第263号 2002年5月15日号
有事法制反対特集号


    機関紙「大阪市労組」に掲載した記事を紹介します

1面の記事
☆告知板
  5/16 大阪市研究会第89回例会
  5/17 市労組オレンジセミナー第4回講座
  5/19 新採歓迎「陶芸とバーベQ」
  5/20 有事法制反対の1日共闘集会
  5/22 自治労連第1次統一行動
  5/22 大阪争議支援統一行動
  5/23 大阪から公害をなくす会総会
  5/24 市労組オレンジセミナー第5回講座
  5/24 自治労連教宣集会(〜25)
  5/29 市労組新採歓迎ボウリング大会

☆第73回大阪メーデー
戦争はイヤ 平和がいい 思いはひとつ
 いのちもくらしも平和までもふみにじる
  小泉「改革」への怒りに燃えたメーデー
扇町公園で開かれた第73回大阪メーデー

メーデー宣言を高らかに読み上げた市労組青年部長の中川有紀さん 大阪労連や大阪春闘共闘委員会の主催する第73回メーデーは、小泉内閣の「構造改革」との対決姿勢を鮮明に打ち出しました。経済が低迷する中でも、不況対策を講じず、医療大改悪、消費税増税などをねらう小泉政権を強く批判青年部と婦人部は「ハリーポッター」のいでたちでパフォーマンスする1日となりました。
 メーンスローガンは「働く者の団結で生活と権利を守り、平和と民主主義、中立の日本をめざそう」を掲げ、とりわけ日本が戦争に乗り出すための有事法制をつくり、平和も壊そうとしていることに、雨の中メーデー参加者は怒りのデモ行進を繰り広げました。
 この「怒りのエネルギー」で、「戦争国家法案」を阻止するまでたたかいぬきましょう。

☆有事法制反対5・20関西集会
有事法制反対5.20関西集会チラシ

☆コラム「中之島」
▼「高校生はテロも報復戦争も反対です」昨年九月に起きた米国での同時多発テロをきっかけに、小泉首相あての署名を集めていた東京の高校生たちが5月9日、外務省を訪れ署名を提出。これまで提出した分をあわせると9,600人にのぼります▼同日、衆院有事法制特別委員会で福田康夫官房長官は「(インターネット等)新しい伝達手段を使って任に当たることは当然考えられる」とのべ、新聞社や通信社も武力攻撃事態法案のなかの「指定公共機関」の対象になる可能性を示唆しました▼これは「公共の福祉」を理由に、集会や報道の自由などの制約もありうるとの考えを示したもの。これまで政府は「自由と権利」を制限する具体的内容は、今後整備する個別法(私権制限法)で定めるとしており、言論・集会の自由まで対象だとのべたのは初めてです▼「公共の福祉」の名で国民の権利すべてに網をかけるように制限できるという議論は明治憲法における、法律さえつくればすべての国民の権利が制限できるという、まさに戦前の亡霊がよみがえってきたことを思わせます▼高校生の平和と自由への熱い気持ちは学校の友人たちだけでなく、教師や親にも共感が広がり、全国各地からも署名と激励のメッセージが集まっていると言われています。有事法制を阻止するため運動をひろげよう。


2〜4面の記事
※この特集記事は「憲法会議」発行、月刊「憲法運動」5月号より、一部転載しています。

☆特集 「有事」ってズバリ戦争のことだ! STOP!有事法制
平和大好き戦争協力はイヤ
世界に広げたい、憲法第9条

日本国憲法 第2章 戦争の放棄
第9条[戦争の放棄、戦力及び交戦権の否認]
@ 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
A 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。


 小泉内閣は、今国会で「有事法制」を成立させようとしています。戦争など緊急事態が起きたとき、政府に権限を集中して、国民の基本的人権も一部停止してしまおうというのです。でも日本は憲法9条で戦争をしないと誓った国です。しかも政府自身、日本が外国から攻められる危険性はないと認めているのです。いったい何のために、だれのために有事法制が必要だというのでしょうか。機関紙「大阪市労組」では、「有事法制三法Q&A」を今回と次号で2回に分けて掲載します。


有事法制三法案Q&A

はじめに  有事法案、国会に提出!

<憲法制定時における有事法制をめぐる議論>

 「備えあれば憂いなし」と言っていた小泉首相は、とうとう有事法制関連法案を国会に提出しました。これは、日本国憲法のもとで許されることなのでしょうか。

 日本国憲法には、有事に関する規定はまったくありません。憲法制定の過程で、衆議院の委員会である議員から、″一朝事変の際には、国民の権利を停止することができるような規定が必要ではないか″と、戦前の戒厳令などを念頭においた質問がありましたが、これにたいし、金森徳次郎国務大臣は次のように答弁しています。
 「民主政治を徹底させて国民の権利を十分擁護いたしますためには、左様な場合の政府一存に於行いまする処置は、極力これを防止しなければならぬのであります。言葉を非常ということにかりて、その大いなる途を残しておきますなら、どんなに精緻なる憲法を定めましても、口実をそこに入れて又破壊せられるおそれ絶無とは断言し難いと思います。したがってこの憲法は左様な非常なる特例をもって――いわば行政権の自由判断の余地をできるだけ少なくするように考えたわけです。したがって特殊の必要が起こりますれば、臨時議会を召集してこれに応ずる処置をする。又衆議院が解散後であって処置のできない時は、参議院の緊急集会を促して暫定の処置をする。同時に他の一面において、実際の特珠な場合に応ずる具体的な必要な規定は、平素から乱用のおそれなき姿において準備する)
ように規定を完備しておくことが適当だろうと思うわけです。」(1946年7月15日)
 戦前の明治憲法は″有事づけ″といわれるほど非常事態の規定が多く、国民の日常生活までも軍隊が支配するような状態になり、ついに侵略戦争へと突入しました。その苦い経験を蹄まえて、日本国憲法には非常事態の規定を盛り込まなかったのです。そして、「実際の特殊な場合」に備えての必要な規定としては、自然災害に備える災害対策基本法、大規模な騒乱に備える警察法などとしてすでに整備されています。これらに加え、戦争に備える有事法制を提出することは、戦前の反省にたって制定された日本国憲法の精神を根本から否定するものです。 

<これまでの論議と今回の法案の特徴>

 有事法制については長年にわたって防衛庁の研究がおこなわれ、今年に入って政府の構想もいろいろ発表されてきました。それらと比べて、今回の法案はどのような特徴をもっているでしょうか。 

 法案の内容をめぐっては二転三転してきました。たとえば、自衛隊の行動を円滑にする法制と並んで提案されることになっていた米軍の行動を円滑にするための法制については、「法律上の措置をとる必要はなく、法律改正以外の所要の措置を講じることにより対応することが適当」(4月3日、外務省)と、現在ある法令の拡大解釈ですませることにしました。また、医療・土木建築・運輸関係者への業務従事命令への罰則規定は先送りの形となりました。
 それは、国民の反対が広がらないように、また、憲法などとの関係で国会論戦を切り抜けるうえでの困難を少なくするようにと配慮をこらしたためといえます。しかし、自衛隊へ物品や役務の提供と抱き合わせで、米軍にも同様の特権を与えることをスルリともぐりこませたり、強制的に協力させる範囲を広範な公共機関に広げるなど、当面必要とする内容はほとんど盛り込まれているといってもよいと思います。
 とくに、「武力攻撃事態法案」が提出されていることは大きな意味をもっています。なぜなら、これは有事法制全体の土台であり、まず有事法制が必要だということを国民と国会に認めさせるものとなるからです。ここで憲法論などを突破しておけば、今後の個別の法案では憲法論議は基本的にクリアずみということになります。また、ここには、「法制整備の項目」が掲げられていますから、今後提出される新たな法案はすでに予定ずみのことを具体化するだけということになります。したがって、今回出された法案だけで判断するのではなく、政府がこれまでに明らかにしてきた有事法制についての構想や、法案に盛り込まれた今後の法制整備項目の全体を念頭におきながら判断していくことが重要だと思います。 同時に、いろいろな「配慮」はあるにしろ、今回の三法案を見るだけでも、有事法制があらゆる面で軍事優先の国家体制をつくるもので、日本国憲法とはまったく相容れないものであることが鮮明になっています。とくに、法案名称からはじまって条文のいたるところに「国及び国民の安全」という言葉が出てきます。これは、「われら(国民)の安全と生存を保持」するため平和主義をつらぬくとした憲法前文とは正反対に、国民の安全よりは「国」(政府や支配層)の安全や利益を優先させる立場で軍事力を行使するというものです。

<提出された三法案とは?>

 4月17日国会に提出された有事法制三法案とは、どんな法案なのですか。

 「武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案」(略称「武力攻撃事態法案」)、「安全保障会議設置法の一部改悪案」、「自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部改悪案」の三法案です。
 「武力攻撃事態法案」は、「武力攻撃事態」とはどういう事態か、それに対処する政府の基本的考え方や基本的な対処方針、執行体制などについて定めるとともに、今後2年がかりで整備していく有事法制の全体像を示したものです。いわば、有事法制の土台となるものです。
 安全保障会議設置法の改悪案は、これまで防衛予算や防衛計画大綱などの審議をおこなつてきた安全保障会議の任務に、「武力攻撃事態」に対処する基本方針を作成することを追加し、さらにその機能をささえる補佐機関の設置を定めるものです。
 自衛隊法改悪案は、自衛隊が行動する際に自由に「人」や「物」を動員するための自衛隊法第一〇三条の改悪案、出動する自衛隊員の手当てなどを定める防衛庁の職員の給与等に関する法律の改悪案があります。なお、この自衛隊法の改悪と一体のものとして、自衛隊の行動を円滑にするために防衛庁以外の省庁が所管する20の法律に特例や適用除外を設けることも提案されています。

そもそも  「武力攻撃事態」とは何か

 <基準のあいまいな「武力攻撃事態」>

 法案の名称にも登場する「武力攻撃事態」とはどういう事態ですか。

 法案では、「武力攻撃事態」とは、「武力攻撃(武力攻撃のおそれのある場合も含む)が発生した事態又は事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態」(第二条)としています。「武力攻撃」、「武力攻撃のおそれのある場合」、「武力攻撃が予測される事態」の三つの異なる内容をひっくるめて「武力攻撃事態」とよんでいるのです。
 「武力攻撃」という言葉について、法案は、「我が国に対する外部からの武力攻撃をいう」では説明になっていません。たとえば、日本の領域内へミサイルが一発飛んできた場合、あるいは外国の軍隊の艦船や航空機等が侵入したケースが生じた場合であっても、それが領土を侵害して国民の生命・財産に危機をもたらすなどの実害をもたらしていない場合には、そのことへの対応は慎重でなければならないからです。外交交渉で対応すべき問題まで「武力攻撃」とみなして軍隊で対応すれば、日本は逆に戦争をしかける国となりかねません。
 しかし、それ以上に大きな問題は、「武力攻撃事態」には「武力攻撃のおそれのある場合」が含まれ、さらにその前の段階である「武力攻撃が予測されるに至った事態」がつけくわえられていることです。「武力攻撃のおそれ」と「武力攻撃が予測される」という言葉は、自衛隊法にある「防衛出動」(第七六条=「外部からの武力攻撃(おそれのある場合を含む)」が「発生した場合」)と、「防衛出動待機命令」(第七七条=「事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態」)の二つの条文にある言葉をそのまま使ったものです。しかし、この二つの段階を区分する客観的な基準はありませんし、そもそもどういう事態が「武力攻撃が予測される段階」かも、あいまいです。したがって、きわめて主観的な判断で軍事行動が開始されることにならざるをえません。
 これにたいし国連憲章は、第五一条で「武力攻撃が発生した場合」に限って自衛権の行使としての武力行使を認めています。そのため、「おそれ」の段階でも防衛出動を認めている自衛隊法でも、具体的な武力行使にあたっては「国際の法規及び慣例」を守ると一応の条件をつけています(第八八条)。ところが政府の提出した法案は、「武力攻撃」にいたらない「おそれ」や「予測される事態の段階でも武器の使用を認めるものとなっています。

 <アメリカがおこす「周辺事態」>

 具体的な「武力攻撃事態」としては、どんなケースが考えられるのですか。 

 たとえば、中谷防衛庁長官は「(日本への武力攻撃は)3年、5年のターム(期間)では想像できないかもしれない」(2001年5月31日、参院外交防衛委員会)と述べています。この点では、小泉首相や自衝隊幹部も同じです。その一方で中谷防衛庁長官は、「武力攻撃が予測される事態」について、「当然、周辺事態のケースは、この一つではないかと思う」(2002年4月16日、衆院安全保障委員会)と語っています。これは、日本に対する武力攻撃ではなく、実際には「周辺事態」を念頭においているということです。「周辺事態」とは、「我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」(周辺事態法第一条)と説明されていますが、実際にはアメリカが日本の領域外のアジア・太平洋地域でおこなう戦争のことです。その戦争が日本の平和と安全に重要な影響を与えるとして、自衛隊はもとより自治体や民間も動員して米軍を支援することを定めたのが周辺事態法です。
 したがって、戦争が開始されるのは日本の領域の外です。最初から日本が「武力攻撃」を受けるわけではありません。にもかかわらず、自衛隊はこの戦争に参加し、自治体や民間も米軍に協力しなければなりません。もちろん、どんな形であれ日本がアメリカの戦争に協力すれば、当然アメリカが戦争をおこなう相手国は日本も「敵国」とみなして反撃する可能性も否定できません。この場合、そうした相手国にたいする自衛隊や米軍の武力行使が、国連憲章にいう自衛権の行使にあたらないことはいうまでもありません。
 「武力攻撃事態」という言葉が、「武力攻撃が予測される事態」から「武力攻撃おそれ」の段階、そして「武力攻撃」とかなりの幅をもたせているのは、こうした戦争を想定しているからです。つまり、アメリカが戦争を決意した段階から武力攻撃が「予測される事態」としてこれに参加する準備を始め、アメリカが戦争を開始すると同時にこれに参加できるようにするためです。
 今回の有事法制は、こうした戦争をおこなう自衛隊と米軍の行動を全面的にささえようとするものなのです。小泉首相は「備えあれば憂いなし」などといいますが、決して一般的な「備え」ではないのです。

では  「武力攻撃事態」にどのように対処するか

<軍事万能の対処方針>

 「武力攻撃事態」がおこったら、どのように対処するのですか。

 「武力攻撃事態」に対処する方針の「基本理念」(第三条)では、まず、「武力攻撃が予測されるに至った事態」では、「武力攻撃の発生が回避されるようにしなければならない」といっています。そのため、法案には「外交上の措置」も掲げられてはいます。これは、日本国憲法の平和主義の原則からすれば当然すぎるほど当然のことです。国民の生命と安全を守るというのであれば、むしろ、そうした「武力攻撃が予測される事態」をもたらさないよう日常の平和のための外交努力を強化することこそ、日本政府の最大の責務といわねばなりません。いったん武力衝突がおこれば、どんなに「万全の措置」をとろうが、国民が被害をこうむることは避けられません。
 しかし、小泉首相は、ブッシュ米大統領がイラン、イラクとならんで北朝鮮を「悪の枢軸」として敵視する発言を無条件に支持しています。また、歴史教科書や靖国神社公式参拝など侵略戦争に無反省な姿勢をあからさまにつづけ、アジアの人々の怒りをかっています。そのうえ、周辺事態法を制定している日本にアジア諸国が警戒感をもつのは当然です。
 日本政府は、このようにアジア諸国と平和・友好の関係を築く努力を何もしていないばかりか、これまでアメリカの戦争政策に反対したことは一度もありません。「周辺事態」もアメリカの戦争政策によってもたらされるものであるにもかかわらず、日本は無条件にこれに参加することを約束し、この約束を実効あるものにしようというのがこの有事法制法案です。武力攻撃を回避するようにするというのも、言葉でだけのものといわざるをえません。それは、「予測される事態」の段階で、「対処に関する全般的な方針」を作成するとしていることでも明らかです。対処方針そのものが軍事的衝突を避ける立場ではなく、軍事万能の立場にたっているのです。
 その対処の基本方針は二つで、第一は、武力攻撃が「予測される」段階から自衛隊は作戦行動を開始し、同時に行動する米軍とともに、さまざまな特権を使いながら、最終的には武力を行使することです。第二の柱は、この自衛隊や米軍の行動に国民を協力させつつ、国民の行動や経済生活の面でさまざまな規制をおこない戦争遂行の体制をつくることです。(第二条六)
 そのことを具体化するのが武力攻撃事態対処法案と抱き合わせで出されている自衛隊法改悪や今後予定されているさまざまな有事法案です。


<「人」も「物」も広範囲に動員>

 自衛隊などの特権とはどのようなものですか。

 現在の自衛隊法は第一〇三条で、@自衛隊に出動命令が下ったときに、「土地、家屋もしくは物資を使用し、物資の生産、集荷、販売、配給、保管もしくは輸送を業とする者に対してその取り扱う物資の保管を命じ又はこれらの物資を収用する」、A同様に自衛隊に出動命令が下ったとき、「医療、土木建築工事、又は輸送を業とする者」に対し、そのおこなっている業務を自衛隊のためにおこなわせることができる、となっています。つまり、物資や施設には「収用命令」、人には「業務従事命令」が出せるということです。
 自衛隊への出動命令は「武力攻撃のおそれ」の段階でも出されますが、自衛隊法一〇三条の改悪案ではその前の「武力攻撃が予測される事態」から、陣地その他の防衛のための施設をつくるため土地の収用を開始することができ、その土地に立木等があったら移転または処分できるとしています。
 先に紹介した国連憲章五一条にてらしても異常なのは、「武力攻撃のおそれ」にもいたらない「予測される事態」で、陣地その他の防衛のための施設をつくる作業中にも自分や同僚の身を護るため必要があれば武器を使用できるとしていることです。レーダー網をかいくぐって外国の戦闘機が襲ってくるというのでしょうか、それとも国内の何らかの勢力が妨害をおこなうことにたいし、自衛隊が武器をもって立ち向うというのでしょうか。 次に、「武力攻撃」または「武力攻撃のおそれがある」段階になり防衛出動命令が出されると、前にあげたような医薬品や食糧、燃料など必要な物資を何でも収用できることになります。別に対象は限定されていませんからコンビニからおにぎりを、ガソリンスタンドからは燃料を提出させることも可能です。また、施設であれば、空港、港からはじまって、病院であれ、団地の集会所であれ、民間の家屋であれ、限定はありません。家屋については、わざわざ形状を変えることができると書いてあります。
 このほか、出動命令が下った自衛隊が移動する場合、道路や橋が破損していたり、戦車などの重みにたえられない時には、公のものではない通路や空き地、水面を通行できるという規定を新設することが盛り込まれています。この場合、損害を受けた者から損害の補償を請求されたら補償するとしていることは、戦車など通行によって通路や空き地が破損されることも考えているということです。
 業務従事命令の対象となる医療・土木建築・輸送関係者の範囲は政令で決められることになります。たとえば、輸送関係ひとつみてもトラック、バス、鉄道など陸上だけでなく、海も空も含むことになりますからきわめて広範囲になると考えられます。

<命令は拒否できるのか>

 収用命令や業務従事命令はどういう手続きで出されるのでしょうか。また、それを断ることができるのでしょうか。

 収用命令や業務従事命令は、防衛庁長官らの要請にもとづいて都道府県知事が発行する「公用令書」をもっておこなうことになっています。とくに、土地の収用については、所有者の所在がわからない場合には後で渡してもいいことになっています。旅行から帰ってみたら、自分の土地に自衛隊の陣地がつくられていたということもあるわけです。もちろん、地方自治体は、こうした要請に応えられるよう、自衛隊が必要とする物資や施設がどこにあるか、業務命令の対象となる人がどこに住んでいるかを、ふだんから調べておかなければならないことになります。
 収用命令の場合は、土地や物資の所有者が拒否してもむりやり取り上げることになります。拒否しようがありません。とくに物資の保管命令に違反して物資を隠したり、他に売ってしまった者には懲役6月以下の罰則、物資や土地についての立ち入り検査を妨害したり、拒否した者には20万円以下の罰金という刑罰が新しく設けられます。
 業務従事命令については、防衛庁の研究をまとめた文書では、「病気、災害その他やむを得ない事故により業務に従事することができない」と都道府県知事が認めた場合だけ、命令は取り消されることになっていますが、罰則はつけられていません。しかし、これらの業務の多くは、後に述べる「指定公共機関」に含まれることになります。そうすると、政府はその経営者に協力を強制することができ、指示を受けた経営者は医者や看護師、運転手らに自衛隊への協力を業務命令としておこなわせることにならざるをえません。この場合は断ればクビですから、罰則がついていると同じです。
 しかも、行政機関がおこなった行為によって権利が侵害された場合には、一般的には簡単な手続きで迅速な結論を出す行政不服の審査を申し立てることができますが、自衛隊法第一〇三条にもとづく収用命令や業務従事命令については、「不服申し立てをすることができない」となっています。長期の裁判でも覚悟しないかぎり、拒否することは非常に難しいといわざるをえません。


☆市労組レーダー
○おおさか憲法まつり2002

5月3日、エルおおさかで開かれた「おおさか憲法まつり」 おりしも有事法制三法案が国会に提出されたすぐあとの憲法記念日の5月3日、恒例の「おおさか憲法まつり」が、天満橋・エルおおさかで開かれました。憲法会議の足立幹事長のあいさつに続き、弁護士・市民によるSF仕立ての創作劇「ルキフェルは何処に」が上演されました。「ルキフェル」とはダンテの「神曲」に登場する地獄にすむ魔王のことで別名サタン。「今、憲法がないがしろにされようとしているのに、多くの人は無関心。まず、自分の無関心さに気付いてほしい」との願いをこめたと作者は語っていました。
 シンポジューム「憲法を活かした真の国際貢献とは」では、元朝日新聞大阪本社編集局長の井原郁夫さん、国境なき医師団の山本敏晴さん、新日本婦人の会住吉支部事務局長の岩井英子さんがパネラーで登壇しました。井原さんは「本日時効を迎えた、朝日新聞阪神支局襲撃事件は民主主義の破壊であり、彼らは反国民的輩だ。そして小泉内閣が持ち出した有事法制は、まさに憲法否定の法案だ」と厳しく発言しました。


○市労組連第13回定期大会開催

 定期大会は大阪府教員会館(たかつガーデン)で開催され、市労組からも定数の代議員全員が参加し、大会は成功裏に終了しました。議長団に市労組副委員長の池尾剛さんも選出され、一般経過報告を了承し、議案の2002年度運動方針と会計予算を満場一致で決定しました。
また新執行体制は表のとおり、出席代議員の選挙で決まりました。

役  職  名 氏   名 単 組 名
執行委員長 小門 孝仁 市高教
副執行委員長 潮見 芳廣 市 教
成瀬 明彦 市労組
藤嶋 具治 市障教
西山 博実 学現労
書 記 長 中山 直和 市労組
書記次長 安田 幸多 市障教
会   計 山下 和代 市 教
執行委員 辻本 正純 市高教
坂口  修 市高教
宮城  登 市 教
藤原 一郎 市労組
実森 之生 市障教
遠藤 行博 学現労
小松 理伸 学現労
会計監査委員 東山 邦夫 市高教
守山 禎三 市障教
高田 真一 市労組

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