人事交流制度の新たな基準設定提案に対する市労組のとりくみ 2002年1月10日 大阪市役所労働組合 1.はじめに 自治体における人事異動は、職員が異なる職場に異動することで新たな職務の習得に生かすことができるという側面をもっていますが、人事異動がもつ一般的な本質は、職場支配、労働者支配のための積極的活用であり、労働者、労働組合攻撃の手法として用いられるという側面を持ちつつ、さらに住民支配のレール敷きにも生かされるという特殊性を持っています。 自治体における人事の一般的特徴をみると、第1の特徴は、行政機構のタテ割り組織が強固に存在しており、その中でいわゆる「本庁」に近いほど「偉くなった」という意識構造を醸成させ、さらにそれを利用しての労働者支配の異動を行うことにより、職場労働者をごく自然に、上部機関重視、住民軽視という思想に誘導していく傾向にあるということです。 第2の特徴は、いわゆる「適材適所」にかかわる問題です。この「適材適所」という言葉はきわめて抽象的なもので、むしろこの言葉によってすべての人事異動、不当労働行為としての人事異動までもが合理化されているというのが現実です。もちろん人事担当者は、それなりに「適材」を「適所」に配置すべく腐心していると思います。しかしそれは大方の場合、主観的なものであって、客観性の乏しいものです。 第3に縁故採用の問題です。大都市においては人事委員会による公開公募・選考試験が行なわれており、少なくとも1号職員の一般行政職については、ほとんど縁故採用はありません。また、3号職員といわれる医師、看護婦、保健婦などの場合も、各所属による選考職ですが、もともと国家試験による免許職であり問題化したことはありませんでした。いわゆる2号職員といわれる現業職員の場合にも、大阪市は1998年(平成10年)より技能労務職の一般公募による採用試験等の案内を行ってきたことは評価できますが、伝統的に各局選考となっており、改善されつつあるものの部落解放同盟などの縁故採用が一部存在していると言われています。 以上のように人事異動の本質、自治体人事の特徴を、自治体労働組合の追求すべき課題、果たすべき役割との関連からみると、自治体労働組合が人事異動に対し無関心であったり、傍観者的な態度をとることが正しくないことは明白です。 また、人事異動が労働者や労働組合攻撃の手法としてあるという側面を一面的にとらえて、自治体労働組合が異動そのものに反対するという態度は正しいものではありません。 人事異動をめぐって職場労働者のなかには、家庭の事情、通勤の関係、健康上の問題、人間関係、勉強してきたことを生かしたいとする要求、自分の性格や能力を考えてやりたい仕事への要求など、多面的なものがふくまれているからです。 したがって、自治体労働組合が、人事異動に対して、どのような態度でのぞむかは、以上述べてきた人事異動の持つ本質や、自治体人事の特徴を正確につかみ、原則的な立場を堅持することによって柔軟にとりくむことが求められています。 2.大阪市における所属間人事交流の経過と問題点 (1) 裁量権を逸脱した転任処分は不利益処分 今後、所属間人事交流の基準更改を求めるにあたって、これまでの人事交流の経過と問題点、課題を明確にすることがなにより重要なことです。 自治体における人事交流は、一般的にいって当局の「聖域」になっています。地公法上の規定はありませんが、地公労法には「昇職、降職、転職、免職、休職、先任権及び懲戒の基準に関する事項」は交渉の対象としていることから市側は、これまでも折衝のなかで「異動基準は労働条件だが、異動そのものは管理運営事項」といっています。 人事交流は、法的には、配置替えであり地方公務員法第17条の昇任、転任、降任に含まれ(『行政実務』昭和27.9.30自行公発61号)、任命権者の判断のみに基づいて行うことができるとされています。そして転任は、「その要件を定める法規が存在しない以上、その目的、方針、範囲、対象者の選定、配転先の決定などについて任命権者の自由裁量に任されているものと解すべきである」(大阪地裁昭和55.5,26)という判決がありますが、無制限な裁量があるのではなく地方公務員の平等取り扱いの原則(13条)、不利益取り扱いの禁止(56条)、任用の根本基準(15条)に反するものや行政上の必要性を欠く場合、もしくは社会通念上著しく妥当性を欠く場合には、裁量権にも自ずから制約があるものであって、裁量権を逸脱した転任処分は不利益処分にあたるとされています。(名古屋地裁昭和52.5.9) (2) 永いたたかいのなかで勝ち取ってきた「残留希望」 大阪市では、1964年4月16日以降、ほぼ隔年ごとに大きい規模の配置転換が実施されてきました。この間の時期を大きくわけると1964年〜1970年を前期として「改革派」(1997年7月提訴の昇任・昇格裁判の訴状では、市職内反主流派について「改革派」と定式化している。以下「改革派」という)の集中と分散が強行されはじめ、1971年7月〜1977年4月の第1次計画配転における改革派の集中と分散の強制配転の集中時期、1979年4月〜1985年4月の第2次計画配転では、第1次計画配転の苦い教訓から運動を強め、「残留」のみではあるが「本人希望の尊重」の確認を実現、そしてこれを受け継いだ1987年4月〜1993年4月の第3次計画配転、1995年4月〜2001年4月の第4次計画配転というように、現在に至っています。 1960年代後半から1970年代前半にかけて市側は、市職内の改革派に対して主流派と労使一体で本人の残留希望を無視する不当な配置転換を強行してきました。1966年8月には、初めて経済局支部書記長に当選した改革派活動家を、本人も知らないまま、「支部と所属との協議」があったとして清掃局(現環境事業局)へ、1973年には市職が橋本浙子さんのビラ配付をした改革派の組合員リストをつくるなど協力を行い、リスト登載者を中心に100名もの職員の不当な異動を強行しました。さらに1975年には、環境保健局支部長に立候補した難病の改革派活動家を翌年、浪速区役所へ「飛ばす」など手段を選ばない異動を強行したことなどは、象徴的な事例です。 私たちは、大会や中央委員会などでその都度くりかえしこうした問題点を指摘し、是正を求めてきました。いわゆる改革派以外の活動家にも「不当配転」の影響がでてきたこともあって1978年2月の中央委員会において、当時の市職本部組織部長が市側との口頭確認事項があるとして、「最終的拒否者については対象者にしない」と答弁し、残留希望については尊重されることを確認しました。 しかし、実際には、残留希望も無視され、1987年3月、市職中央委員会での本部答弁で、市側との口頭確認事項の存在を否定するなど経過を無視する対応にでましたが、多くの中央委員の追及に「第2項該当は本人同意を原則とする」などの交渉経過を明らかにしました。 このように1964年以降の歴史は、市側が人事権をテコとして市職主流派と一体になって職員を支配し従属させ、仕事に熱心な市職改革派などを嫌って特定の職場に集中したり、分散したり、特に統括部局や所属の管理部門から追放するという攻撃とのたたかいの連続でした。 職員の働きがいを生かすためには、残留希望にとどまらず、行き先も含めた本人希望の尊重が必要ですが、1969年の当初から「本人のあらゆる希望を満たすことは事実上困難」として、本人の働きがい、生きがいを生かしたいという行き先希望については「困難」「不可能」「聞けない」ということにとどまっています。 (3)市労組結成以降の経過と、職員の働きがいを生かす人事交流制度の確立をめざすとりくみ 人事異動は、昇任人事とならんで不透明感や不満、怒りが多く、一方では、行き先も含めた本人希望尊重への期待が多くあります。 事実、市労組が1994年(平成6年)11月に実施した「昇任・所属間人事交流に関するアンケート」の集約でも「問題はない」と答えた人が6%に対し「わからない」が19.2%、「問題がある」は70.1%と答え、その理由として多くの人が、「本人希望が尊重されない」「情実・人脈人事が多い」「適材適所でない」「個人的事情の配慮がない」をあげています。 市労組結成時に市職一部幹部などが、「市労組を3年以内に人事異動で潰す」などという攻撃をしているなかで、市労組本部は、市側との交渉で、「勤務条件に関わる適法な交渉の申し入れについては、地方公務員法の趣旨に則り、規則、規程に基づいて対処してまいりたい」との回答を引き出し、市労組結成前にあたる1987年(昭和62年)に定められた基準に沿って人事交流を実施することを確認してきました。その後、1995年(平成7年)からの新しいサイクルにおける所属間人事交流を労使確認し、この人事交流は2001年(平成13年)4月の実施をもって終了しました。 3.市労組の人事異動に対する基本的視点と態度 私たちの人事異動に対する基本的態度は、まず第1には、公正、公平、公開の原則にたった民主的な人事異動を制度的に確立することを求めることです。 具体的には、人事異動の目的、基準、規模、日程などに関して労使協議によって決定することや、本人の意志を原則的に尊重させることです。ここでいう「本人の意志を原則的に尊重する」というのは、どの職場へいきたいとか、あるいは異動したくないとかといったせまい意味のものではなく、「人格を十分に尊重する」という意味です。ある日突然に思いもかけぬ異動が発令されるといった状態をなくし、事前に十分に意志をたしかめ、それを尊重して文字どおり適材適所に配置する人事異動を制度化することです。 第2には、個人に対する労働組合の援助が必要であるということです。人事異動は、終局的に必ず組合員一人ひとりが当事者になる問題です。したがって組合員一人ひとりが、人事異動に対する労働組合の考え方をよく理解し、協定が守られるようにたたかうことが必要です。具体的には、たとえば異動基準で「同一職場5年」と労使で確認しているのに、3年で異動の対象となったケースが生じた場合、労働組合は当事者を激励し、本人とともに所属長と交渉し、その理由について徹底的に追及するようにすることが必要です。この場合、執行部が不当だと考えても、執行部だけで交渉することは好ましくありません。協定を定着させるためのたたかいであり、そのため執行部は協定を握って「個人の問題」に最大限接近させるとりくみが必要です。人事異動が職場労働者の関心のつよい問題であるだけに、労働組合の対応いかんによっては労働者の労働組合に対する信頼を失いかねず、また職場労働者の目は職制や当局のほうに常に向いてしまい、職場を民主化するという点でも大きな障害になってしまいます。 以上の点を基本にし、大阪市の「新行財政改革計画」や国が法制化をめざしている「公務員制度改革」という新たな情勢の変化のもとで、あらためて人事制度のあり方をめぐって市労組のとりくみが求められています。 4.新たな人事交流基準設定提案と市労組の今後のとりくみ方 昨年12月に市側から提案された新たな人事交流基準(案)は、2001年(平成13年)3月に策定された「新行財政改革計画」のとりくみ実施を背景に、「@交流基準の内容(1項〜3項)について、現行基準を基本に、対象年齢の引き上げ。(1項・23〜32歳→23〜35歳、2項・33〜45歳→36〜45歳)、Aこれまでの8年間の隔年実施で4回の計画交流を当面、行革期間内(〜17年度まで4年間)について毎年実施。B隔年毎に第1項対象者の15%で実施していたのを毎年10%で実施。C第1項・第2項の対象者に対して、ヒアリングを行い、交流対象者を決定する。ただし、第2項については、本人の同意を原則とする。D技術・福祉職員等の交流基準 について検討する。」としています。 このように市側の考えは、交流基準年齢、計画期間、実施規模の変更を求めています。また、第2項のみを本人同意と強調している点から、第1項における本人希望尊重の意味が軽視されています。 所属間、所属内を問わず人事交流問題は、個々の職員の労働条件確保という運動論と市民本位の市政をすすめるという行政論の立場から考えることが必要です。 人事交流は、もともと、直接個人の利害や労働条件の重大な変更に係わることでもあり、職員の働きがいを生かす人事交流にするためにも基準更改にあたって、広く職場の意見をふまえてとりくみを強める必要があります。本部として、前回にとりくんだ「昇任・所属間人事交流に関するアンケート」を基本に、1997年(平成9年)の昇任・昇格差別裁判和解の主旨を生かすことからも、広く意見を集約するため、各支部・分会において職場懇談会を開催し、意見集約を図ります。 国における「新たな行革大綱」や2001年(平成13年)12月25日に閣議決定される「公務員制度改革」、大阪市においては、「新行財政改革計画」(2001年3月策定)の実施のもとで、公務員の人事制度の変更を大きく迫られており、人権尊重、本人同意、本人希望の尊重、職場民主主義の実現など憲法擁護の観点からのとりくみがいっそう求められています。 市労組は、民主的な人事制度を求める立場から、これまでの人事交流の経過と問題点、職員の年齢構成の変化などを明確にし、新たな制度確立にむけた人事政策を提起する必要があると考えます。 今回の市側提案に対して、市労組の人事交流制度の考え方を明らかにするため、本中央委員会において、とりくみの具体化を提案し、1月24日を目途に職場懇談会などを経て意見集約を行ったうえで、1月末から2月初旬に予定されている団体交渉にのぞむこととします。 5.新たな人事交流基準設定提案にかかわる市労組としての職場討議の柱 市労組は、今回の人事交流の新たな基準提案に対する考え方について職場討議を行い、まとめるにあたって以下の項目を提起します。 (1) 市労組結成後の人事異動についてその検証を行う これまでの人事交流が目的と実際が一致していたか、指摘されていた問題点が克服できでいるかの検証を求めることとします。 (2) 人事交流の目的の明確化をはかる 市側は、これまでの異動基準で、「職員が同一所属に固定されることなく、職場を変わることによって、気持ちを新たにし、より多くの経験を重ね、広範な知識・技術の修得と能力の向上をはかる」ために一定の年齢までに計画的に異動させることを目的に掲げてきました。また、そのことによって「人材の育成、職場の活性化を進め、行政の一体性の確保に資する」としています。 人材育成の方法としては、@特定の分野のみを経験させ、スペシャリスト(専門職)的な育成をはかる。A一定の年数までは各種の分野を経験させるが、以降は特定の分野でスペシャリスト化させる。B一定の年数までは特定の分野のみを経験させるが以降は各種の分野を経験させる。C絶えず職務転換をはかり、ゼネラリスト(総合職)として育成するという、いわゆるジョブ・ローテーションがあります。専門性が求められる福祉職場では福祉職員、事務職員が混在していますが、これまでも社会福祉主事資格を取得すると他の職場に異動する例が少なからずあるなど人材育成の方向が必ずしも明確でない場合があります。また、職員の自覚、何をやりたいか自己主張をもつ職員づくり研修が求められます。今後の基本をどこにおくのか明確にさせる必要があり、どういう方向をめざすのか職場での議論を深める必要があります。 (3) 公平・公開・公正の諸原則を遵守させる @本人意思を尊重させる 人事交流の際に、職員の人格の尊重(本人意思の尊重)を求めます。ヒアリングについては、所属間人事交流なのか、所属内人事交流なのか明確に区別することが必要です。ヒアリングを通じで事前に本人の意思と生活条件(通勤時間、本人の事情、働きがい、家庭の事情)を充分に確かめ、それを尊重することです。そのために自分にあった仕事、能力を生かせる仕事につきたいという希望を尊重できたか、希望達成率の公表や労使とも希望尊重の努力義務の明示、他都市で実施している自己申告制度導入の検討が必要です。いうまでもなく、地公法第55条11項の不満の表明・意見の具申をした職員への差別の禁止などを求めます。 A本人内示は前日ではなく「1週間前」をめざす 人事異動の本人内示は前日ではなく1週間前とし、それまでに本人同意をとりつけることを求めます。 B本庁と出先、部局間、区間の交流の促進をはからせる 異動先として希望の少ない職場の対策と残留希望の多い職場の対策をすすめ、本庁と出先、部局間、区間の交流の促進と所属内異動の基準の確立、所属内異動でのヒアリングの実施の義務付けを求めます。 Cその他の関連する問題を前進させる 年齢、等級などのバランスや、いわゆる「主担者」枠を意識した配置等の関連の解明についても職場での議論を深める必要があります。 (4) 職員の年齢構成の変化に対応した改善をめざす これまでの基準である第1項=23歳〜32歳、第2項=33歳〜45歳の年齢区分について、新規採用者抑制によって、1995年(平成7年)以降の職員年齢構成の変化、特に青年層が激減していることからも、意見集約をはかる際には、青年層からの意見聴取を重視し十分に反映できることが必要です。45歳以降の職員が60歳定年まで同一所属で過ごすべきかどうかについても、職場での議論が必要です。 (5) ゼネコン汚職など金権腐敗防止対策を講じさせる 金権腐敗防止の観点から許認可関係事務、契約関係事務、経理関係事務、監視・監督事務など特権を有する事務の従事者については一定の年限を定めることが必要ですが、仕事のチェック体制、仕事の蓄積、短期間で変わることが前提にあると意欲がなくなるなどその功罪についても検討が必要です。 6.むすびにかえて、今後とりくむべき人事異動の課題 (1) 大阪市「行革」から見た新たな検討の必要性 2001年(平成13年)で終了した第4次の計画配転は、1995年(平成7年)から開始され、その翌年の1996年(平成8年)3月に「大阪市行財政改革基本指針」が策定されました。また、2001年(平成13年)3月には、「新行財政改革計画」が策定されました。 今回の所属間人事交流における市側の提案を見ると、前回と比べて変化が顕著に表れています。前回の提案では、「職員が職場を変わり市政の様々な分野で本市行政に携わることにより、広範な知識・技術の習得と資質・能力の向上を図るとともに、行政視野を広げ幅広い人間関係を築くなど多様な職務経験を積むことが、人材の育成と組織の活性化を進め」と述べ、職務の習得と人間関係を重視した職員の異動のあり方に標準をあてていましたが、今回の提案においては「今期間中において、急速に変化する本市を取り巻く状況への具体の対応を迫られながらも」とし、「仕事のあり様も急速に変化し」「こうした変化に柔軟かつ的確に対応できる人材の育成と組織の活性化を進め」と職員としての質的変化と対応能力を強く求めています。 また、新しく「採用時からの行政経験の年数に応じて、職員が同一の所属に固定されることのない、人事交流の一層の活性化を図ることが必要」と述べ、前回の「できるだけ多くの職員の方々が職場を変わることによる幅広い職務経験が非常に重要な要素の一つではないかと考えている」と示してきたことが、「これまで以上に区役所・事業所と局間の積極的な交流に取り組み」、「原則として複数の職場を経験することにより」と第1項該当者に対する異動のあり方を具体的に示唆しています。 このように、市側は「新行財政改革計画」の実施に伴う人事異動のあり方を投げかけています。 昨年9月に赤字再建団体転落を避けると称して「行財政計画」を打ち出した大阪府では、当局が新たな人事制度を検討しています。その1つは、職員の業務提案を募り、それが採用されれば、提案関連の職場に異動できるプロポーザル制度で、もう1つが、各所属が「こんな能力のある職員を庁内公募します」と訴え、求人する庁内リクルート制度です。いずれも「地味な職場」が見捨てられ、「脚光のあびる職場」に職員の関心を呼ぶもので、能力・成果主義と抜擢主義が色濃く打ち出されています。 2001年12月25日に閣議決定がされた「公務員制度改革大綱」の中にも、人事制度の確立における「能力本位で適材適所の任用の実現」「多様な人材の確保・育成・活用」が打ち出されており、その点からの検討や、大阪市の「機構改革」に伴う職員配置、「公益法人等への派遣制度」による出向、「新再任用制度」実施後の職域と人との関係などからも論議が必要とされます。 (2) 求められる管理職異動基準 他都市の人事異動実施要領によると「管理職員(課長級以上)の項で(ア)管理職員の全庁的視点からの人事異動を優先的に実施し、人事の刷新をはかる。(イ)組織の活性化、公務能率の向上の観点から能力、実績主義に基づき、適材適所の人事異動を実施する。(ウ)外郭団体等のポストについても、本市の人事異動の際考慮する」としており異動基準について「局長級同一ポスト2年以上の者、部長級同一ポスト3年以上の者、課長級同一ポスト3年以上の者、・・・契約・金銭関係又は許認可事務従事者及び派遣職員で3年以上の者は重点異動者とする」と管理職員の異動について明記しています。 また、「異動方法及び異動規模は、課長級以上の異動対象者数の5割を目途とし、うち半数以上は局間異動とする」としています。大阪市の場合は、例えば、「人事通信」を見ると、「大阪市人事当局は現在4月1日付の第1次異動の準備作業に入っているが、今年の局長昇任者は事務・技術とも部長歴6年組が中心となっているようで計15名・・・、部長昇任は、課長歴8年組が中心で・・・」などと予想記事を報道した後の実際の昇任結果をみると人数まで合っているなど職員には公表されていないが基準があるようです。しかし、現実には、市労組結成後、組合員である係長級職員の本人希望を聞かずに外郭団体へ出向になる例や「市職」組合員でもいわゆる課長級に昇任しない係長・主査が増える傾向にあり、管理職の異動基準が明確にされていないことから「いつ、どこへ」変わるかという不安がつきまとうという声が寄せられています。 (3) 改革すべき所属内人事異動の課題 所属間人事交流と関連して、区から局への辞令が出た場合に、行き先が本課なのか出先の事業所なのか、本人には所属内人事異動の基準が知らされないまま配置されるという事例があります。なかには所属内人事異動の基準そのものが存在しない所属もあります。前回の「アンケート」の集約でも所属間交流と同様に圧倒的多数の人が「問題がある」と答えています。毎年の人事交流結果報告書で所属内人事交流についても報告を求めていますが、所属間人事交流と所属内人事異動は、密接な関連があることから支部・分会でも市労組の考え方にそって現行の所属内人事交流についての問題点、改善点について検討し、所属に改善を求めていく必要があります。 事例として、保育士の人事異動があります。保育士については福祉保育支部として91年に「@異動人数は最低限とし、職場運営に支障のない範囲にとどめること。A公立保育所が地域でその役割を担えるよう定着化をはかり職員の年齢構成、経験年数のバランスを考慮すること。B同一職場の勤務年数は4年以上とすること。C通勤時間は1時間以内とすること。D本人の意思を尊重し、本人が希望しない異動はおこなわないこと。E特に弘済院と保育所間の異動については事前にヒアリングを行うこと。F内示は遅くとも1週間前とすること。G組合役員の異動が必要な場合は事前に協議を行うこと」などの項目で局に申し入れています。実態は、市労組組合員同士の入替えを行うことによって特定の保育所において保育士の年齢構成にゆがみがでています。また、健康を害した「特診C」の保育士の集中や大幅に通勤時間が延長した例、組合役員が異動により複数化するなど問題を残しています。 また、旧環境保健局では、91年3月29日に環保分会として「@異動対象者とはヒアリング、協議をつくし、内示は少なくとも2週間前とすること。A異動対象者は、一般事務・技術は同一職場5年以上、食品環境衛生監視員は同一職場3年以上、保健婦は同一職場8年以上」などを局長あてに申し入れています。機構改革と係わって異動基準改善も大いに重視する必要があります。 さらに、 区役所でも所属内異動に際してヒアリングがない所属が少なからずあります。また、西成区では、分会が「年齢55歳未満の者」で申し入れしており、阿倍野区では、所属から「50歳以上の職員が増えてくるとの理由で基準を『年齢55歳未満』に5歳引き上げる事例がでているなど区役所支部評議会でも検討、調整していく必要があります。 行政の民主化は、職場の民主化なしには容易にすすみません。労働組合としてその職場の民主化をすすめるうえで、人事(異動)は、密接で、重要なかかわりをもっています。民主的な職場とは、そこの職場の仕事量・質・方向を決めていくうえで、すべての職員が参画できる状態にある職場にすることです。このような職場にしていくカナメは、職場に労働組合を確立することです。 <参考資料> 昇任・人事異動に関する職場懇談会のポイントについて 市側から「所属間人事交流基準」の新たな提案がありました。市労組として、広く職場の意見を反映し、意見集約を行うため職場懇談会を開催することにしました。関連して勤務評定、昇任など人事制度についてもご意見をお寄せください。ご協力をお願いします。 Q1.大阪市の人事(異動・昇任)の現状について全体としてどう思いますか。 A @問題はない A問題がある Bわからない Cその他( ) Q2.問題があると答えた方は、問題点を3つ選んでください。 A @昇任・異動基準が明確でない A専門性・技術に対する評価が低い B情実人事が行われている C勤務評定に問題がある。 D本庁優遇を感じる E女性に対する評価が低い Fその他( ) Q3.現在の人事で昇任が早いと思われるのはどんな人だと思いますか。3つ A @地道に仕事をする人 A能力がある人 B人格的に優れた人 C専門的な知識がある人 D技術に優れた人 E人脈のある人 F上司の指示に従順な人 G特定の学校を卒業した人 H組合役員経験者 I要領のいい人 Q4.管理職の要素として何が重要だと思いますか。3つ A @まじめに仕事をする人 A指導力・判断力のある人 B人格が優れている人 C専門的な知識がある人 D技術に優れた人 E本庁職場の経験者 F出先職場の経験者 G住民本位の仕事をする人 H上司の指示に忠実な人 I不当な圧力に屈しない人。 Q5.勤務評定制度について A @勤務評定は廃止すべきだ A現行の内容・方法でよい B改善する必要がある Cわからない。 Q6.勤務評定で改善すべき点を3つあげてください。 A @評定結果を本人に開示すべき A相対評価をやめ絶対評価にすべき B仕事に関係のない人 C評価は本人の意見も聞いて判定すべきだ D評価を廃止すべきだ Eその他 Q7.一定の年齢と勤務実績があれば誰でも主査にすべきであるという意見について A @賛成できない A採用すべきだ Bわからない Q8.現行の所属間人事交流についてどう思いますか。 A @問題はない A問題がある Bわからない Cその他 Q9.人事異動について問題があると答えた方は、問題点を3つあげてください。 A @本人希望が尊重されない A適材適所ではない B情実や人脈が多い C通勤時間など個人の事情の配慮がない D専門性や技術に対する配慮がない E年齢について配慮がない Fヒアリングがない Gその他( ) Q10.今回の提案で対象年齢の引き上げ、1項・23〜32歳→23〜35歳、2項・33〜45歳→36〜45歳としていますが、どう思いますか。 A @問題はない Aこれまでの基準でいい Bさらに延長すべきだ Bの場合は何歳位が適当ですか 第1項( )歳、第2項( )歳 Q11.計画期間を前回は、8年間の隔年実施で4回の計画交流を実施していたが、今回は、 当面、行革期間内(〜17年度まで4年間)について毎年実施としていますが、どう思いますか。 A @問題はない Aこれまでの基準でいい Bその他 Bの場合は ( ) Q12.実施規模を前回は、隔年毎に第1項対象者の15%で実施していたが、今回は毎年10%で実施するとしていますが、どう思いますか。 A @問題はない Aこれまでの基準でいい Bその他 Bの場合は ( ) Q13.本人希望の取扱いについて、第1項・第2項の対象者に対して、ヒアリングを行い、交流対象者を決定する。ただし、第2項に着いては、本人の同意を原則とするとしていますが、どう思いますか。 A @問題はない Aこれまでの基準でいい Bその他 Bの場合は ( ) Q14.技術・福祉職員等の交流基準について検討するとしていますが、どう思いますか。 A @問題はない Aこれまでの基準でいい Bその他 Bの場合は ( ) Q15.技能労務職の交流について検討するとしていますが、どう思いますか。 A ( ) Q16.その他、大阪市の人事行政について A @本人希望が尊重されない A情実や人脈が多い B専門性や技術に対する配慮がない C年齢について配慮がない D適材適所でない E通勤時間など個人事情の配慮がない Fその他 |