の教育現場の異常な「日の丸」「君が代」の押し付けなど教育への管理と統制も強化されています。小泉内閣は、「教育基本法」の改悪をめざすなど、教育を「戦争する国づくり」に動員する策動を強めています。

◆子どもと教育の危機を打開し、人間として大切にされる学校教育を実現するため、憲法、教育基本法と「子どもの権利条約」をあらゆる場で生かします
◆憲法19条は「思想及び良心の自由」を定めています。この立場からも学校などでの「日の丸」「君が代」の強制は許されません。国民の内心の自由を尊重します
◆侵略戦争を美化し、憲法を否定し、「戦争する人づくり」をねらう「新しい歴史教科書をつくる会」などの教科書を許さず、史実を正しく伝える活動をすすめます
◆習熟度別授業でなく、小・中・高の30人学級を早期に実現します


3.真の男女平等社会をつくります

 憲法14条、24条、44条は、「法のもとの平等」「両性の平等」「女性の参政権」を高く掲げています。真の男女平等達成には、家庭・職場・地域・学校・議会など、人間の生活にかかわる全ての分野において人権を保障させることが重要です。

◆国連「女性差別撤廃委員会勧告」を踏まえ、性別役割分業意識をなくし、政策・方針の立案、決定の場への女性の参加促進、積極的差別是正、人間らしい働くルールの確立などの実現をめざします

4.終結した「同和事業」の継続を許しません


 昭和44年の同和対策事業特別措置法の施行以来、33年間にわたった3つの特別措置法は、地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律(地対財特法)が失効した平成14年3月31日をもって終了しました。しかし、大阪市では「法」終結後も「人権」の冠をかぶせて事実上継続させ、「人権協会」や関連団体への事業委託名目や事業運営助成などで予算が投入されつづけています。また、指定管理者制度を「活用」して新たな手法による特定団体への援助がはじまっています。
 こうした部落問題解決の政治的障害物を社会的に克服していくことが必要です。

◆市財政上の問題点を明らかにし、きっぱりと同和「事業」を終結させます
◆「人権」の名による人権侵害や研修の押し付けは許しません。
◆差別の原因を国民の意識に求め、行政機関が調査権限や罰則をもって介入しようとする「人権擁護法案」の廃案を求めます


5.在日外国人の地方参政権を確立します

 むかし、百済、新羅、高句麗から、九州を経て、渡来人のかなりの部分が、当時難波津と呼ばれた大阪に上陸し、土木など進んだ技術を持って仁徳陵などの建設に従事したといいます。近代でも多数の済州島の人びとが大阪との直行航路の開設により渡ってくるようになり、生野区から東成区にかけて日本最大の集住地域ができました。こうしたかかわりからも大阪市には現在12万人を超える在日外国人の市民が居住しています。
 人権が保障されてこなかった在日外国人「戦後処理」問題は、改めて国と地方自治体の問題として問われています。もともと地方自治体の運営については、"すべての住民参加"によってすすめることが憲法の保障する地方自治の原則です。このことからも永住外国人を地方自治の担い手として迎えることは、日本の民主主義の前進と発展に結びつく重要な問題です。
 私たちは、これまでも「地方参政権(選挙権・被選挙権を含む)」をはじめ「すべての在日外国人への市民的権利の保障を求めてきました。
 現在、永住外国人の「地方参政権」確立の立法措置を求める地方自治体での意見採択は1,500を超えており、どの世論調査でも多数を占めています。しかし、小泉内閣のもとで「地方参政権法案」が一度も審議されず、棚上げにされたままです。

◆私たちは、日本国憲法の基本理念である"主権在民・平和原則"の立場を守り、民主的権利が同じ社会に生きる永住外国人にも保証されるよう求めます

6.民意が正しく反映する選挙制度の実現など民主主義を広げます

 国民の意思と国会がこれほど乖離しているのは選挙制度に大きな問題があります。私たちは小選挙区制を廃止し民意が正しく反映する選挙制度をめざします。また、18歳からの選挙権を求めます。

◆金権・腐敗政治の根絶にむけ、企業・団体献金は禁止します。また憲法に違反する政党助成金は直ちに廃止します
◆選挙活動の自由・政治活動の自由を阻害する法律は廃止し、公務員労働者の政治活動・選挙活動の自由を保障します





 現在、ヨーロッパでは「都市再生」の合言葉がサスティナブル・シティです。「維持可能な都市」「持続可能な都市」と言われます。歴史的なものを大切にして、自然環境を壊さない範囲で開発をすすめ、自動車交通に頼らない都市づくりがすすめられています。アジアでも韓国のソウル市では、幅50m、往復4車線の高速道路を撤去して、昔の川を復元することを行っています。
 私たちは、大阪をよみがえらせるには、かつて「水の都」といわれ、水陸の交通の要所であり、豊かな産業をはぐくみ、瀬戸内式の温暖な気候が人々をひきつけた大阪の再生のために、公害都市、不健康都市の汚名を返上する思い切った政策の転換が必要と考えます。中之島公会堂の北側、堂島川の景観を損なっている高速道路を撤去し、川や水路を復元させ、歴史的な建物や景観を復元させるという少し大胆な都市づくり、サスティナブル都市をめざすことが必要ではないでしょうか。

 私たちは、食い倒れに象徴される豊かな食文化の集積、漫才・落語などの大衆芸能、文楽や歌舞伎などの伝統芸能、大阪城や四天王寺など世界に誇る文化遺産、韓国や中国との交流の深く長い歴史と風土など、他の地域経済圏にはない、すぐれた「資源」を生かし文化・歴史が息づく、維持可能な(サスティナブル)都市=大阪市をめざします。これらの「大阪のよさ」「大阪らしさ」は市民の生活と心に根づいています。21世紀の大阪づくり、経済再生を地域からとりくみます。

1.市民が文化・芸術・スポーツを楽しむ都市(まち)にします

 大阪市のいまの文化行政の特徴は、海遊館、USJ、大阪ドームなどを建設し、これをべ-スに文化、観光を考えるというのが開発優先の文化集客都市構想のなかに位置づけられています。
 上方文化の伝統をもつまちであるのに、「文化不毛の地」と長らく言われてきたのが大阪市でした。さらに、中座、浪花座、扇町ミュージアムスクェア、近鉄劇場、小劇場の閉館などが大阪で活動する演劇関係者に大きなショックをあたえましたが、その一方で市内の劇場問題を民間まかせにしてきたということも浮きぼりになりました。一方「市民の手で、上方落語がいつも聞ける定席寄席を復活しよう」と、上方落語協会や天神橋筋商店街などが大阪天満宮の敷地内に「天満天神繁昌(はんじょう)亭」を設立することに期待が高まっています。国では、2001年に芸術文化振興基本法が制定され、文化芸術の振興に関し、国と連携を図りつつ、その地域の特性に応じた施策を策定、実施することが地方自治体の責務であると明記されました。
 また、スポーツ行政の面でも大阪市は国際級といわれる豪華スポーツ施設をつくり、規模、利用料金が高く、市民は利用できず、長居陸上競技場で4億円、中央体育館で3億6000万円の赤字を出しています。また、大阪ドームの経営と大阪市による買取問題がとりだされています。市民からは厳しい批判が出され「大阪市のスポーツ振興策」に意見ありと「情報提供や手続き料金などで誰にでも利用しやすいように」の声が4割にも達しています。市民が文化・芸術・スポーツを楽しむ、そして歴史が息づく都市=大阪市へと前進させます。

◆大阪城、難波宮の全面的な調査を行い、市民運動で世界遺産登録をすすめます
◆近代美術館の建設と民主的な管理・運営をすすめるために、専門家等と協議していく機関を設置します
◆既に発表されている(仮称)「舞台芸術総合センター」は市民合意と専門家との協議で推進します
◆市民の手で定席落語の「天満天神繁昌(はんじょう)亭」(仮称)設立運動をすすめます
◆大阪から生まれた文学作品のための文学館の建設を構想します
◆小学校の跡地や公的施設の空間などを利用した稽古場や作業場づくりをすすめます
◆「文化基本条例」の制定に向けて文化芸術関係者などの専門家と協議する機関を設け、大阪市の文化芸術の発展と振興に寄与していきます
◆大阪市のスポーツ施設利用料金を見直し、適切なものにします
◆ジョギング、ウォーキング愛好者が利用する公園内に、更衣室付きシャワールーム、ロッカールームの施設を設置します
◆各行政区のスポーツセンター、体育施設にメディカルセンターを設置し、市民の相談に応える機能充実をはかります
◆自主的なスポーツクラブ、団体を育成するために会議、ミーティング、研修、ニュース発行などの活動のできるスポーツクラブハウスをつくり、財政的支援を行います


2.「地産地消」で食料自給率を引き上げるようにします

 大阪市の第3セクター「大阪港埠頭ターミナル」による輸入野菜、ブロッコリーやカボチャの詰め替えによる産地偽装問題により「食の安全」への信頼がまた揺らぎました。真相の解明と情報公開、さらに再発防止策が強く求められているとともに、あらためて食の安全が問われています。
 消費者はまず何より、農薬や添加物の心配のない安全、安心な食を望んでいます。国内での食料の安定供給という点も重要です。環境省が監修したパンフレットに、私たちの食卓に食べ物が届くまでに船などどれだけの輸送エネルギーが使われているかを示す輸入食品の「フードマイレージ」という指標があります。食料の6割を輸入に頼っている日本は、アメリカの3倍以上のエネルギーを使って食品を手に入れているといいます。遠くからエネルギー(石油)を使って運んでくるのではなく、いまは栽培地も多少は異なりますが、天王寺かぶら、毛馬きゅうり、大阪しろな、田辺だいこん、勝間(こつま)なんきんなど、近くでとれた旬のおいしい農産物を食べようという「地産地消」の動きが、息づいています。これらは地球温暖化防止にも役立つものです。食料自給率向上は、環境保全の面でも貢献します。

◆世界的には飢餓が広がり、世界規模での食料不足が懸念されており、自国の食料は自分たちでまかなうことが必要です。食料自給率の向上は待ったなしの課題であり、大都市大阪市として国際的な見地で環境問題のとりくみを強めます
◆食料主権を回復し、価格、所得保障をすすめ、食料自給率を高め、安全な食料の安定的な供給をめざします
◆安心・安全な地元の伝統野菜の普及を支援するため、大阪市の認証制度を確立し、生産者に対する補助金の拡充を行います。学校給食にも取り入れ、教育の一環として役立てます


3.環境にやさしい新世代路面電車の導入や風力発電を活用します

 人と環境にやさしい都市部の足として、新世代の路面電車「LRT」(ライト・レール・トランジットの頭文字・超低床路面電車)の導入を検討する自治体や鉄道会社が増えています。従来の路面電車に比べ、速度が速いわりに騒音や振動が小さく、お年寄りや障害者も使いやすいのが特徴です。
 「LRT」が脚光を浴びるのは、建設費が大都市で1キロ当たり10億〜30億円と、300億円〜400億円する地下鉄の10分の1以下ですみ、路面に設けた停留所からすぐ乗れ、商店街などとまちづくりで連携しやすいからです。さらに、一度に運べる乗客はバスより多く、排ガスとは無縁で騒音も小さいことが喜ばれています。高速、低床、低騒音、低振動を特徴とする高性能の路面電車で、地下鉄とバスの中間的な役割を担います。欧米では中心市街地の活性化といった都市政策の柱として新設したり、路面電車を廃止した都市で「LRT」が復活する事例が増えています。市内でも大阪城の西側、上町筋に路面電車が走ればというプランもうかびます。
 また、ヨーロッパ各国では、資源・エネルギー問題への関心も高く、省エネ政策とともに原発に頼らない安全で再生可能な風力・太陽光・バイオガスなど自然エネルギーへの転換が大きくすすんでいます。しかも、注目されるのは、それら発電所が個人や協同組合所有など市民参加の形で発展していることです。一方、日本では、相変わらず原発・石油依存のエネルギー計画のもと、二酸化炭素の削減目標も実現不可能に追いやり、むしろエネルギー消費を増やしています。

◆エコ通勤、会社や行政などの組織が一体となって、車の利用をさらに減らすため、「環境交通プログラム」をつくり、協力をよびかけます
◆現行のバス、地下鉄を組み合わせた「ライド・アンド・ライド」をさらに発展させ、時刻表やトレイン&バイクの可能なルートを紹介したパンフレットづくり、車の相乗りがしやすいようにするシステムづくりなど検討します
◆歩行者、自転車優先の街づくりをすすめ、市民に安全な道路をつくります
◆大阪市として、全国各地に広がっている風力発電や、太陽電池の市民共同発電所の実態を調べ、システムづくりなど研究します
◆バイオマスエネルギー事業の研究・開発や、自然エネルギーに関する税制面の研究もすすんでおり、国会での自然エネルギー促進法案の議論を注視していきます


4.国土、環境、いのちと財産を守ります

 21世紀半ばまでに70%の確率で発生するという東南海地震や南海地震は、津波と浸水の危険を伴っています。また、近畿地方で震度5クラスの地震が連続して発生しています。台風の進路も規模も異例ずくめで、集中豪雨の被害が年々拡大しています。
 私たちは経済効率や大企業の経済活動優先ですすめられる環境や自然の破壊、市民不在のまちづくりではなく、市民主体の持続可能なまちづくりの推進、国土や地域の安全、快適な環境の保持の立場から、市民のいのち、財産を守り、災害に強いまちづくりや自然エネルギーの活用をすすめます。吉野川可動堰に対して、上流の森林を「緑のダム」として生かすという住民と研究者が出した「代替案」などは日本の大規模水害に対する方策として検討に値します。
 大阪市民が安心して働き、住み続けることのできる、安全できれいな環境のまちづくりが切望されています。大気汚染が改善されない中、喘息患者が増え続け、大阪市の罹患率は全国平均の4倍になっています。国道43号線沿線や、高速道路淀川左岸線予定地など道路公害に反対する住民運動が続けられています。また、ダイオキシンをはじめとする有害化学物質による空気、水、土壌の汚染に対する不安が払拭されず、ヒートアイランド現象がさらに進行しています。
 達成時期が2000年度と明確にされていた二酸化窒素(N02)の環境基準達成は2010年まで先送りされました。自動車公害対策とともに急がれるのは、有害物質汚染と廃棄物への対策です。廃棄物による大阪湾埋め立ては、大阪湾の水質汚染を悪化させ、閉鎖性水域を増大させ、廃棄物問題や有害化学物質汚染問題なども絡んで私たちの市民生活にさまざまな影響がおよんでいます。
 大阪市環境基本条例の前文「環境への十分な配慮を基本とした都市づくりを、総合的に推進していく」ためには、大阪市の都市計画、開発計画、安全対策などを視野に入れたすべての施策に環境配慮が優先され貫かれることが必要です。

◆鳥取西部地震では鳥取県が個人補償制度を創設し、集中豪雨被災地の福井県も個人補償制度を作りました。こうした自治体の権能と共同を強め、災害被災者への公的支援制度を拡充します
◆大阪市「環境基本計画」を実行するとともに、美しく明るいまちへ、自動車の排ガス対策、公園の拡充と緑化、街灯の増設などにとりくみ、河川の浄化、海岸線の回復など自然の回復を計画的に推進します
◆直下型地震や津波を伴う海洋型地震などの防災対策を強化し、防潮堤の整備による浸水対策や高層マンションや地下街対策など、災害に強いまちづくりをすすめます
◆ゴミの分別収集を改善し、天保山・鶴見緑地などの経験を生かしたゴミ埋め立て地の緑化事業にとりくみます





 憲法第15条は「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」とされています。「全体の奉仕者」とは、市職員でいえば「市民みんなのためにつくす人、がんばる人」のことです。
 市民の苦しみを我がこととして感じ、受け止めることです。同時に憲法99条の公務員の憲法擁護尊重義務規定にもとづいて大阪市役所に就職するすべての人は、「憲法を擁護し、尊重すること、全体の奉仕者として職務を民主的にして能率的に運営すること」を宣誓しています。つまり「みんなのためにがんばります」と宣誓して大阪市役所の仕事に就いているのです。
 ところが自民党政府はこの全体の奉仕者という憲法の規定を否定し、政府や自治体の中枢部に民間からの人材投入や、公務労働の担い手をそっくり変え、一握りのエリート正規職員と、そのもとに非常動・嘱託・派遣などの不安定な身分の職員をおき、サービスの実施部門は、民間業者やNPOに委ねることを狙っています。また職員には一人ひとりを競争においたてる仕組みを人事と賃金の両方から押し付け、市民に顔を向けるのではなく、上司や政府の顔を見て仕事をする市職員をつくることをすすめています。
 一方で、多くの市民からは「カウンターの外に出て市民の実態を知って欲しい」「市職員として知っている情報を正しく知らせて欲しい」「行政の専門家として一緒に街づくりを考えて欲しい」など、市職員とその労働組合に熱い期待を寄せています。
いま、こうした声にこたえ市職員とその労働組合は、市民と向き合い、情報を提供し共有し、地域に出て、ともに考え行動していくことを決意しています。

1.公務員と公共部門を充実させ、あわせて市民の自主的運動と共同します

 財政危機と「公私協働論」による民営化・民間委託と公務員の削減、非常勤化がすすみ、自治体業務を有償ボランティアにまかせたり、指定管理者制度のように、公的施設や自治体業務の本来の役割を否定して、NPO・民間企業に丸なげする動きが強まっています。
 公務員は全体の奉仕者として生存権や発達権などの国民の基本的権利を担い、仕事を通じて地域の実態や市民のニーズをつかみ、制度・政策を改善する専門的、総合的役割をもっています。

◆国際的基準から見ても少ない日本の公務員や公共部門をさらに縮小するのではなく、市民にとってなくてはならない存在として充実させます
◆NPO、ボランティアなど市民の自主的運動が本来の役割を十分に発揮できる大阪市にします。そして市職員と市民の共同を発展させ、住民自治、市民参加を積極的に保障する自治体=大阪市をめざします


2.「住民全体の奉仕者」として職務に専念できる民主的公務員制度を確立します

 私たちは「住民全体の奉仕者」として職務に専念できる民主的公務員制度を確立します。

◆憲法15条に規定する「全体の奉仕者」としての職務が遂行できる「身分保障」を明確に規定し、憲法28条が保障する労働基本権の実現をめざします。また、憲法21条が保障する基本的人権としての政治的・市民的自由の完全保障を求めます
◆特定の個人・企業・政党政派に偏することなく公務の公平性・公正性・中立性・安定性を確保する制度の確立を求めます
◆市行政のすべての段階・分野に職員の参加制度を確立するとともに、行政の腐敗など大阪市内部の不正・違法な行為に対する「公益通報権(内部告発)」、不法・不当な職務命令に対する「意見具申権」、さらに違法・不当、重大な瑕疵ある職務命令に従う義務のないことを明記し、「公益通報者」などの保護を明確にします


3.地域経済の発展や地方財政の確立と、市民サービスに専念できる賃金の確保をめざします

 人事院勧告制度を使った公務員賃金の抑制や財政危機を理由とした賃金や諸手当の切り下げが行われています。さらに「地域給」の導入が地方交付税を削減する手法としてすすめられてします。

◆公務員賃金が地域における労働者の賃金の底上げや均等待遇の実現など市民のくらしと地域経済の再生にとって重要な意義を持っていることに確信を持つとともに、大阪市役所や関連の公務・公共業務を担うすべての労働者が、安心して市民のための仕事をすすめることができ、力をあわせてその専門性や経験が生かせる賃金、労働条件を確保します
◆「住民全体の奉仕者」として、行政区や地域、市民のくらしの実態やねがいに、向き合った仕事をすすめるとともに、自治体労働組合に団結して、市民との共同をすすめ、市民本位の自治体づくりをすすめる公務員をめざします



【ことばの解説】
三位一体改革
 「三位一体改革」による地方交付税と臨時財政対策債の削減(前年より2.9兆円、12%減)は、自冶体の予算編成に大きな影響を及ぼし、予算が組めないという声が全国をおおいました。自治体の自主性を強化し住民参加による自治を発展させるものではなく、国の失政と赤字を地方に押しつけたものに他ならず、自治体を住民サービスの抑制、市町村合併、アウトソーシングをなどに追い込むものとなっています。

自民党の改憲内容
 自民党は2005年までに改憲案をまとめることにしています。
 その内容をみると、憲法前文を「国際貢献」と「日本の歴史・伝統・文化の継承」を柱に改定し、「自衛軍」の設置を憲法上明記するとしています。
全労連「21世紀初頭の目標と展望」
この提言は21世紀を前に、財界も「経済戦略会議・日本経済再生への戦略」「経済審議会・経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」をうちだしています。この「目標と展望」は、さらなる弱肉強食・競争社会をつよめようとする財界の「21世紀戦略」の方向ではなく、国民のだれもが人間としてあたりまえの仕事と暮らしが保障される社会づくりをめざすための提言。この「目標と展望」で提起している課題は、全労連が21世紀初頭(2010年)までに実現をめざす中期的目標。

ディーセントワーク
 ILOのグローバル化への対応のなかで繰り返されるスローガン。これは、@労働基準ならびに労働における基本的権利・原則を満たし、A公平に適正な雇用を確保する機会があり、B社会的保護を受け、C三者構成と三者対話の強化により下支えされる一仕事のこと。ILOが担うのは、市場原理のみで拡大しつづけるグローバリゼーションに、ディーセントワークの普及により社会的・人間的な視点から歯止めかけていく役割。

企業の社会的責任(CSR)
 より良い社会とより良い環境を作りあげるうえで、企業活動において利潤の追求だけではなく、法律の遵守や社会的論理の尊重などをつねに有して、安全かつ良質な財・サービスの提供を行うという企業の責務。EU委員会はそれを法的に整備するための合意をもとめ、解雇規制など労働者の労働権の尊重や環境保護に関する責任などを示した文書(グリーンペーパー)を提起しています。

公契約法(条例)
 国や自治体などが発注する仕事に従事する労働者の賃金が、地域の標準的水準を下回らないよう下支えする法律。イギリスやフランスで19世紀末に公契約法が制定され、アメリカにおいてもデービス=ベーコン法と呼ばれる公契約法が制定されている。これらを経て1949年、ILOにおいて「公契約における労働条項に関する条約」(94号条約)及び「公契約における労働条項に関する勧告」(84号勧告)として結実している。しかし、日本は94号条約の批准を拒否している。
公契約における労働条件確保をさだめたIL094号条約(1949年)は、国や自治体などが公共工事などを発注する場合、関係労働者にその地方の同一性質の労働に劣らない有利な賃金・労働時間などの労働条件を確保することを義務づけています。
いま国レベルでは、少なくとも58ヵ国が、公契約での賃金保障を定めた法制度をもっています。また近年のアメリカでは、国が定める最低賃金が低すぎるため、自治体が発注する事業などで「リビングウェイジ」の保障を求める運動が広がっています。

リビングウェイジ
 アメリカのボルチモア市で始まった『リビングウェイジ』(=「生活保障賃金」)の運動は、現在77自治体で条例が制定されています。
 この運動は、自治体など公共団体と委託契約または補助金を受けている業者に対し、「これ以下の賃金で労働者を働かせてはならない」と各州の条例で定めているものです。
 ケア・ワーカー、警備員、駐車場係員、日雇い労働者、窓口出納人、エレベータ操作者、刑務労働者、事務員など公共団体との契約を結ぶ範囲も広く、補助金の交付や融資、税の減免など経済的援助を受けた企業も含んでいます。その結果、賃金水準は各州の最低賃金の2倍近い水準で設定され、最低賃金の引き上げもリンクされ運動が広まっています。

次世代育成支援対策推進法
 2003年の通常国会で成立し、全ての都道府県と市町村は、地方公共団体として子育て支援の「行動計画」を策定・公表することが義務づけられました。また、一般事業主(従業員300人超)にも、「行動計画」の策定と都道府県労働局への届け出が義務づけられ、300人以下の中小企業についても努力義務とされました。
 特定事業主(国や地方公共団体)は、事業主としての「行動計画」の策定・公表が義務づけられました。

ニュー・パブリック・マネージメント(NPM)
 これまで行政管理あるいは公共管理などと言われてきた公行政の管理部門に、民間の経営手法・競争原理を導入して、行政の効率化・節約化を図るという手法です。ニュージーランドやイギリスあるいはドイツなどで先行的に実験されていますが、その成果の実証的な検証もなく、行政の効率化・節約化の一点だけでひたすら導入しようとしているのが日本のNPM論の特徴です。