雪印乳業食中毒事件終結に関する 保健所を守る大阪市民の会声明 2001.2.19 保健所を守る大阪市民の会 会長 井上賢二 昨年6月、14,780人にもおよぶ被害者を出した雪印乳業食中毒事件は、昨年12月厚生省・大阪市原因究明合同専門家会議が最終報告を出し、1月17日大阪市は、市議会民生保健常任委員会で、「雪印乳業食中毒事件の原因究明調査結果について」最終報告をしました。 この報告では、原因物質は黄色ブドウ球菌から作られるエンテロトキシンAと断定、北海道の大樹工場で昨年4月1日に製造された脱脂粉乳が、製造過程で停電の際に黄色ブドウ球菌が増殖し、エンテロトキシンA型が産生されたとしています。そして類似の食中毒事例を再発防止するため雪印乳業に対し、事件の公表の遅延による被害の拡大、大阪工場及び大樹工場におけるずさんな衛生管理、製造記録の不備等食品製造者としての安全確保に対する認識のなさを指摘し、安全対策の基本部分からの再構築を強く求めています。しかしこの報告は、大阪市独自の問題として、公表の遅れによる被害拡大、雪印乳業のずさんな衛生管理や製造記録の不備など食品衛生法違反を見抜けなかった大阪市の責任については一切ふれていません。 厚生省は、最終報告に先立って11月6日にHACCP承認制度の実施要領の不備を認め、その改定をおこない、HACCPに関する評価検討会を設置、承認後の厚生省への報告等を手直しして監視を強化することとしました。 「市民の会」は、雪印乳業には食品製造者として社会的責任を自覚し、深い反省を促すとともに安全対策の根本的な改善を求めます。また昨年5月、雪印乳業は、社内の保健相談室をなくし、働いていた保健婦、看護婦を全員解雇しましたが、この解雇を撤回し、食品製造業における衛生管理の向上、従業員の健康保持と衛生教育を充実していくことを求めます。 また「市民の会」は、大阪市に食中毒事件の直後に食品衛生行政の質の向上と体制強化、危機管理体制の総点検などを申し入れてきました。10月の交渉では、昨年4月に「市民の会」の反対を押し切って24保健所体制を解体し、1保健所24保健センターに移行したこと、その改変のなかで監視員を実質12名削減したことが、事件の状況の把握と判断の遅れを招き、被害が拡大したことなど、大阪市の責任を指摘しその改善を求めました。 原因究明委員会が最終報告をだし、厚生省がHACCP承認制度の実施要領の改定を行ってもそれを実施する大阪市が体制の強化、とくに監視員をはじめとする人員を確保しなければ事故の再発防止はできません。しかし、大阪市は、実施要領に追加記載されたHACCP承認に際しての現地調査や改善状況の確認調査、承認後の確認調査、厚生省への通報等に携わる人員の確保等は提起しないままです。さらに、新年の市長あいさつで、今年の4月に機構改革を行うと表明しました。新聞報道では環境保健局を二つに分割し、環境監視部門は下水道局と統合し、その他は民生局と統合するとしています。これは公衆衛生を担ってきた環境保健局を事実上解体するものであり、その機能の崩壊につながり、到底許すことはできません。 「市民の会」は、二度とこのような食の安全を脅かす事件が起こらないよう、大阪市が各区保健センターにおける食品衛生業務の充実と、食品の製造販売に関して監視を強化し、市民の健康保持と安全な食品の提供という公的責任をはたすよう強く要望します。 |