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労働基本権問題の解決を「サボル」日本政府とILOの怒り
<全労連・ILO結社の自由委員会、国連人権委員会要請団に参加して>


大阪市役所労働組合 副執行委員長 中山 直和


1.はじめに

昨年12月16日から21日の日程で、ILO(スイス・ジュネーブ)への追加情報を行うための全労連要請団(10名)の一員に加われたことは、大阪市役所の問題が公務員攻撃の大きなきっかけにされ、現在「市政改革」と称する大リストラ攻撃に晒されている最中にある者として、非常にタイムリーなとりくみであるとともに意義のあるものでした。

今回の要請団による追加情報は、2002年と2003年のILO勧告を無視する日本政府によって、労働基本権の制約を棚上げにしたままで、マイナス人勧や「公務員制度改革」の強行によって公務員労働者に対する賃金・労働条件の大幅な切り下げを一方的に行うという二重の権利侵害をすすめている事実を告発するものでした。
また、要請団はジュネーブにある国連人権委員会を訪問しました。その主題は、国家公務員の政治活動への逮捕・弾圧や地方公務員法の改悪問題にかかわって懇談を行いました。

今回の行動を通じて、日本政府のあまりの不誠実さに、ILO関係者の怒りを肌で感じるとともに、私たち日本の労働者・労働組合が、島国根性を捨てて、大きく奮闘することの必要性を強く認識させられました。


2.ジュネーブの日本人職員も「大阪市問題」を知っていた

 今回の要請行動にあたって、ILO側への橋渡しをしていただいたのは、日本人スタッフのTAKAGIさんでした。19日の朝に、お礼の挨拶と併せて打ち合わせを行いましたが、私が大阪市職員であることを名乗る前に「大阪市の問題が、マスコミを通じて国労と同じようなことになっていますね」と発言され、要請団から驚きの声が上がりました。大阪市問題は既に国際問題になっていました。


3.ILOは日本政府に怒っている!

 ILOの労働者側メンバーの日本政府への怒りを実感させたのは、一つには、カレン・カーチスさん(ILO結社の自由部担当責任者・ILO労働基準局副局長)の私たちへの対応の積極さです。

11月の理事会で日本案件についての討議を予定していたのが、日本政府のサボタージュによって討議できなかったが、3月の理事会では必ず討議するという決意を持って、私たちのもたらす情報に積極的に反応され、「もっと追加情報を出してほしい」「しかも早く出してほしい」と私たちに求める姿勢に現れていました。

私は、大阪市当局による労働組合運動への規制・支配の強化の実態を簡単に発言しました。

また、ダン・クニア氏(ILO労働者活動局次長)との懇談では、もっと強烈でした。要請団メンバーから、2002・3年の勧告に感謝するとともに「ILOとして、さらに積極的な支援をお願いしたい」と要請したのに対し、ダン・クニア氏は、積極的な協力を約束しつつも「お国の方で、みなさんが運動をやってほしい。全労連・連合が協力しあって、力強い運動をしていくことが必要だ」と激励の言葉を率直に述べられました。私には、ILOに対して“これ以上どうせよというのか・・・”という気持ちが込められているように感じました。たしかに、3・4年前に出された勧告を読み返せば、日本政府に改善を求めるILOの決意と怒りが込められており、それを踏まえるならば当然の反応だと納得しました。


4.ILOダン氏の意見にまったく同感!

 また、ダン氏は「政府が公務員パッシングをやり、給与引き下げをキャンペーンしているとき、組合としての挑戦は、賃金の分野だけでなく、労働基本権をとりくむべきだ。労働基本権は1948年から未だに与えられていない。世界の現状は変わっている。日本は法律を変えずにきている。市民へのキャンペーンを張って、民衆の声というものを組合の決意で引き出すべきだ。

 グローバル化だけでなく、日本はOECDのメンバーであり、EU全体や日本の先進国が、OECDの中でよい例として示さなければならない。好例を示してほしい。

 韓国政府の言い分は、『日本がしないのに・・・』と影響を与えている。労働基本権での民衆キャンペーンが必要だ。

 もう一つ、政府が民間なみに賃下げを主張し、賃金が同等であるということに固執するのであれば、権利も同じにすべきだ。真に同等ではない。同じ枠組みとして、『権利が同等だから、権利も同等にせよ』というならわかる。」との発言は、完全に同意できるものです。
今回の要請行動を通じて、改めて、日本の公務員労働者の労働基本権を取り戻す闘いを、国際的な視野で捉え直す必要性と、闘いの大きな前進を勝ち取る意義が日本の労働者だけの問題ではないんだという認識を強めました。


5.「公務員制度改革」・賃下げは個々の労働者の生活問題だけではなく、国の経済問題として見るべきだ!

さらに、ILO理事会の労働側の書記をされているアナ・ビアンディさんは、私たちの追加情報を読んだ感想としてこう述べられました。「年末の忙しい時期にいかに日本で緊急対応が必要な事項があるということを理解している。昨日、追加情報を読んだ。非常に深刻な状況だと思った。

5%人員削減を5年間でやっていくと同時に、公務員のいろいろな意味で、人為的に削減すること。人事院が発表していることは、深刻な状況だとわかった。

 これを読んでおかしいと思うのは、GDPとのかかわりで、公務員のコスト削減の方針について、労働者側からみておかしい。(人件費は)個々の労働者が生活するのにいろいろ係わると同時に、ひとつの経済という中で見ると、一つのファクターと見るべきであり、人権問題としてのみ見るべきではない、経済の観点からみても異常と見るべきだ。」

 一昨年来の「ヤミ・カラ」「厚遇」批判に晒されて、賃下げ・手当廃止がいとも簡単、当たり前のように強行されています。私たちは団体交渉の中で、このような不当な市当局の姿を、「強迫観念に駆られている」と批判し、労働者の賃金が消費経済を支えている重要性を繰り返し主張してきましたが、この私たちの立場とアナ・ビアンディさんの意見は一致しているのです。

 私たちは、生活を支えている賃金・手当のことを「生活給」と表現してきましたし、賃下げには怒りを組織して闘ってきました。しかし、今、率直にいって「生活給を削られるのは駄目だ!許せない!」と主張することを憚る傾向が私たちの組合内にも生じているのではないでしょうか。また、どうせダメだから諦めている場合もあります。これは、国際感覚からみて、私たちがズレているのです。


6.日本政府の「不誠実さ」、国連でもILOでも評判

 ILOの労働者側メンバーは、日本政府に対して「公務員制度改革」の「法案」を早くからきちんと出すように繰り返し要請しています。しかし、政府はいまだに示さない。また、昨年11月に日本案件の討議を予定していたのに、それが実現しなかったのは日本政府が求められている資料を提出しないことが原因だといいます。当然、ILOメンバーはその不誠実さに怒りをあらわにしています。

 また、国連の人権委員会との懇談では、メンバーのギルバート氏から、日本案件の討議内容のコピーが配布され「人権委員会の2002年10月31日に行われた第5回の会議には、日本政府は必要な書類を提出せず、審議できなかった。」という趣旨の報告がされました。

 ここでも、日本政府はええ加減なことをしてるなーと思いましたが、こんなことをしていて、国連の常任理事国入りを画策しても、世界から総スカンされるはずですわ。世界に恥を晒す日本政府となにも知らない日本人という嘆かわしい構図を打ち破る必要があります。


7.労働基本権を改めて論じる! 「カローシ」を生む「ルールなき資本主義」

 公務員労働者の労働基本権が剥奪されている日本ですが、憲法においては、労働基本権がいかなる制限もつけずに明記されています。これは、日本国憲法の積極面であると言われています。しかし、現実は半世紀以上踏みにじられています。

現在の日本では、「過労死」「過労自殺」が大きな社会問題となっています。私たちは、その現状を「ルールなき資本主義」と呼んできましたが、その原因として、過酷な長時間・過密労働があり、それを防止するどころか悪化させる労働法制の相次ぐ改悪が、財界の要求に沿って行われてきたことがあげられます。また、労働者・国民の貧富の格差と貧困層の増大による経済問題が横たわっています。

公務員は、民間の実態に比べればまだ「マシだった」ことが、今、公務員パッシングの材料にされていますし、自分たちでも「公務員は恵まれている」と思って安住している傾向も否めません。

ルールなき日本資本主義の根源は、むしろ、憲法に違反し、公務員労働者の労働基本権を半世紀以上にわたって奪い続けていること、「労働基本権剥奪」こそがルール違反の根本問題ではないでしょうか。


8.ILO勧告を改めて学習することの重要性と今後の闘争課題について

要請団に参加して、多くの収穫があったのと同時に、新たな課題が明らかになりました。
大阪市の現状に照らして、何が問題なのか、掘り下げる必要があります。そのためにも、ILO勧告の内容を、再度、学習することの重要性を強く強調したいと思います。

ここで、おさらい的にILOの構成について触れますが、ILOは労働者や使用者とともに各国政府の三者による構成になります。したがってILOの勧告というのはその三者の合意を踏まえたものです。労働者側書記のアナ・ビアンディさんは、使用者側や政府側から常に妨害を受けながら取り組んでいることの報告もされています。言いたいのは、そういった「妨害」があった上でなおかつ出された勧告だということを認識するべきでしょう。
さて、そこに書かれているのは、「労働基本権を付与すべき」という核心だけではありません。

今、私たちが、現実に直面している問題には、「管理運営事項」の拡大によって交渉範囲の制約を強めていること。「ながら条例」の改悪などによって労働組合活動を当局の「管理下」に置こうとする攻撃などがあります。ILOはこの問題にも示唆を与える勧告となっています。
これを活用しない手はありません。以下、具体項目に触れます。

@労働基本権について
 勧告では、(a)で、明確に付与すべきだという姿勢です。スト権が付与されることの意味は、「労使合意がないなかで当局が労働条件の切り下げを一方的に強行することは許さん!!」という場合の伝家の宝刀です。したがって、伝家の宝刀の「スト権」だけのことを念頭に置いているのではなく、労使協議・労使合意の大事さを再確認することが重要です。いまこの点が政府・市当局によってどれほど踏みにじられようとしているのか、怒りを持って告発すべきです。
 また、ストライキ権を享受する対象の例外については、極めて・極めて、限定的に「軍隊および警察、国家の名において権限を行使する公務員、言葉の厳密な意味での必要不可欠業務、若しくは急迫した国家的危機の状況下で雇用される労働者。」としています。

A団結権、労働組合結成の自由について
勧告の(b)の(A)で、登録団体制度の問題を指摘し、地方公務員の労働組合結成の自主権について明確にしている。いま、人事委員会への団体登録によって「職員団体」の認定がされていますが、その構成員は非現業職員に限定しています。水道・交通・消防職員は加入できません。現業職員も別扱いです。このことによって、労働組合は細分化させられ、力を弱められています。
労働組合の法的な規定によって分断された状況を利用して、大阪市当局が労務管理をすすめてきたことは明らかであり、そのことへの反撃をどう構築するのかが求められています。

B専従役員問題、組合職免問題について
勧告の(b)の(B)で、専従休職役員問題について触れている。日本での「7年取ればあとは退職」という規定を批判している。
大阪市は、専従役員の活動内容を規制し、勤務・労働条件のみに限定しようとしています。無給の職務免除もその活動内容によって許可しないことを平気で表明しています。この問題点を私はILOで告発しました。それに対すILOメンバーの反応は極めて積極的でした。
労働組合の活動内容を決めるのは、まさに自主的な権限に属することです。賃金・労働条件の改善のためには対政府闘争も政治闘争も必要なときが存在するのは自明のことです。その戦術・活動の内容を当局の一方的な判断で、規制することは国際的に見て異常なことなのです。

C団体交渉権・管理運営事項について
勧告の(c)では、政府に「公務における交渉事項の範囲について労働組合と意味のある対話」を要請しています。
まず、団体交渉権についてILOは、2002年11月の中間報告の644に以下のとおり述べています。

 「この権利は労働者の基本的権利である」とした上で制約を受ける範囲を、ストライキ権と同様に「軍隊、警察および国家の運営に従事する公務員を唯一の可能な例外として民間・公共を問わず認められるべきである」、「すべての公務員労働者は団体交渉権を享受すべきです」と述べています。

 そして、「交渉の範囲について」全労連・連合双方から、「交渉から除外される事項があまりにも広範囲である」との意見が寄せられていることに触れ、「委員会は、ある特定の事項は第一義的若しくは本質的に政府業務の管理および運営に明確に属し、したがって当然交渉の範囲外と見なすことはできるが、他のいくつかの事項は第一義的もしくは本質的に雇用の条件に関係する問題であり、団体交渉の範囲外になるものと見なされるべきではない」と述べている。その上で、政府に労働組合との対話を要請しているのであり、政府の主張の問題点を正す立場を明確にしています。
 以上のように、ILOの見解は私たちの運動を大いに励ますものです。さらに研究すればさらに豊富な内容を引き出せそうです。


資 料

ILO第287回理事会(2003年6月20日)採択

558.前述の中間的な結論をふまえ、委員会は理事会にたいし次の勧告を承認するよう求める。

(a)委員会は政府にたいし公務員の基本的権利にたいする現行の制約を維持するという、その言明  した意図を再考するようあらためて強く要請する。

(b)委員会は、日本が批准している87号および98号条約に具体的に示されている結社の自由原則に合致した公務員制度改革および法改正に関して速やかに合意に達するよう努力すること、また、この点に関してひきつづき通知することを、再度、関係者にたいし強く要請する。
協議はとくに次の問題に焦点をあてるべきである
  • (@)消防職員及び監獄職員に団結権を保障すること。
  • (A)地方レベルの公務員が、登録制度実施の結果として過度の細分化を被ることなく、自ら選択する組織を結成できることを確実にすること。
  • (B)公務員団体が専従組合役員の任期を自ら定めることを認めること。
  • (C)公務員が団体交渉権および労働協約締結権を持ち、また、それらの権利が合法的に制約されている公務員は適切な代償措置を享受することを確実にすること。それらはいずれもが完全に結社の自由原則に合致するものでなければならない。
  • (D)公務員が結社の自由原則に合致してストライキ権を付与され、そのような権利を正当に行使する労働組合員と役員が重い民事または刑事罰をうけることのないことを確実にすること。
(c)委員会は政府に対し、公務における交渉事項の範囲について労働組合と意味のある対話を行うことを要請する。

(d)委員会は政府に対し、過去においてスト行為に訴えた公務員が投獄以外の制裁、たとえば罰金等を受けたかどうかを知らせるよう要請する。

(e)委員会は政府に対し、公務員労使関係制度を改正するいかなる法案についても委員会に提供するよう要請する。

(f)委員会は政府に対し、大宇陀町裁判の最終判決が下されたならば直ちに委員会に提供するよう要請する。

(g)委員会は政府に対し、有明町の事案における不当労働行為の差別的取扱いに関する申し立てについての意見を委員会に提供するよう要請する。

(h)委員会は政府および提訴団体に対し、独立行政法人(IAI)へ移動した職員およびその労働組合の団体交渉権の再組織の結果に関する情報を提供するよう要請する。

(i)委員会は政府に対し、上記のすべての事項の進展について委員会にひきつづき情報を提供するよう要請する。

(j)委員会は政府に対し、望むならばILO事務局の技術的援助を利用することができることに注意を喚起する。
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