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市政改革マニフェストに対する闘いの展望
はじめに
- 04年6月、本間正明(大阪大教授)を座長する都市経営諮問会議が発足。
- 04年11月、「カラ超勤」を放映。「ヤミ年金・制服」「職員厚遇」「時間内組合活動」が全国規模で宣伝。
- 04年12月、都市経営諮問会議が「関市長への提言」をまとめる。
- 05年4月、都市経営諮問会議を解散、市政改革本部を発足。
- 05年9月、市政改革本部「市政改革マニフェスト」を発表。
- 05年10月、関市長が突然の辞任、再出馬表明。選挙後、関市長「選挙で改革マニフェストの信を得た」。
- 05年12月、大阪市として「市政改革マニフェスト」を発表。少しばかりの加筆補正を行った。
- 06年1月、「局長・区長マニフェスト」「市政改革マニフェストにもとづく新たらしい行財政改革計画」を発表。
読売新聞は、「小泉改革の自治体版」(昨年9月28日)と報じた。大阪市での「改革」は「官から民へ」「小さな政府・自治体、大きな負担」をめざす小泉構造改革の自治体版として全国のモデルにされようとしている。痛みを伴う小泉改革や市政改革が国民・市民から支持を得るのは何故か。キーワードは「過度に単純化された分かりやすさ」。行き着く先は「格差社会」。
1.市政改革の性格と背景
(1) 都市経営諮問会議の登場と「強者支援・弱者切り捨て」政策
都市経営諮問会議が04年6月に発足。座長は本間正明(大阪大学教授)で小泉構造改革の理論的支柱の人物。04年12月に「関市長への提言」を渡した。
「「企業や人の活動が沈静化し、そのことが『社会的弱者』と呼ばれる人々の増加と行政需要の拡大につながり、行政主導で行ってきた福祉施策が市民の自律意識を低下させ、さらなる都市・人の活力の喪失につながるという悪循環をもたらした」「今後の行政に求められる役割は、自律できる市民を支援する」(P9)。
→そうすれば強い大阪市が実現できるという新自由主義の間違った論理が、その後の市政改革に貫かれている。
(2)NPM改革の導入
NPM(ニュー・パブリック・マネジメント)改革とは、「民間企業の経営理念・手法を可能な限り公的部門に導入し、その効果・活性化を図ろうとする考え方」。自治体を経営体とみなして民間手法で効率化を図る。マニフェストを作成した中心人物の上山信一(慶応大学教授)はアメリカの経営コンサル会社「マッキンゼー」の出身。読売新聞のインタビューに「企業改革のノウハウ、定石をあてはめていった」(9/28)。組織の理念も目的も違う自治体に導入するのは無理がある。地方自治法第1条の2「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする」。自治体は経営体ではない。
(3)都市経営諮問会議・市政改革本部の背景
@3セクの相次ぐ破たん
大阪市が筆頭株主であるアジア太平洋トレードセンター(ATC)、ワールドトレードセンター(WTC)、湊町開発センター(MDC)の3社は借金返済が不能になり、04年2月に大阪裁判所で「特定調停」が成立。30年〜40年かけて会社を再建そのために大阪市の貸付金699億円のうち329億円を債権放棄し、104億円の追加出資、補助金として今後350億円を支出する。WTCやATC、MDCに大阪市関連の部局が入居し続けることになり、その家賃総額は1835億円にのぼる。
昨年6月にはクリスタ長堀の特定調停が成立。新たに大阪市が15億円の追加出資と100億円以上の損失補償を行う。
昨年10月には大阪シティドームの会社更生法を申請。大阪市の損失は108億円。管財人は大阪市に補助金(年間1億2400万円)、固定資産税の減免(2億8000万円)といった年間約4億円の財政支援の継続を要請。
→「第三セクターの破綻について記述がない」という批判に応えるかたちで12月のマニフェストでは「第三セクターについても、バブル経済時の拡大成長を前提とした事業計画のもとに、過小資本・過大債務の財務構造で事業を推進し、その見直しを怠ったことから経営が破綻し、その再建に多額の本市負担を余儀なくされるに至った。そのため、今回の市政改革ではこの現実を直視し、まず『身の丈』にあった市政にしようということを念頭に置いている」(P7)。逆に第3セクターの失敗を市民に押し付ける。
A土地信託事業も破たん
土地信託事業も破たん。都市型遊園地のフェスティバルゲートが380億円の赤字を残して04年9月末に信託契約を解除した。大阪市は「これ以上の公金を支出しない」との付帯決議をつけて、200億円をキャッシュで支払った。ところが再建計画も白紙に追い込まれ、昨年9月には付帯決議を反故にした6億円の追加予算を決めた。
他の5つの土地信託事業も負債総額が1257億円(2004年9月末)まで膨らんでいる。そのツケは必ず将来に市民の負担に回ってくる。
Bバラ色の開発構想の破たん
此花区の人工島・舞州には、ゴルフ場、高級ホテル、五輪スタジアム、人工スキー場など、大阪市はバラ色のスポーツアイランド構想を描いた。しかし、五輪開催に失敗しため、計画も破たん。舞州の開発を担った第3セクター「大阪港スポーツアイランド」も今年3月に解散する方針。
C不公正乱脈な同和事業も破たん
民間の医療機関「芦原病院」を運営する浪速医療生活共同組合が昨年12月に大阪地裁に民事再生法を申請。大阪市の無担保融資130億円の債務免除を要求。関市長は応じる構え。昨年6月、「芦原病院」が都市銀行から運転資金2億円を無担保でかり、市側が「市が責任を持って返済させる」とする担当局長名の「借入金返済確認書」を銀行側に交付。法律で禁止されている事実上の「債務保証」にあたる。
Dそれでも開発は続く
それでも無謀な開発は続く。04年7月に大阪港がスーパー中枢港湾に指定されたことで、大阪市は舞州に新たなバースC12早期完成と夢洲トンネルの整備を表明。スーパー中枢港湾の整備に1000億円が計画されている。さらに阪神高速淀川左岸線第2期工事、大阪駅北ヤードの開発はあくまで推進する。関市長「オリンピックはあきらめておらず、時期を見て手を挙げる」(04年8月30日)。
2 市政改革マニフェストは将来の希望を語れない単なる経費削減計画
(1)財界の要望はほとんど受け入れ
昨年9月1日に関西経済同友会は関市長に緊急提言を手渡した。内容は、@希望退職の募集、年俸の引き下げ、業績評価主義の徹底等。A公園・道路管理、学校給食、ごみ収集等の現業部門は全面外部委託。B交通局、上下水道等の公営企業は独立行政法人化・株式会社化を断行。C市会議員の大幅削減、議員報酬の削減、海外視察等の自粛を自ら断行。D特別職、幹部に民間より人材を登用。
→市政改革マニフェストにはCを除いて見事に財界の要求が取り入れた。議員の定数と報酬の削減は省いた。政治的な配慮が見え透く。
(2)市民と職員との対立をあおり、公務労働を否定する
市政改革マニフェストは、公務労働をバッシングの標的にし、公務労働者と住民との共同の利害関係を切り裂き、その対立をあおり立て、公務員はできるだけ少なければ、それに越したことはない、といった単純なイデオロギーで貫かれている。「単細胞的公務労働敵視論」(二宮厚美)。職員削減・民営化=改革といった誤った小泉流の受けをねらったもの。
マニフェストには市バスの運転手の給与水準を掲載。年収1000〜1100万円に171人、1100〜1200万円に67人、1200〜1300万円に25人、年収1300万円〜1400万円に2人いる。市民の感覚からすれば、市バスの運転手で1000万円以上の収入は「高すぎる」「厚遇だ」との感情をいだくのも無理はない。それだけで市バスの民営化も市民の支持を得やすくなる。しかし、大阪市では運転手の新規採用を原則的に1997年度(平成9年度)から原則中止したために、病気欠勤者などが出た場合、特定職員に超過勤務が偏ってしまった。産経新聞は、「市バスの運転手で年収1000万円を超える200人あまりの超過勤務手当は平均で年314万円に達している」(昨年1/26)と報道。異常なのは、平均で314万円もの超過勤務をしなければならない職場の実態。
(3)実態を無視して「はじめに職員削減ありき」
市政改革マニフェストは、他都市に比べて職員が過剰だとして「職員採用をストップし、5年間で5000人を超える職員数を削減」「大阪市立大学の独立行政法人化(約2000人)により削減」「50歳から早期退職者制度を導入」など大幅な職員削減を打ち出した。
他都市との職員数比較は、正規職員数を人口で割った単純なもの。どの部署のどこが「過剰」なのか、具体的に何も語っていない。生活保護世帯数に対する職員数は、大阪市は横浜市よりはるかに少ない。開発を担当する港湾局の職員は横浜市の2倍以上。
読売新聞の記者は同窓生の大阪市職員について昨年7月13日付けで次のように書いている。「生活保護など社会福祉を担当するワーカーの市標準数は942人だが、実際にいるのは555人。その結果、連日、数時間の超過勤務を続けなければならなくなる。ワーカーに認められる超過手当は月2時間程度。手当のつかないサービス残業は月数十時間に及ぶ。激務に体調を崩して退職し、民間の介護施設で働き始めた同窓生はしみじみ言った。『役所の仕事は民間よりはるかに厳しかった』」。
職員の長期休職者数は02年度190人、03年度213人、04年度263人。そのうち「精神の疾患」によるもの02年度91人、03年度118人、04年度152人。自殺者02年度2人、03年度7人、04年度6人。
3 市政改革で市役所まるごと民間企業に丸投げ
(1)コスト削減だけを目的に民営化・民間委託化・独立行政法人化
市政改革マニフェストは「民営化・独立法人化など、事業点検を行う。現在分析中の事業、バス事業、環境事業、広聴相談事業、人権施策、健康福祉局(福祉関係事業)、健康福祉局(保健衛生関係)、市民病院事業、公園管理、文化集客、中小企業等への支援、中央卸売市場、食肉市場、市営住宅、営繕、道路適正管理、河川管理、市街地整備、港湾埋立て事業、高等学校、学校給食、文化財保護、高速鉄道事業、下水道(建設・運営)、保育所・幼稚園、水道(建設・運営)」と市役所の仕事を民間企業に丸投げする。
→「民営化」は効率が良くなり、コストを削減させ、財政再建に役立ち、市民負担が軽くなるかのような幻想を抱かせる。しかし本当のねらいは大阪市の財政負担を軽減することと合わせて、公共サービスを営利企業の金儲けの対象にする財界の要望を実現することにある。「官から民へ」ではなく「官から営利へ」。
※独立行政法人は、2004年4月に施行された新しい制度。法律の第2条では、「住民サービスの見地から必要ではあるが、自治体が直接実施する必要はなく、とはいえ民間に委ねては実施されないおそれがある事業を自治体から切り離して独立した法人とするもの」。いくら読んでもよく分からない条文。独立行政法人には「企業会計」が導入され、独立採算制が押し付けられる。採算性が追求されれば、利用料値上げなど住民に負担を増すか、採算が取れない部門については廃止・縮小されることになる。
(2)文化施設の独立行政法人化、バス・地下鉄の公設民営化
12月のマニフェストでは「環境事業、博物館・美術館等の文化施設事業については独立行政法人化を前提とし、また、バス・地下鉄事業については公設民営化を前提として作業を行う」(P112)と明記した。翌日の産経新聞で慶応大学の金子勝教授は「ごみ事業を下請けに出し『もうけの論理』が優先されると、分別収集などがきっちりできるのか。環境政策面がなおざりにされる心配がある」「『官から民へ』が呪文のようになっているが、バス・地下鉄事業(の公設民営化)も不採算部門の切り捨てにつながりかねず、住民から批判を浴びるだろう」「行政サービスについてあまりに無定見で驚く」(昨年12月16日産経)と厳しく批判している。
(3)学校給食の民営化で「食育」が否定される
市政改革本部は、学校給食事業が「他の政令市に比べて人件費の占める割合が高い」 「給食1食あたりのコストは591円となり、他の政令市に比べ割高である」。局長マニフェストでは、「給食調理員は05年度末から10年間を目途に退職不補充により概ね400名削減」。
→学校給食の民営化(民間委託)で、手作りの献立は困難になる。材料を一括大量購入するので旬の食材や地元野菜を使ったメニューができなくなる。学校給食の「地産地消」も無理に。子どもたちは学校給食がなければ、食生活のバランスを崩す子も多いのが現状。市政改革本部も大阪市の学校給食が「衛生管理の徹底や充実した設備による多彩な献立の実施などについては、他の政令市に比べてサービス水準が高い」と評価している。災害時には避難所にもなる学校に給食調理場があり、調理員がいることは地域全体の利益である。
(4)博物館、美術館等の文化施設の独立行政法人はうまくいくか
大阪城天守閣を1998年4月に民間委託。04年3月に委託を受けた財団法人「大阪観光コンベンション協会」の調査部長と総務課長代理が事業資金約2億4000万円を飲食意や競馬に使い込んでいたことが発覚。さらに、同協会は天守閣事業で入場者が低迷し、単年度収支は03年度3500万円、04年度500万円の赤字で、累積赤字約4000万円に達した。
東京芸術大学長の平山郁夫氏らが昨年11月3日に声明。「文化芸術の振興には、そもそも市場原理や効率性・採算性とは相容れない面があり、一律に効率性を追求することは、きわめて危険である。」
(5)民営化でコスト削減は本当か
1998年の建築基準法改悪で、自治体が行ってきた建築確認・完了検査を民間機関も実施できるようになった。大阪市では行政による建築確認件数が04年度にはわずか4%に激減、業務にかかわる職員も半減した結果、知識や経験の蓄積が困難になる事態が生まれている。姉歯建築事務所が関与した淀川区のホテル「ヴィアイン新大阪ウエスト」の構造計算書の偽造を大阪市住宅局は見抜けず、昨年12月5日大阪市はホテルの営業自粛を要請。12月13日に関市長は建築確認を終えた新築分譲マンションの一部を抜き打ち検査する方針を表明。ところが職員を削減してしまったため、抜き打ち検査も民間委託による実施が言われている。これで本当にコスト削減になるのか。住民の安全で安心を確保するためには、自治体が責任をもつことが必要。行政としての総合的なコスト意識が必要。
4 市民生活施設の後退と市民サービスが削減される
市政改革マニフェストでは、「経常経費について2割削減(▲900億円)」「公共事業は5年間で▲1100億円圧縮」「一般会計繰出金830億円について3割の削減(▲250億円)」と3つの予算で総額2250億円の削減。さらに「監理団体の委託費2007年までに▲280億円」「公債発行の水準800億円を目指す(05年度1981億円)」などの削減メニューが並ぶ。
1月12日、「市政改革マニフェスト」にもとづき、今後5年間の財政再建策などを盛り込んだ「市政改革マニフェストに基づく新しい行財政改革計画(案)」を発表。同時に全24局・24区役所別の「局長・区長マニフェスト(案)」も発表した。翌日のマスコミは、「『反発覚悟』の大ナタ」(産経)、「改革の痛み 市民に転嫁」、「暮らしへの影響不可避」(朝日)の見出しで報道。
(1)「局長マニフェスト」で市民リストラがずらり
○敬老優待パス(70歳以上のお年寄りは市バス・地下鉄無料)
「今年4月から本人確認を行ったうえ直接交付する」「制度のあり方について多角的に検討する」。
○生活保護世帯の市営交通料金・上下水道料金福祉減免措置(生活保護者は料金半額)
「生活保護費の内容を考慮し、06年度以降の廃止について検討する」
○高齢者等の上下水道料金福祉減免措置(70歳以上の高齢者世帯の料金減免)
「対象年齢の引き上げと所得制限の導入について07年度以降の実施について検討する」
○重度障害者給付金・難病見舞金(身障手帳1級年1万円、2級8000円支給)
「個人給付的な両制度の今日的なあり方を精査し、06年度以降の廃止について検討する」。年間予算(05年度)4億1500万円。受給対象者は約4万2000人。
○新婚世帯向け家賃補助の減額
「若年世代の市内への呼び込みや定住の促進に重要な役割を果たしてきている」「市内の賃貸住宅の家賃の下落や新婚世帯の収入の変化など社会経済情勢を総合的に勘案した見直しが必要」「06年度以降の補助月額の見直しについて検討する」。
○粗大ゴミの有料化、普通ごみの検討
「『ごみの減量化・リサイクル』の促進や『排出者(受益者)負担』といった観点から、粗大ごみの有料化を実施する」。「普通ごみ有料化の有効性の検証と課題の整理を行う」。
○斎場使用料の引き上げ
「火葬経費と利用者(市民)負担の適正化の検討」。
○市営住宅家賃福祉減免制度の見直し
「家賃の支払い能力が失われるか又は低下している場合に、福祉的配慮として家賃減免(福祉減免)を行っている」「入居世帯の概ね1/4が適用されており、年々増加傾向にある。04年度の減免額61億円。福祉減免基準の最も収入の低い区分では、減免後の家賃の平均はやく5000円となっている。」「受益と負担の公平を図る観点から07年度以降の制度見直しについて検討する」
○保育所保育料の見直し
「受益と負担の関係の適正化の観点から、保育所保育料の設定について、全体的な整理を行う」
○高校生奨学費のあり方検討(給付から貸与へ)
「昭和24年、制度創設。経済的理由のために高等学校又は高等専門学校での修学が困難な者に対し、奨学費として月額1万900円を給付する」「予算の範囲内で非課税世帯を採用」「非課税世帯が著しく増加し、04年度実績では、申請のあった非課税世帯の約6割しか採用できなかった」「貸与化も含めて制度のあり方について検討する必要がある」
○就園奨励事業の再構築(市独自分を見直し)
「『次世代育成支援対策推進法』の観点からも、就学前児童の育成が重要となっており」「市内幼稚園児の8割が就園する私立幼稚園の保護者負担軽減対策については、今後も必要であるが、幼児教育費補助(市独自分制度)については、本市の財政状況等を踏まえて、あり方を再検討していく」
○児童いきいき放課後事業(有料化を検討)
「登録児童数7万人に達し、事業費として約38億円を要しており、本市財政にとって負担となっている」「より効率的・効果的な運営方法を確立する必要がある」
(2)健康福祉局の一方的な施設の廃止
○勤労青少年ホーム25館 06年3月末廃止
「その公共性に応じて廃止や統合を含めた今後のあり方を検討し、整理のついたものから廃止・統合を行う」
○加美ユースセンター 06年3月末廃止
○にしはま荘(軽費老人ホーム) 06年3月末廃止
○児童館10館 06年3月末廃止
「民間施設の整備状況や時代のニーズにあわなくなった施設について、必要性の検討を行う」「児童館や労働会館については、施設の整備状況や必要性から廃止する」
○労働会館(アピオ大阪)08年3月末廃止
○弘済院児童ホーム 06年3月末廃止
○東淀川勤労者センター 07年3月末廃止
○看護専門学校 09年3月末廃止(08年度から募集停止)
(3)学校教育における見直し
○学校給食 「一部民間人材を導入する」
○幼稚園の適正配置 「統廃合、公設置民営や幼保一元化を検討」
○小中学校の適正配置 児童120人未満の小中学校について「統合」「校区の変更」「通学区域の弾力的運用」など協議を進める。
○高等学校の再編統合 「08年度に中高一貫校を開設する。現在23校の高等学校を今後10年を目途に18校程度に再編統合する。」
(4)民営化・独立行政法人化など経営形態の見直し
○市民病院 「あり方について検討」
○弘済院 「あり方を検討する場の設置」
○環境科学研究所 「あり方について検討」
○工業研究所 「独立行政法人化を検討」
○中央卸売市場 「民間移譲(公設民営)、独立行政法人化、民間委託など検討」
○環境事業 「(ごみ収集)独立行政法人化を前提」
○港湾事業 「広域化、民営化等の観点で、他の経営形態への可否を検討」
○バス、地下鉄事業 「公設民営化を前提」
○水道事業 「公営企業の存続、独立行政法人化、財団法人、株式会社など方針を決定する」
○市立大学 「今年4月から独立行政法人に移行」
○博物館等文化施設 「独立行政法人の対象になることを念頭に検討を進める」
(5)5000人をはるかに超える職員削減計画
@全市的取組み
○共通管理業務の集約化 数百人
「人事、旅費、福利厚生等を集約・事務センター化する。センター業務は民間委託。」
○市税事務所の設置に伴う税務事務の見直し 約300人
市議会答弁では約300人の削減を想定。
○乗用公用車の見直し
「原則として廃止する。」
○文書逓送業務の見直し
「民間業者への委託」
○監理団体等派遣職員の引き上げ 約1200人
「派遣職員を大幅に引き上げる」「05年7月1日現在1545人派遣」
○測量業務の見直し
「測量業務について民間委託を推進する」
A個別事項の取組み
○経営企画室業務の見直し
○総務局業務の見直し 約110人(現467人の25%以上)
「共通業務の集約化」「民間委託」「退職者、派遣職員の活用」
○財政局の事務見直し 約85人(現424人の20%)
「全件電子入札化」「賦課徴収事務の初期段階の量的に処理する業務にアウトソーシングの導入」「賃貸地の管理・処分業務について民間業者に委託」
○計画調整局業務の見直し 26人(退職不補充)
「統計部門の外部委託化」
○健康福祉局の施設廃止など 約600人(局全体で)
「公立保育所や弘済院をはじめとする福祉施設に民間活力の導入」
○中央卸売市場の業務委託の推進 103人
「施設設備の維持管理業務について業務委託を推進する」
○下水処理場等の業務の見直し 約400人(局全体で)
「下水処理場監視室の統廃合、抽水所の遠方制御、送泥ネットワークの構築」
○環境事業センター、焼却工場の効率化 約300人
「ごみ収集の作業回数及び車両積載量の見直し」
○住宅局工事監理業務への再任用制度導入 50〜60人
○建設局工営所部門の見直し 110人
○建設局用地取得事務体制の見直し 30人
「用地取得業務量の減少傾向に対応した組織のあり方の検討」
○道路、河川事業部門の見直し 50人
「事業量の減少に見合った組織のあり方を検討」
○市街地整備事業部門の見直し 190人
「事業の収束、新規事業凍結に伴う組織の段階的縮小」
○港湾局業務の見直し 100人(局全体、派遣を除く)
「ひき船事業の民営化、浚渫事業の民間委託化、電気設備維持管理業務の民間委託化」
○収入役室業務の見直し 8人
「電子収納及び会計事務の電子決算化」
○バス、地下鉄業務の見直し 669人(交通局全体で)
「公設民営化を前提」
○水道局業務の見直し 400人(局全体で)
「営業所、工事事務所、浄水場の業務の委託化」
○学校園の事務事業の見直し (当局資料は422人だが、それを上回る計画)
「2010年度を目途に学校事務センター業務を集約し、現行4センターを1センターに統合のうえ、学校事務職員の見直し」「学校事務職員は学校事務センターの統合や配置基準の見直し(100名)、給食調理員は05年度末から10年間を目途に退職不補充により概ね400名削減、校園文書送達業務を廃止し38名削減、管理作業員は05年度末から6年間を目途に退職者不補充により210名削減。」
○教育委員会事務局の見直し 約120人
「博物館施設、社会教育・生涯学習施設に指定管理者制度を導入(約40名)、共通管理業務の集約化、業務の民間委託化、NPO・ボランティアとの協働、嘱託職員の活用(約80名)」
6 市民生活と地域経済の再建による改革を
(1)市民生活と景気の回復による改革を
地域経済をどう回復して税収を増やすのか、どう市民の所得を増やして福祉の経費を削 減するのか、そんな考えは一切ない。今、市民が求めているのは、崩壊しつつある生活基盤の回復、福祉・教育の充実。大阪市の生活保護者は全国最多の10万人をはるかに超える。生活保護費は全国の1割を超えている。小中学校の就学援助の受給率は1995年度13.4%から2005年度(見込み)34.3%に急増。市内の工場や商店の数も減少を続けている。地元企業を支援し景気の回復と雇用の拡大を図ることが経費の削減と税収の増加につながる。一部の強い企業のみを支援する大阪市「改革」は、地域経済を冷え込ませて税収も落ち込ませることになる。
(2)クロス・セクター・ベネフィットの考え
クロス・セクター・ベネフィットという聞きなれない言葉がヨーロッパで注目されている。「ある部門でとられた(しばしば出費を伴う)行動が、他部門に利益をもたらす(しばしば節約となる)」という考え方である。高齢者や障害者への無料交通パスなど、誰もが利用しやすい公共交通の提供は、財政支出を増大させるが、それ以上に介護費用など福祉部門における支出を減少させることを説いている。しかも、多くの場合に高齢者や障害者だけでなく健常者にも利益になると強調している。費用効果を総合的にとらえた市政改革が望まれる。
(3)闘いの展望
今、大阪市がすすめる「改革」は、「自治体職員のあり方をかえる」攻撃。住民の願いを受け止める全体の奉仕者から、住民には「効率化」を押し付けて当局・財界に奉仕する職員に変質を迫っている。しかし、市政改革=市民リストラであることが市民にも分かりやすくなっている。児童館・勤労青少年ホーム廃止に子どもや保護者から驚きと不満が出ている。敬老パスの改悪に反対する市民運動は、マニフェストに掲げられた「一部自己負担」(有料化)をやめさせ、無料継続を勝ち取っている。市政改革について自分たちの仕事の意義と内容、働きがいを語ること。行政区でのタウンミーティングの実施など、市民の中に出ていくことが求められている。
大阪経済大学学長の重森暁教授は、「人間発達労働としての公務労働の多くは、現場での一定期間にわたる経験と熟練が必要になる。また、先輩から後輩への経験と熟練の継承が重要となる。そのためには、雇用の安定性と一定水準以上の労働条件は必要なことである。」(重森暁「人間発達と公務労働」、『人間発達と公共性の経済学』2005年)と書いている。自信と誇りを持つことが必要。
市場原理主義の「小さい自治体」を選択するのか、住民福祉と人権保障の「大きな自治体」を選択するのか、問われている。同時に自治体労働者としての真価が問われている。 |
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