社会的信頼の回復は根本的誤りの克服から ―― 自治労の犯罪と腐敗究明の現段階にあたっての見解 ―― 《2001年10月29日 日本自治体労働組合総連合 中央執行委員会》 (1)自治労本部の不正経理、裏金の告発から1か月が経過しました。本部役員を含む3名と公認会計士の逮捕、16口座7億7千万円の裏金残金と39億円の簿外債務の存在、幹部の海外出張時 120万円、年1000万円にのぼる餞別金、右翼や広域暴力団とのつながりなどに社会的批判と糾弾が集中しています。事件の重大さから、自治労の内部ではいくつかの県本部、単組が組合費納入の凍結を決めています。 (2)不正経理問題に関する一連の事件は、労働組合運動とは全く無縁な犯罪行為です。いわんや住民全体に奉仕する職務を担う職員でつくっている自治体労働組合として、二重の意味で許されない行為です。また、今回の事件は自治労内部にとどまらない、日本の労働組合運動全体の信頼を失墜させ、労働者のたたたかいに大きな障害をもたらした点できわめて深刻な問題です。自治体労働者と住民との共同のたたかいへの否定的影響も無視できません。 東京地検特捜部の捜査は継続中ですが、自治体労働組合への社会的信頼に応えるために現段階での自治労連の見解を表明します。 (3)事件に対する自治労本部のこれまでの対応では、残念ながら組合員の不信と疑問にこたえることも、信頼を回復することも不可能と言わざるをえません。 第一に、真相究明の姿勢が不徹底だからです。 組織対策のためなどと説明されている裏金の使途は明らかにされていません。新聞報道が事実であれば、裏金は、東京、神奈川、愛知、滋賀、京都、大阪など15都道府県本部に、また県本部を通さず直接各単組にも支出されており、自治労本部だけの問題ではなくなっています。しかし、自治労に設置された真相究明委員会は「その使途が自治労運動の推進という観点からは正当なものであった」(10月15日)と報告しています。裏金で進められる「正当」な運動などというものは組合民主主義と社会的常識からはあり得ません。 第二に、政党からの独立、資本・当局からの独立、一致する要求での行動の統一という労働組合のあり方の原点に立っての反省と見直しになっていないからです。 事件は個々の役員の資質によってだけでなく、自治労本部及び事業本部、それぞれの時期の財政局長、書記次長などの主要幹部が関わり組織的に引き起こされたものです。自治労本部は、再生のために、真相の究明と関係者に対する法的・組織的対処、39億円の借財への対処、本部の責任処理を進め、意志の決定過程と会計・財務処理、組織運営のあり方を改善し、役職員の意識の抜本的な改革を行うと伝えられています。これはきわめて当然のことです。しかし、自治労本部は、事態の根本にあった誤りを克服しようとはしていません。 1989年、戦後日本労働運動の積極的伝統を受け継ぎ、労資協調路線に転落した自治労と訣別し自治労連は結成されました。その原点は、政党からの独立、資本・当局からの独立、一致する要求にもとづく行動の統一にありました。自治労本部がこの労働組合存立の三原則から大きく逸脱してきたことが、犯罪と腐敗の温床となっています。 「政党からの独立」に反して特定政党支持の押しつけが継続され、公表されている予算だけでも組合員1人25円、年間2億円をこえる政治活動資金が長年にわたり使途不明のまま特定政党やその政治活動のために注ぎ込まれています。裏金が政党と無関係であったのか、みずから明らかにされなければなりません。 「資本・当局からの独立」に反して、地方政治ではオール与党の自民党型政治を積極的に推進し、「パートナー」と称する首長・当局との癒着が進みました。自治体にとどまらず、村山自社連立内閣からの国政との関わりが腐敗を麻痺させ増幅させる自治労本部の体質の原因となっていなかったのか、真摯な検証が必要です。 「一致する要求にもとづく行動の統一」は、自治労の一定の単組と一部の県本部では実現していますが、異なる意見と傾向を「共産党」とレッテルを貼り排除するかたくなな反共主義が、特定政党支持と結びついて依然として貫かれています。排除の論理に固執する限り、労働組合の民主主義は成り立ちません。長期にわたり組織的につくられ使途不明のまま闇に葬り去られようとしている莫大な裏金は、主人公が組合員であることを忘れた民主主義の致命的欠落の結果ではないでしょうか。 (4)「労働組合は何のために存在するか」「思想信条の異なる労働者が団結する原則は何か」。三つの原則に即した検討こそが、労働組合への社会的信頼を回復する取組みの根本に置かれなければなりません。「労働組合の基本原則の確立」、この思いは今回の事件に憤りを感じる多くの労働者と国民に共通するものであることを確信します。 (5)憲法違反の自衛隊海外派兵、保育・学校給食・清掃の切り捨て、自治体を企業の儲けの場とする市場化、強制的な市町村合併、むだな大型公共事業の横行と環境破壊、地方交付税の削減、「公務員制度改革」、不良債権最終処理と大企業のリストラ・人員削減による地域経済の破壊、雇用破壊と失業、健保本人3割負担・高齢者医療大改悪、賃金の切り下げなど労働者・国民・住民と自治体労働者に対して小泉「構造改革」の嵐が襲いかかっています。労働組合の真価が今ほど問われている時はありません。 自治労連は全力で小泉「構造改革」攻撃と対決する決意を表明するとともに、すべての自治体労働者・労働組合に、一致する要求で「たたかってこそ労働組合」の共同を強く呼びかけます。 (以上) |