2000年度大阪市予算案に対する 大阪市労組の見解
2000・2・23 大阪市は2月23日「2000年度予算(案)」を発表しました。一般会計は1兆8,908億円で前年度当初予算に比べて 101億円(0.5%)の微増、公営企業など19の特別会計は2兆4,003億円で前年度当初予算に比べて1,178億円(5.2%)の増となっており、予算総額は前年度当初予算と比べて3.1%増、予算総額は4兆2,912億円の予算案になっています。 発表された予算案は3月1日から開会される市会で審議されます。2000年度の予算編成方針は、税収が3年連続して前年度を下回り、財源対策債などの特別な起債を引き続き発行せざるを得ない極めて深刻な事態であるとし、厳しい財政状況の中で、行財政改革に積極的に取り組み、起債の減額など財政の健全化を進め、地方交付税などの税外収入の確保に努めるとしています。今年度は歳出全般の徹底した見直しを行い、簡素効率化など経費の削減を図ることをうたった大阪市総合計画21の「中期指針」の最終年度にあたります。自民党主導の連立内閣がバブル経済崩壊後、地方自治体と住民に犠牲を押し付ける中で、大阪市の新年度予算案は、消費税増税による消費不況にあえぐ市民に負担と犠牲を一層強いる一方で、大企業向けの「大型プロジェクト」予算は、オリンピック誘致をも利用しながら、優先的に確保し、3K赤字への引き続く手厚い貸し付けだけでなく3局を移転させるなど、21世紀の大阪市の財政をさらに「開発会社」化から抜け出られなくなる道を歩んでいます。 また、同和予算では政府の地域改善対策協議会「意見具申」が指摘しているように「物的な生活環境をはじめ様々な面で存在していた格差が大きく改善された」、「国民の差別意識は着実に解消に向け進んでいる」と述べ、全国的流れとなっている「同和行政終結」に大きく逆行し、「差別が現存する限り・・・積極的に推進する」とした立場から、2000年度同和対策関連事業費を「同推協意見具申を尊重し、総合的な人権施策を推進する中で同和問題の早期解決をめざす」として、77億3,300万円(主要事業の概要説明だけで)を予算計上しています。 財政硬直度を示す公債費負担比率は「警戒ライン」とされる15%を昨年に引き続き突破して17.2%(昨年は15.9%)となっています。 《歳入の特徴》 不況を反映し、法人市民税など市税収入減は632億円と大幅(9.7%)です。この数字は1988年の水準です。政策減税などの補填を含む国からの地方交付税は昨年比1.5倍の700億円を計上しています。国が交付すべきものですからこの交付税は地方分権を獲得する運動としてもあいまいにせず、「予算に計上しただけ」にさせないような取り組みが行政としても議会筋としても問われることになります。 一般会計での市債残高は2兆3,518億円(99年末2兆1,728億円)と見込まれていますが、これは、今年度市税収入見込み(6,615億円)の3年半分にも相当するまでになっています。特別会計を含む市債残高は5兆597億円(99年末4兆8,244億円)の膨大な額で市民一人当たり194万円にのぼり、市民負担がますます重くなる予算と言えます。 財政の硬直度を示す経常収支比率は一般会計で90.5%(昨年度87.3%)と上昇し、硬直化がますます進んでいます。 《歳出の特徴》 歳出では市労組などが強く予算要望してきた内容が一定反映しています。子育て支援では、3歳未満時の保育料が10%引き下げ、第2子は50%の軽減、第3子以降は無料となっています。乳幼児医療費助成は通院でこれまでの3歳児までから4歳児までに、児童生徒就学費補助金は16億円から24億円にそれぞれ充実されました。養護学校の冷房化も3校でスタートしました。 大型公共事業は新人工島護岸工事着手として16億円、関空2期事業への出資等に63億円(総額586億円)を計上しています。テクノポート線着手に33億円、夢洲トンネルに18億円、今秋完成予定の夢洲舞洲連絡橋(可動橋)に29億円(総額635億円)、夢洲大水深(15mバース)コンテナ埠頭に57億円、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン事業関連に今年も出資・貸付として57億円を計上するなど引き続きゼネコン向けの事業予算案といえます。そして、98年度から7年間にわたって「市税投入による経営支援を行う」ことを方針化し、市民批判の強いATC、WTC、OCATなどの巨大ビルを抱えた「外郭団体」に対して、本年もそれぞれ33億円、40億円、24億3,300万円の超低利・長期貸付を計上しています。それ以外にも前述したように、WTCへの3局の移転(敷金31億円、家賃共益金年間21億5,400万円)やATCへの消費生活課等(敷金1億6千万円、家賃共益金年間1億1千万円)の移転という形での新たな支援策を講じようとしています。 また、同和行政の終結に逆行する同和対策事業費は51億6,800万円、同和関連事業費に25億6,500万円を計上しています。大阪市がこれまで同和対策につぎ込んできた予算は1兆1千億円余にのぼりますが、「解同」一部幹部の特権確保・利権あさりに使われたために乱脈と不公正がまかり通ってきました。特別対策としての同和行政を直ちに終結させ、一般対策にスムーズに移行させることが求められています。しかし、新年度予算は「人権」の名で批判をかわしながら、改良住宅の建設、共同浴場の整備(14億)、芦原病院への助成(6億円)を継続するなどこれに逆行するものとなっています。市民からの厳しい批判を受けている個人給付などについては同和保育料(6年で一般並)など、一部見直しを進めているものの、相変わらずの大判ぶるまいです。 それに比べて、34万人もの学童保育制度確立署名を提出し、改正児童福祉法を市政に反映するよう予算要望を強めてきた学童保育へは1箇所わずか1万円の補助金の増額でしか予算化しなかったことに怒りの声が上がっています。横山府政が切り捨てた老人医療費助成を大阪市は1年半支えてきましたが、4月からは対象者が非課税世帯に限られます。施行が目前に迫っている介護保険の保険料の減額は国水準のみで、大阪市独自の施策はありません。特養老人ホームは待機者が2722名おられますが、16箇所1380床が整備されます。 尚、オリンピック招致費には9億3,800万円を計上しています。 《「大阪市行革」としての予算》 同時に大阪市当局は2000年度における「21世紀に向けたまちづくりを進めるための行財政改革実施計画」に基づく「行財政改革の主な取組みについて」(平成12年度)を発表しています。詳しくは今後の検討を要しますが、「市民参加と開かれた市政」、「新たな区政の展開」、「OA化・システム化の推進」、「時代に即応した事務事業の再構築」、「時代に即応した組織機構」、「外郭団体の活用と見直し」、「地方分権の推進」、「職員研修の充実」といった主要8項目を具体的にあげています。 私たち市労組は、国の大企業奉仕の臨調「行革」、市民生活と市職員の暮らしと働きがいを奪おうとする市民いじめ、職員いじめの市「行革」路線を許さず、地方分権をすすめ、市民生活を守る立場から2000年度予算要求を行ってきました。2000年度大阪市予算案は、どの観点から見てもいずれも、私たちの勤務条件と市民の暮らしに直接かかわる問題点が山積みされた予算案となっています。 大阪市労組は、引き続き2000年度予算案を検証しながら、問題点を明らかにする取り組みを一層進めるとともに、予算執行についても職員や市民の声を反映していくように運動を展開していきます。そして、自治体リストラ攻撃を押し返し、住民の暮らしと命を守り、地方自治を大切にする市政への転換を勝ち取るために、引き続き運動を強めて行くものです。 以 上 |