大阪市のいわゆる「厚遇な職員福利厚生」に対する市労組の反省と決意

大阪市のいわゆる「厚遇な職員福利厚生」に対する市労組の反省と決意

2005年1月12日
大阪市役所労働組合


1.市民の皆さんのご指摘を受けとめ、弱点や欠陥に対して厳しい自己点検を加え、大胆にこれを克服していきます

 大阪市職員に対する「カラ残業」、「厚遇な福利厚生」問題にかかわってマスコミの連日にわたる報道がなされています。大阪市役所には、連合・自治労に属する大阪市職員労働組合、大阪市従業員労働組合、大阪交通労働組合、大阪市水道労働組合などで構成している大阪市労働組合連合会(略称 市労連)など数多くの労働組合がある中で、市労連に加盟せず、唯一ホームページを開いている私たち全労連・自治労連「大阪市役所労働組合」(略称 大阪市労組)に市民の皆さんから1ヶ月間で5,000件を超えるアクセスがありました。そして多くのメールもいただきました。
 その内容は、職員に対する人件費や過剰な福利厚生へのムダ遣い批判、大阪市当局も労働組合も同じ過ちを犯し自浄能力がないなどのご意見、労働組合として「職員厚遇」について具体的に改善策を打ち出すべきなどのご助言、また、現在の市民生活実態や経済状態から乖離した大阪市の大規模開発や、第3セクター負債処理などの税金無駄遣い批判など厳しくご指摘をいただいています。
 市労組は、こうしたご指摘を真正面から受け止めるとともに、この問題を大阪市のあり方、公務員のあり方をめぐっての重要な問題として捉え、市民、市議会のご意見を十分に聞き、市民奉仕のため、積極的に働くためにも労働組合としての弱点や欠陥に対して厳しい自己点検を加え、大胆にこれを克服することが必要と考えます。
 大阪市のいわゆる「厚遇な職員福利厚生」に至った契機は、1970年代後半に国が自治体に対して一時金減額指導が強まり、「福利厚生事業への転換」を行なってきたものや1989年の国並み退職金減額にかかわった「懸案事項」の具体化であり、いずれも市当局と「市労連」との労使交渉で得た合意でありました。
 この問題が生じた当時、私たち市労組の先輩たちは、いずれも市職、市従の組合員であり、しかもこうした市当局と「市労連」との交渉決着に対して「妥結内容が公表部分と、非公表部分つまりヤミ給与になるではないか」と激しく批判する反主流派という立場でした。その批判の内容は、@一時金や退職金などの要求内容と決着してきた妥結内容に大きな乖離があり、支給される時期や予算上の支出科目の性格が異なるため公然と市民的支持を得るうえで説得力に乏しいとしてあくまで、正当な手続きをとるよう求めるものでした。そして、A解決内容が市民、市議会、マスコミに公開できず、市民的な支持は得られないだけでなく、不透明部分を残したままでは「市労連」として今後、正々堂々と市当局に立ち向かって行くような賃金闘争が組織できない、という主張をかかげるなど鮮明なものでした。
 しかし、この時点では、市労組は存在せず、大企業・財界と自民党政府の反動的政策の基本を支持し、それに協力する労働戦線再編反対、あわせてマスコミを騒がせた1989年の公金詐取事件での市政刷新を契機とした市職・市従からの訣別と市労組の結成は、1990年7月まで待たねばなりませんでした。したがって、労使の合意は市当局と「市労連」とで行われ、私たちは、労使交渉の場には参加することはできませんでした。
 その後、市労組は結成(1990年7月22日)されていたにもかかわらず、これら削減問題の解決、処理などの市当局と労働組合でつくる「福利厚生検討委員会」には、1989年の退職金問題の労使合意時には市労組は結成されていなかったという理由から市労組の参加は不当にも認められなかったのがこの間の正確な経過です。
 しかしながら、結果としてそれを正せず、今日までこの問題を引きずってきたことについて、その責めは免れないと考えています。私たちの非力を痛感しつつも、ご指摘いただいている諸問題について、市民のみなさんの納得と合意が得られる適正なものにしていくことをここに表明するものです。

2.賃金と福利厚生事業にかかる問題を適正に解決します

 賃金と福利厚生事業にかかる問題を以下のように適正に解決をはかるとともに、市民のみなさんにすべて公開するよう求めていきます。
(1)「カラ残業」問題については、再発させないため制度の改善をはかるとともに、「大阪市会計監理検討委員会」で指摘された不当なものは当該職員からの返還を求めていきます。
(2) 職員の賃金にかかわる特別昇給については市当局に規則化を求めていきます。
(3)特殊勤務手当については、水道局、交通局をのぞく市長部局では、2001年3月にすでに見直しを行い、条例化も完了していますが、適正化が必要なものは労使協議をしていきます。
(4) 条例化していない職員の団体生命共済、「市職員互助組合連合会」の給付金について適正化に応じていきます。ただし、給付金については、職員もこれまで掛け金を支払っており、この点を考慮して改善にあたります。
(5) 福利厚生事業のうち職員制服については貸与期間が2年サイクルから3年になりましたが、ブレザー型など種類の多様化は制服としてはそぐわないことから本来の「制服」としての形態として正していきます。
(6) この他の福利厚生事業については、個々に適正化のため対応していきます。

3.適正化で生み出した財源を市民の福祉・くらしへまわすため全力をつくします

 適正化が、今日まで先延ばししてきた背景には、民間での賃金抑制や福利厚生費削減の実態を解明できず、正しい対処を怠ってきた市当局と労働組合、労使に責任があります。また、市民の皆さんの生活悪化と苦境を直視できず、市政に反映させるための私たち市労組の不十分さを痛感します。
 バブル崩壊後の大阪市政の問題は、第3セクターの赤字支援に税金を投入し続け、一方では、それら財政難を理由にした市民犠牲の行政を押しつけてきたことにありました。
 市民の暮らしは、1995年から8年間で生活保護世帯が倍増し、7万世帯に達しています。仕事がなくて困っている失業者がほぼ10人に1人で全国最高、小中学校の就学援助を受ける市民も4年間で1.5倍に増え、2003年度には児童生徒の3割を超えました。国民健康保険料が高すぎて保険料が払えない滞納世帯が2割を超え、自らの命さえ保障されない事態です。住む家まで失った野宿生活者は1万人を超えているといわれており全国最悪です。
 このように、大阪市の大規模開発と第3セクターによる赤字財政が深まり、大阪市のムダ遣いが全般にわたって問われ、市民にとって当然のことながら無関心にはいられない深刻な事態になっていることにどれだけ私たちは心を痛めてきたのか衷心から自己検討をしています。
 市労組は、今回の問題を解決するための視点として、地域住民の立場にたって物事をとらえることの大切さを痛感するものです。こうした見地から今、起こっている大阪市のさまざまな問題について地域住民の立場にたってリアルタイムに対応することがますます必要になっていると考えます。
 市役所労働者は、市民の生活と安全をまもるという、本来の大阪市役所にとりもどす任務を担っています。だからこそ、市労組は適切でないものは見直し、それによって生み出した財源は市民の福祉・くらしへまわすことを市当局に求めます。さしあたって、今大阪市がすすめようとしている「70歳以上の市民の市交通無料パスの見直し」(81億円)や「生活保護受給者への上下水道料金減免のカット」(5億円)、「保育料の値上げ」などの実施にストップをかけ、市民福祉に直結する部門に税金を投入することを市当局に求めます。
 市労組は、市民から信頼される大阪市をめざし、そのための運動をさらにすすめ、市民の皆さんとともに大阪市の財政危機打開の政策的イニシアチブをとること、ムダをなくし福祉を充実する職場からのたたかいを広げること、そして財政危機のもとでの市職員の労働条件は市民の支持と理解を得るものでなければならないことを基本に市民のみなさんとの共同の前進をはかる決意です。

4.「市民のために良い仕事をしたい」と願う職員の良心を広く結集し、市政刷新のため奮闘します

 長年、大阪市では、乱脈・不公正な同和行政が横行し、市当局は、連合系労働組合幹部と一体となって市役所内でも市民のための行政をすすめるために献身する職員を差別し、みせしめにして、思うがままの職員支配をおしすすめてきました。私たち市労組の多くの組合員には、「市民の肩もてばずっとヒラ」と言わんばかりの昇任昇格差別がまかり通ってきました。どれだけ多くの先輩たちが、人間としての尊厳をズタズタにされ、無念の思いを、そして憤怒の涙を呑み込んで退職を迎えていったことでしょうか。
 1997年10月23日の昇任昇格差別裁判の勝利和解によって一応の区切りとなりましたが、依然として所属する労働組合の違いによる差別は続いています。
 市労組は、市政の抜本的刷新をめざし、1990年の結成以降、「大阪市をよくする会」に結集し、共産党を除くオール与党による「5代にわたる助役から市長への世襲」路線と対決し、市長選挙をたたかってきました。
 しかし、連合に属する大阪市職員労働組合、大阪市従業員労働組合、大阪交通労働組合、大阪市水道労働組合などで構成している大阪市労働組合連合会(略称 市労連)は「助役から市長への世襲」路線を擁護して傘下の組合員を動員し、市長「与党」体制に組み込まれてきたのが事実経過なのです。
 あらためて、このような市労組の、市民のみなさんに対する使命を自覚し、住んでよかった、働いてよかったと言える大阪市をつくるため、市民のみなさんと職員の切実な要求に耳を傾け、要求の実現のためにも奮闘するものです。

(2005年1月17日加筆修正)
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