2002年度大阪市予算案に対する 大阪市労組の見解 2002・3・1 大阪市は2月22日に2002年度予算案を発表しました。磯村市長は記者会見で「都市間競争」の時代を迎えるなか、比較優位となる施策に限られた財源を重点的に配分した「特性を活かすソフト優先の予算」と説明しました。しかし、その中身はオリンピック招致に失敗したにもかかわらず、これまでの大型開発を推進、赤字事業に税金支援、終息すべき同和行政を一般施策の中に温存する一方、国保料の値上げや生活関連の事業は削減するなど市民にいっそうの犠牲を強いるものとなっています。 最大のマイナス予算 財政規模は一般会計が前年度より881億円(4.6%)少ない1兆8,278億円で、現行の会計制度になった1964年度以来、最大のマイナス幅となっています。特別会計は2兆5,183億円(3.2%)で前年度より792億円増えていますが、全会計でも88億円(0.2%)減の4兆3,461億円になっています。市税収入は6,343億円を見込んでいますが、前年度より400億円(5.9%)の減収です。個人住民税が54億円(4.6%)、法人市民税145億円(11.6%)、のマイナスとなっています。これは深刻な地域経済、リストラや倒産・廃業による所得の減少を示しています。固定資産税は、地価の下落を反映して固定資産税の土地で148億円(10.2%)、償却資産22億円(5.0%)のマイナスとなり、家屋で21億円(1.7%)増えているものの全体で149億円の減となっています。市税収入は1996年度決算に比べて1,453億円(18.4%)も落ち込んでいます。 こうした税収の落ち込みを、地方交付税や市債の発行、基金の取り崩しで埋め合わせています。地方交付税は前年度より170億円多い800億円を見込み、市債による収入は2,108億円を予定しています。起債額は昨年より152億円減っているものの、市債残高は過去最高の5兆4,311億円に膨れあがり、市民一人あたり209万円にもなります。基金からは948億円を取り崩すことになります。 五輪招致失敗後も無謀な開発推進 五輪招致に失敗したことでスポーツ施設整備事業費が101億円から53億円に半減しているものの、無謀な開発に引く続き巨費を投入しようとしています。夢洲はオリンピックの選手村を予定し、その後は人口4万5千人の住宅地を計画していました。その前提がなくなったにもかかわらず、夢洲の整備(71億円)、夢洲トンネル(35億円)、北港テクノポート線(59億円)の建設を継続します。また新人工島整備205億円、関西空港2期事業に44億円を計上しています。関空2期事業については旧運輸省の内部資料で関空の離発着能力を「年間22万回が可能」と試算していたことが明らかになり、これまで「16万回が限度」という2期工事の必要性の根拠が崩れています。 経営破たんが深刻な第3セクター(ATC、WTC、OCAT、大阪ドーム、クリスタ長堀)の赤字穴埋めには125億円をつぎ込みますが、新たに阿倍野再開発、道路公社への赤字支援を予算化しています。市がすすめる阿倍野区の再開発事業では膨大な借金が生まれており、収支不足を補うために2002年度80億円、2003年度からは毎年90億円、24年間で総額2,240億円もの税金投入が必要になっています。さらに再開発地区内に5.2ヘクタールの巨大商業ビル建設を計画しています。建設後はその賃料で建設費とそれまでの赤字分をとりもどすという、バブル的発想の開発に2002年度225億円を計上しています。地下駐車場などの道路公社には60億円の債務保証を行います。 土地信託事業で赤字が膨らんでいる遊園地・フェスティバルゲートには、2002年度中に直営の屋内8遊技施設をすべて廃止し、その跡地に「交通記念館」(仮称)の開設や、空き店舗5カ所(約2000u)を市が借り上げて「ライブハウス」に改修することが検討されています。これもフェスティバルゲートへの実質的な公的支援といえます。 犠牲押しつけ、市民のねがいに背く この3月末で国の地域改善財特法の有効期限が切れ、同和事業はきっぱり終結しなければなりません。今年度の予算案から同和対策事業費の費目がなくなり、個人給付事業などは打ち切られています。しかし、民間病院にすぎない芦原病院の運営に前年度の倍の10億円、同和共同浴場の改修に13億円を計上しています。さらに教員の「同和」加配でも、「教育困難校」加配などとして温存するなど、名前を「一般施策」にしただけで、中身は「同和対策」そのままです。 巨大開発には湯水のように税金を投入しながら、暮らしや教育にかかわる身近な公共事業は、前年度から削られているのが特徴です。待機者が2,312人にもなっている特別養護老人ホームと老人保健施設の建設費36億円、市営住宅建替え・修繕費44億円、小中学校舎整備費25億円、待機児全国ワーストワンの保育所整備費7億円、治水・浸水対策費44億円などが前年度に比べて減っています。 また、国保料は3年連続になる3%(平均2,512円)の値上げ、幼稚園保育料3,000円の値上げになります。新婚家賃補助は初めの3年間、現行2万5,000円から2万円に切り下げ、今年4月から小学校の完全週休2日制が実施されるにもかかわらず学童保育の補助金は年2万円アップしただけで、障害者作業所補助金は据え置くなど弱者にはいっそう厳しいものになっています。切実な要求が広がっている介護保険料の減免拡充と利用料減免の実施も見送られています。 しかし、市民の運動で拡充されたものもあります。乳幼児医療費の助成が、通院で現在の5歳児までが小学校就学前までに拡充されます。バリアフリーでも、ノンステップバスが19両の増車、「赤バス」(小型ノンステップバス、おとな100円・こども50円)の運行が18行政区に拡充されます。経済対策でも、製造業2万3,000社を訪問調査しデータベース化する「ものづくり再生プラン」として1億2,000万円を初めて計上されており、注目されます。 職員数の大幅減少を見込む 昨年3月に策定された『新行財政改革計画』には、職員2,000人削減が盛り込まれていますが、今年度の予算はそれを前提としています。性質別歳出で人件費は3,360億円から3,266億円の93億円も減少しています。「一般会計予算に関する説明書」では、一般職の職員数を2001年度3万1,008人から3万377人に631人削減されています。給料も平均昇給率1.8%としていますが、人員減により3,447億円から3,342億円に12億円のマイナスとなっています。また、区役所機構の再編が言われていますが、区役所費も368億円から364億円に4億円の減少、1999年度391億円に比べて27億円(7.0%)も削られています。 今回の予算は、私たちの勤務条件と市民の暮らしに直接かかわる問題点が充分手当されず山積みされています。大阪市は政令指定都市のなかで最悪の失業率を記録したり、生活保護と就学援助受給世帯、国保料滞納世帯が急増するなど、小泉内閣の「構造改革」のもとで市民の暮らしは深刻さを増しています。こんな時だからこそ、市民生活の支援に全力をあげることが求められています。住民の暮らしと命を守り、地方自治を大切にする市政への転換をすすめていくために、引き続き運動を強めていくものです。 (以上) |