2002年大阪市人事委員会「職員の給与に関する報告及び勧告」に対する市労組連の声明
2002年大阪市人事委員会「職員の給与に関する報告及び勧告」に対する市労組連の声明

                《2002年9月9日・大阪市役所労働組合総連合執行委員会》

1.大阪市人事委員会は、9月9日(月)に市長と市会議長に対して「職員の給与に関する報告及び勧告」を行った。その内容は、@史上初の公民較差マイナス2.04%(△9,359円)、A「不利益不遡及」の「法」の原則を踏みにじり、4月に遡って減額する「所要の調整措置を講じる」と報告、B期末・勤勉手当を0.05月削減し4年連続の削減、C扶養手当の改悪など、史上初のマイナス人勧に追随した不法・不当なものとなっている。
 本年の人事委員会の「報告及び勧告」は、組合員をはじめ大阪市に働くすべての教・職員の生活実態を無視し、日々繁忙化した職場実態のなかで、住民サービスの向上にむけ努力している教・職員の士気にもかかわるきわめて不当なものである。また、そのことにより、勤続10年の係員でこれまで過去3年連続して削減された賃金ダウンの総額に匹敵する14万6千円が新たに年間削減されるという、許しがたい内容であり怒りを禁じえない。  

2.本年3月13日に市労組連は、「2002年度市人事委員会勧告(報告)の基礎作業に関する申し入れ」を行い「人事委員会は地方公務員の『科学的人事行政』の遂行と『職員の利益擁護』の機関として」勧告すること、民間給与実態調査の実施にあたっては「調査対象事業所を、労働組合の組織率、公務労働の専門性・複雑性、責任の重大性、労働市場における競合関係、民間の賃金構造などを総合的に判断して『1000人以上』の事業所に改めること。」などを申し入れてきた。
 しかし、本年の「報告・勧告」は、調査した事業所数では変更がなかったものの、調査実人員が昨年と比べ約6,300人(総数の4分の1)も減少させるという結果になっている。ここ数年の暫減傾向と比較しても明らかに調査対象事業所の小規模化という政治的意図が明確であり、小泉「構造改革」路線による労働者の賃金削減の意向にそった不当な調査方法であると言わなければならない。

3.人事委員会は、「公務員が労働基本権を制約されていることに対する代償措置の機能を有する」と主張している。今回史上初の賃下げ勧告を行なったが、労働者が自らの賃金ダウンを要求してストライキ権などを行使することはありえないことであり、労働基本権の代償措置の機能から明らかに逸脱した不当な勧告・報告である。さらに、「不利益不遡及」の「法」の原則を踏みにじる「所要の調整措置」を講じるよう報告しているが、人事院の不当な勧告に追随したものであり、断じて容認できない。

4.また、民間企業におけるリストラ・賃金ダウンによる不当な企業活動を「尽くせる限りの様々な創意工夫をこらした懸命の企業努力によって生み出された成果」といって持ち上げている。長引く不況の最大の原因が、消費の冷え込みであることは極めて明らかであり、不況の克服をめざすためには、公務員と民間の賃下げの悪循環を断ち切ることがなによりも求められている。にもかかわらず、本年の「報告・勧告」はそれに逆行するものであり、大阪市の教・職員の利益も国民的な利益にも反するものといわなければならない。
 さらに、労働過重やサービス残業の実態、それからくる、自殺やメンタルヘルス問題の解消などについて、「総労働時間の短縮について、男女共同参画をすすめるためや職員の健康保持、公務能率の向上」のとりくみの必要性について触れながら、「引き続き検討」することにとどめていることは、極めて不十分である。厚生労働省の通達などで明確にされた基準を大阪市としてどのように実践するのかが問われており、超勤実態の正確な把握ができる調査の実施など、早急にとりくみ具体化するよう求めていきたい。

5.「公務員制度改革」をめぐるたたかいは、昨年12月の「公務員制度改革大綱」の閣議決定に続き、本年4月に「新人事制度の第2次原案」が公表されるなど、いよいよ重要な局面に入ってきている。本年の「報告・勧告」では「人事給与の新たな仕組みづくりを行うことが急務であり、さらに研究検討を行なう必要がある」との報告にとどめているが、民主的公務員制度とそれを保障する人事給与制度の確立をめざし、これまでの大阪市における人事給与制度の問題点の解明も含め、市労組連としてのたたかう体制の確立が急務であり、公務労組連絡会とともに、民間労働組合や市民団体との共同のとりくみの強化が求められている。

6.今年3月の人事委員会に対する「申し入れ」の際にも、市労組連としては「賃金・労働条件は労使協議によって問題解決をはかることが基本」との立場を表明してきた。公務労働者であっても、賃金の決定は労使交渉で労使が対等で決めるべき課題であり、人勧と市人事委員会報告・勧告の押しつけは、自治体労働組合の交渉権を否定するものである。
 そもそも自治体職員の賃金は、現行法の下でも「生計費ならびに国及び他の地方公共団体の職員ならびに民間事業の従業者の給与その他の事情を考慮して定められなければならない」(地方公務員法第24条)と定められているように生計費がもっとも重要視されるべきものである。また、「民間事業の従業者の給与」を考慮するとしても、民間の賃金切り下げに無批判に追随することを押しつけるものではなく、逆に、民間労動者の賃金への重大な影響こそ考慮して決めなければならないものである。
 とりわけ、今回のマイナス人勧、市人事委員会報告・勧告は、過去の勧告とくらべても重大な問題点をもっており、「史上初めてのマイナス勧告・『不利益不遡及』の原則の逸脱は絶対に認められない」と厳しく市当局の姿勢を追及していくことが求められている。
市労組連は、2002年賃金確定・年末一時金闘争において、それを許さない立場から精力的なとりくみを展開するとともに、大阪市に働くすべての教・職員の生活の向上、市民生活の向上をめざして、全力をあげて奮闘することを表明するものである。また、公務労組連絡会への結集をつうじて、中央と全国で地方財政危機の原因と責任を徹底的に追及していく決意である。
                                                 以 上

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