「保育士配置基準見直しと保育所の面積活用による待機児解消策について」の福祉保育支部見解
「保育士配置基準見直しと保育所の面積活用による待機児解消策について」の福祉保育支部見解(要旨)

《2001年12月28日・大阪市労働組合福祉保育支部》


 大阪市労組・福祉保育支部は今、春闘・予算人員闘争の真っ只中です。私たちは今、以下の点で闘争を組んでいます。

 大阪市は保育所の待機児童解消のために、保育士の配置基準を見直して解消を図ろうとしています。現行の配置基準は30年前に、私たちの先輩たちが大闘争の結果勝ち取ったものです。市労組・福祉保育支部は待機児童解消は第一義的課題として大いに賛成ですが、配置基準の見直しで解消を図るのではなく、必要な地域には保育所を新設したり、所庭の広いところでは部屋の増設をするなどの抜本的改善をすることで解消していくことが望ましいと、次のような要旨の見解を当局に提出しています。

 「保育士配置基準見直しと保育所の面積活用による待機児解消策について」の福祉保育支部見解(要旨)

 10月23日、市健康福祉局より配置基準の見直しについて、提案を受けたところであるが、これに対し以下の点について市労組・福祉保育支部の見解を申し上げます。
 大阪市の現行の配置基準は私たち保育士の先輩や保育関係者、又多くの父母のみなさんの願いや運動によって30余年もの間、大阪独自の配置基準を守ってきました。これは、全国基準(1・2才児1:6、3才児1:20)よりも高く大阪の保育水準の高さ、すなわち保育の質の高さを現したものであるとわたしたちはは誇りに思ってきました。30余年の間には保育行政の上でさまざまな問題があったことかと思います。保育現場においても同和保育、障害児保育、延長保育等で様々な問題を抱えたままで今に至っています。
 中でも障害児保育については、昭和50年、障害児の入所の基準も持たず、障害の程度に関わらず希望者全員入所が始まりました。この事は、後にさまざまな問題を残す結果となっています。障害児保育の指導の手だてもわからず、迷い、悩み、手探りしながらの保育が続きました。「障害を持っていても発達の道筋は誰もみんな一緒、必ず発達するのだ。」ということを学び、そのことに確信を持ち保育をすすめてきました。しかし、大阪市は当時から障害児に対し十分な要員を確保せず、放置してきた結果、保育士の健康を破壊してきました。現在においても、十分な設備や要員がない中で、保育士が身を犠牲にして保育をすすめています。また、延長保育における対応要員においても臨時的任用保育士を引き抜き、5時間勤務の非常勤嘱託職員にするなど保育士の労働条件は低下する一方です。ましてや休憩時間(2001年の支部調査では平均11分)が十分とれないばかりか、生休・年休もほとんどとれていず、週休二日制の指定休でさえ満足には休みが取れていない状態にあります。こうした障害児保育をはじめとした日常の保育の体制や施設設備の不備、特殊健康診断後の措置の放置など保育士健康問題も深刻なものだと言われています。
 このような劣悪な労働条件にもまして、配置基準の見直し提案は保育士の健康問題だけではなく、子どもの育ちに大きく影響します。1才児の配置基準が1:5になると、個人差の大きい5人の子どもを保育士1人では散歩にも出かけられません。保育中に非常事態が起きたときは子どもの安全をどう保障するのでしょうか。これでは子どもの安全どころか命を守ることさえ保障できません。
 丁寧な関わりが必要とされる子どもの成長過程の中では、保育士が一人ひとりの子どもに対して、ていねいな言葉がけによって、目や身体で反応し、ゆったりとした受け止めで、ことばや豊かな表情を獲得していくものです。このことは、子どもの育ちの中で最も大切なことです。又、3才児の1:20においても1人の保育士が20人の子どものそれぞれの要求にしっかり応えてやれないばかりか、3才児特有の何でもかんでも自分が一番という「唯我独尊」の時期をたっぷりの自己主張を受け止めてもらうことで次の段階である仲間との関係もスムーズに入っていけるのです。
 小学校低学年の荒れや少年の非行問題では、乳幼児の時期をどうすごしてきたかが大切な一つと考えています。今、このような社会問題となっているときだけに、国や大阪市の待機児対策をはじめとした保育行政は、乳幼児の育ちを大事にとらえていないとしかいえません。
 私たちは、待機児解消対策は、基準の引き下げではなく現行の基準で定数拡大することを主張します。保育内容の低下をきたし、労働条件の悪化につながる配置基準の見直しは断固反対します。

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