有事法制反対アピール
大阪市役所のすべての職員
  すべての労働組合役員のみなさんに訴えます。

アメリカの戦争に
  自治体と国民を強制動員する
        有事法制を阻止しょう

2002年5月1日         
大 阪 市 役 所 労 働 組 合     
執行委員長 成瀬 明彦


有事法制は日本を「戦争する国」に変えるもの
大阪市労組執行委員長 成瀬明彦
 小泉内閣は、国民の強い反対にもかかわらず、4月17日、有事法制関連3法案(武力攻撃事態の対処法案、自衛隊行動を自由化する関連法案、安全保障会議設置の改正法案)を国会に提出し、今国会で成立させ、その後2年間ですべての関連法案をつくるとしています。これは、日本を現実に「戦争する国」に変えようとするものです。
 2001年9月のアメリカでのテロ事件とアメリカの報復戦争に対し、武力でなく国連を中心とする国際協力と「法による裁き」でテロ根絶を求める声が世界に広がり、米ブッシュ大統領の「悪の枢軸」発言やイラクヘの武力攻撃の動きに対し世界各国から批判の声が高まっています。 
 しかし、有事法制関連法案では、政府が「武力攻撃のおそれがある」と判断すれば、国会の事前承認なしに首相の権限で国民の権利を制限できるとなっており、アメリカがアジア介入戦争を開始した場合に発動される危険性を持つものです。

市民も職員も戦争遂行に組み込まれる

 自治体に対しては、住民への避難命令、自衛隊の港湾・空港の独占使用、公立病院使用などの指示が可能であり、従わなければ国が代わりに直接執行できるとなっています。さらに、NHK、民放、NTT、JR、電力、ガス会社などの公共機関や国民生活につながるあらゆる業種が首相の命令下に置かれ、違反者には、禁固・罰金などの刑罰が課せられます。
 首相が「有事」と宣言すれば、戦争をするため軍事を優先させ、国民の土地や財産、労力などを使用、動員するための法制であり、「有事」とはまさに戦争のことなのです。そして、戦争協力を拒否すれば犯罪者になり、反戦の運動も盗聴や集会禁止などの制限が懸念されます。まさに、戦争を放棄した憲法第9条はもとより、基本的人権をも踏みにじるものです。
 首相に指示権や「代執行」権が付与され、大阪市役所も有事体制に組み込まれます。市民病院、総合医療センター、環境事業工場、環境事業センター、港湾、さらに給水のために水道局職員、輸送のために市バス、地下鉄など交通局職員が直接動員される他、憲法に反して住民財産の取り上げなど、市職員は戦争への強制参加の執行者にさせられます。
 このように、今回の有事法制関連法案は、首相への強力な権限集中で国会や地方自治体をないがしろにし、国民の自由と人権を制約するなど、憲法を蹂躙し民主主義を踏みにじる戦後最悪の悪法であり、民間人も含め地方自治体も戦争遂行に組み込むものとなっています。

大阪市役所の反戦・平和の伝統を今こそ発揮しよう

 私は、1964年に大阪市役所に就職して以来38年間、大阪市役所の労働運動に関わってきました。1945年生まれの「戦争知らない世代」でありましたが、復員してきた多くの傷痍軍人を実際に見てき、軍帽に白衣姿、右手のない人、左足のない人、両足が切断された人など鮮烈な記憶があります。反戦川柳作家・鶴彬の「手と足をもいだ丸太にしてかえし」。まさにそのような肢体の傷痍軍人がいました。また、戦後の食糧難は本当に酷いものでした。当時、心斎橋のそごう百貨店は占領軍司令部(GHQ)に、大阪市立大学は占領軍の宿泊施設に供用された記憶があります。この時代に育った体験からも、とりわけ反戦平和を私の活動のもっとも大切な分野として運動をすすめてきました。
 今年3月、1960年に採用され、60年安保闘争で御堂筋のフランスデモを体験した先輩職員は定年退職されましたが、70年安保、沖縄返還闘争をたたかってきた仲間の職員は在職しています。このように、大阪市役所には反戦平和のたたかいの伝統が、今もしっかりと根付いています。この伝統を受けつぎ、管理職職員も、中堅職員も、そして青年職員も本当に力合わせて、各々の職場で、地域で、それぞれのスタイルで、満腔に怒りを込めてアメリカの戦争に国民を動員する有事法制関連法案を断固阻止するためたたかおうではありませんか。
 すでに、有事法制関連法案の阻止にむけて、広範な団体による共同の輪が広がっています。大阪でも、5月20日夜に、海員組合、私鉄総連、国労、自交総連など、連合、全労連という、「所属するナショナルセンターや組織の違いを超えて、平和憲法の理念を共有し、1日共闘による有事法制反対のたたかい」として、「有事法制反対5・20関西集会」が扇町公園で開催されます。こうした行動を大いに支持し、参加し、さらに共同の輪を広げ、有事法制関連法案を阻止する大きな流れをつくろうではありませんか。

ふたたび過ちを繰り返さないために

 小泉首相らは、「備えあれば憂いなし」とさかんに言い立てています。そうでしょうか。戦前の「国家総動員法」立法の歴史からみても、「備えた後で戦争」になったという苦い経験があります。戦争と人権侵害は一体なのです。憲法前文にあるように「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意し」、国民主権を確立した誇るべき歴史を忘却してはなりません。むしろ、1999年のオランダのハーグ「世界市民会議」では、各国の議会に向けて「日本の憲法9条のように戦争放棄宣言を採択すること」を呼びかけているのが世界の動きです。
 有事法制は結局のところ戦争をすすめる側の「備え」です。戦後50余年、日本が参戦せず平和を維持してきたのは、まさに憲法を守ってきたことによるものです。今、日本に求められることは、憲法第9条を生かして戦争や「有事」を防ぐ努力です。軍事に偏した有事法制の制定が、アジア諸国の不安を高めることは間違いありません。
 私たち市役所労働者の先輩は、戦前の天皇制下で、赤紙(召集令状)を配布し、アジアで2,000万人、国内でも300万人もの犠牲をうみだす戦争政策を遂行する立場におかれました。
私たち市役所労働者は、住民のいのちと暮らし平和を守るため、再び日本とアジアを戦場にするための戦争体制づくりに断固として反対し、大阪市当局にもきっぱりと戦争協力に反対することを求めていかねばなりません。愛する夫を、最愛の我が子を、「万歳」しながら送り出した妻や母親たちは、太平洋戦争当時、目も耳も口も封じられ「生きて帰ってほしい」とは言えなかったのです。いま、黙っていたら過ちを繰り返すことになります。どうか私の訴えをご検討ください。