2004年度予算人員闘争の秋季段階における市側回答に対する市労組の態度
2004年度予算人員闘争の秋季段階における
   市側回答に対する市労組の態度


                  《2003年10月20日・市労組第2回市長選挙・秋季闘争委員会》

1.激しい大阪市の「自治体リストラ」推進のもとでたたかわれた秋の人員闘争

 長引く不況のもと、小泉内閣による国民への負担増政策で、市民の暮らしはかつてないほど深刻になり、職場では、自治体リストラの進行で、慢性的な繁忙、人員不足の状態が続いています。その結果、職員の健康を守ることもできず、定年まで働くことが難しいとの理由から普通退職者数が増加傾向にあります。また、在職死亡やメンタルヘルスケアを必要とする職員も増えています。定期健康診断の結果では、4人に3人が何らかの異常があるといわれています。
 大阪市は、「新行財政改革計画」(2001〜2005年度)にもとづき、総人件費抑制のひとつとしての2,000人削減計画を推進し、今年の4月までの2年間ですでに約1,000人が削減をされています。しかし、生活保護のケースワーカーにいたっては、厚生労働省の標準数によれば826人が必要であるにもかかわらず、今年の4月現在では、嘱託職員の123人を含めても604人であり、222人も不足となっています。さらに、大阪市では、他都市に例を見ない昇任による欠員がほぼ1年間にわたって補充されないという「欠員不補充のルール」が存在しており、年間300〜500人が常に欠員状態となっています。このような状況のもとで、当然、住民と接する第一線職場では、求められる仕事に応えられない苦悩の声が大きくあがってきています。
 保育所職場においても、大阪市は、財政危機を理由にして、10年間で約50所の民間委託化計画を2003年5月に発表しました。すでに約400人の臨時的任用保育士に加えて300人を超える非常勤嘱託保育士が存在しますが、正規に変わる低賃金の労働者で運営していくことに加えて、保育所そのものを民間(社会福祉法人)に移すことにより、人件費の削減をはかろうとしてきています。本来の保育行政を推進するためには、保育の質よりもコストの減量化を追及したこのような姿勢を改めさせることが重要になってきています。また、計画内容は、大阪市保育士(所長等)の法人派遣も含めた民間委託とも言われており、民間保育園が築き上げてきた保育内容や人員配置にまで影響を及ぼすことにつながる恐れがあります。健康福祉局の2003年度特殊健康診断結果では、受診した人の内、頸肩腕の要注意が72%、要治療が10.3%、腰痛では、要注意65.7%、要治療が10%を占めるなど、当局の責任で健康対策が早急に求められます。
 不夜城とまで言われている慢性的な長時間労働がまかり通っている本庁職場、そして機構改革や課・係の縮小、改編などと伴って人員削減が行われ、市民ニーズに応えるとしながら、対応時間の延長など、人員を確保するため、嘱託職員を増やす一方で正規職員を減員されている事業所が増えています。
 現業職場においては、外部委託化の進行や一般事務職や技術職が行っていた事務を現業職が遂行するなど労働の変化がすすみ、メンタルヘルス問題も含めた健康破壊の問題や働き甲斐を脅かす状況が少なからず見られます。
 弘済院「養護老人ホーム」では、拘束時間も含めた21時間45分の勤務体制が長年にわたり続いており、労働時間短縮要求をないがしろにされています。入所者の深夜対応や災害時の緊急対応など少なからずあり、十分な休憩時間や仮眠時間が取れず、職員は、身体的精神的負担をかかえており、精神疾患による公務災害申請を提出しました。また、市労組は、当局が施設利用者に対して責任ある対応ができ、職員の健康を守るためにも、職員増と夜勤の拘束時間の短縮を強く求めています。
 2003年4月より各区の保健センターが区役所の福祉事務所、健康福祉サービス課と組織統合された保健福祉センター職場では、センターへの医師の配置や保健師の地域分担制は守られたものの、市内1か所の保健所に業務再編・集中化が行われ、各区では人員削減となりました。市民が健康で安心して生活できるために、市民サービスの低下を許さず、公衆衛生機能の充実強化を求めるためにも十分な人員配置を要求しています。また、地域保健福祉課は、総合窓口化をすすめるとしながら、一方で十分な研修もなく、業務内容が拡大・増大し、担当職員がいないと市民に説明できないなど、総合窓口化との乖離が見られます。
 区役所職場においては、ここ数年、事務事業の統廃合による「機構改革」や「適性配置」など行われ、それにともなう要員配置が厳しくなりました。すべての職場において繁忙が増し、休暇の取得困難や休日出勤、長時間過密労働をはじめとした労働条件の悪化がすすんでいます。
 市労組は、増員要求の正当性を明らかにしつつ、2004年度の予算・人員確保の秋季闘争に全力をあげてとりくむとともに、予算編成期から予算確定期にむけて予算人員闘争を発展させていくとりくみを強めてきました。

2.学び、交流し合い、現場実態を明らかにする集会や宣伝活動を強める

 市労組は、9月3日に「大阪市自治体リストラとたたかう学習交流集会」を開催し、9月18日から19日に開催した第27回定期大会において、本年の予算人員闘争についての方針を決定しました。
 9月25日には、対市申し入れ団体交渉を行い、@定年退職、普通退職、配転、係長(主査)昇任などによる欠員を完全に補充すること。A昇任にともなう欠員補充が、ほぼ一年遅れになっている実情を改善すること。B臨時職員、アルバイトなどが恒常的に配置されている職場や慢性的な残業が続く職場の要員を確保すること。とくに、社会状況の急激な変化にともなう業務量の急増等に対し、年度途中でも必要な措置をすること。C法令などにより要員の基準が定められている職場に対しては、法定基準を最低として、職場実態に見合った専門職員を含む要員を確保すること。D新規事業、施設の新増設は、直営を基本として、必要な要員を確保すること。E産前産後休暇、育児休業などの代替要員を確保する要求を基本にし、加えて、F完全週休二日制実施後も開庁している職場の労働条件悪化に対する改善をはかるために必要な要員を確保すること。G現業職場についても欠員補充、繁忙要素・新規事業に対する必要な要員を確保すること。H全市的な課題となっている野宿生活者対策に積極的かつ抜本的解決をはかるために必要な要員を確保すること。I障害者の雇用と職域の拡大に努めることを求めてきました。
 市労組は、この間、機関紙「市労組」の特集号をくみ、8月1日・15日合併号で保育所民間委託提案、保育現場の労働実態などを掲載した「子ども・親・保育士が、ひとみ輝く保育所に」、「区役所職場の必要部署に必要な人員配置を」発行し、9月15日号では「人員要求特集『施策』と職場実態に段差あり」を配布しました。また、10月16日には、第2回団体交渉にのぞみ「昇任減による欠員補充問題に対する誠意ある回答」を求めてきました。
 こうした対市交渉の強化とあわせて、福祉保育支部、区役所支部・分会など独自の機関紙やビラよる宣伝を強め、職場世論を高めてきました。

3.「財政非常事態」の原因と責任は、市当局にあり、
 ムダな大規模開発事業など大胆に見直し、第一線職場の体制強化を


 私たち市労組の申し入れに対して、市側は「平成15年度中に生じた一般事務・技術職員の欠員については、原則として補充する」との秋季段階での回答がありました。しかし、申し入れの趣旨である市民サービスの向上と組合員の切実な労働条件改善を求める要求に応えたものではなく、きわめて不満であることを表明せざるを得ません。
 市側は、「厳しい状況」を繰り返し述べているが、市労組は、当初からの交渉においても指摘してきたように、その原因は、大規模開発事業へ巨額の予算投入による結果であり、多額の累積赤字を抱える第3セクターや土地信託事業への財政投入にあることを追及してきた。また、「財政非常事態」を口実にした職員への犠牲転嫁である労働条件を切り下げることが明白になっています。
 自治体の業務は民間とは異なり人的サービスが大きな比重を占めています。ことに医療・保健・福祉の部門では人的要素が決定的役割を担っています。
 市労組は、必要な職員の確保は、住民のための行政を行なううえで必要不可欠の前提条件であるという立場を堅持しています。同時に、労働組合としても、自治体の財政状況のうえに立って、なおかつ、住民の理解と支持が得られるものでなければならないとの見識を持っており、住民福祉に直結するような部門には、たとえ財政難であっても必要な職員を十分確保すべきであって、逆に、無駄な大規模開発事業や、市民にとって不要不急な事業については大胆に見直すべきであるというのが市労組の基本的態度です。
 市側が述べているように「市民の期待と信託に応えるべく時代の要請に応じた責任があり」とするならば、市民は今日的に、何を期待し、どのような信託を行ったのかを市当局は具体に示すべきであり、そのことが本来の地方分権の目的達成につながるものと確信します。
また、市側は、「数値目標を掲げて策定した、新行財政改革計画を早期に実行」、「より厳しい観点での主体的な検討の必要性と、より迅速な対応を行う」と厳しさと数値目標の達成を強調していますが、このことは、各所属で無理が生じ、多くの行政執行面や労働環境面で犠牲を強いることになります。
 加えて、「限られた財源や人材を最大限有効に活用」するならば、繰り返し指摘してきたように、大規模開発事業をはじめ、役割を終えた事務事業などを見直せば、定率的な数値目標を設定せずとも相当数の人員が生み出せると考えられ、これを福祉・保健・医療・介護・保育の現場に振り当てるなら、第一線職場の体制強化につながりうると考えます。この手法の採用こそが、「市民の期待と信託に応えるべく時代の要請に応じた責任」を果たすことになります。
 未曾有の経済不況は、急激な社会状況の変化を伴い住民の生活を脅かしている。経済不況から市民生活を守るべく社会福祉関連部門の市民ニーズの高まり、医療保険制度をはじめとした諸制度の改悪とあいまって制度の複雑化など本市職員の求められる仕事の量と質は、不況によって減少しているわけでなく、むしろ増加しています。こういう時にこそ、財政難でも住民サービスは削らないという圧倒的多数の職員の良識と行政への信頼に依拠し、浪費型の巨大開発の転換を決断し、基礎的自治体として地方自治の本旨にもとづき市民の健康、安全、福祉をまもり、不況から市民生活を救う防波堤となる第一義的責務があるのではないでしょうか。
 市労組は、住民とともに歩む自治体労働組合として、住民のいのちと暮らしをまもるためにも、大阪市役所に働きがいのある職場をつくり、市役所労働者の権利確保と健康保持・改善のためにも必要な要員が確保されることは極めて当然だと考えています。
 これまでの経過からも、要員確保については、次年度要員問題として秋の段階で単年度決着してきました。市労組として要員の見直し、検討を一般的に否定するものではありませんが、市側が指摘する見直し手法は了解できがたいものであり、今後も単年度ごとに個別の具体内容の協議によって、その都度、個別に判断することにします。

4.他都市では例がない現場実態を無視した昇任による欠員補充を1年も放置
    市側の最低限必要な対応として改善せよ


 最後に、この間『区役所改革』において見られるように『適正配置』のもとで人員不足となり職
 員の過重労働、労働強化につながり、ひいては市民への対応において、制度などを充分に説明ができず、行政としての責任がはたせなくなり、市民サービスの低下をきたしています。
また、2003年4月に再編発足した保健福祉センターなどの第一線職場で見られる急激な社会状況の変化が、本市事務事業の多くに『業務繁忙』として現れており、その結果、長時間過密労働、持ち帰り残業、休日出勤が常態化し、ストレスの蓄積など市職員の健康保持を著しく困難にしています。
 このような現場実態から、昇任にともなう欠員補充が、ほぼ1年遅れになっている実情を市側の最低限必要な対応として改善することを求めているにもかかわらず、全くふれられていません。現場実態を無視した昇任による欠員補充を1年も放置することをこれ以上繰りかえすことは容認できないことを強く表明します。
 市労組が独自に行った政令都市調査では、「年度当初の昇任異動により、欠員が生じないよう手立てされている」、「係長級昇任が4月発令、係員配置が5月で昇任を理由にした欠員状態にならないよう、新規に採用し、昇任による欠員は、長くて1ヶ月が常識になっている」など、回答が寄せられています。このことからも、昇任減による当年度の欠員補充が常識になっています。
 大阪市としての使用者責任、行政責任を持つ立場を十分に踏まえ、必要な人員確保にむけ抜本的な努力を求めておきたい。いずれにせよこの間の経過を踏まえて引き続き協議を要請し、市労組は、職場における業務繁忙や人員削減によって引き起こされている健康問題やサービス残業問題の改善をさらに訴えるとともに、今後、小泉内閣による「構造改革」路線の強行、消費税増税、憲法改悪策動など政治反動がいっそう強まると同時に、企業倒産とリストラの嵐が吹き荒れ、不況がさらに深刻化する事態となり、失業者もさらに増加など、日本経済がさらに深淵に落ち込むことが懸念される状況のなか、「公務員制度改革」による公務員への差別・分断攻撃、悪政の推進者としての公務員づくりの攻撃を許さず、国民生活を守る闘いと平和と民主主義を守る闘いを結合し、一致する要求にもとづく広大な共同の実現をめざします。そして、大阪市においても市労組が果たす役割がますます重要となっています。市労組はこの点を改めて確認し、なお、強い不満が残る今秋季段階の到達を明らかにしながら、引き続き、予算編成、予算確定へとたたかいの舞台を移し、今後とも運動を強める決意です。

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