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大阪“市政改革”はどうなっているか

<季刊『自治と分権』2006年夏季号に掲載>
大阪市役所労働組合 副執行委員長 中山直和


はじめに

 大阪市問題は、2004年11月の勤労感謝の日の「カラ残業」報道以来、新聞・テレビに繰り返し登場し、「公務員バッシング」の格好の標的となった。その影響は、労働組合そのものを「既得権益」の悪しき擁護者と決め付け、公務労働者と国民を離間させ、全国に与えた被害は極めて大きかった。

私たちは「大阪市問題」の本質を、国民の生活と権利への全面攻撃をすすめるための露払いだと訴えてきた。(拙著「『大阪市問題』は、財界・政府による国民生活と権利への全面攻撃の『号砲』」大阪市労組のホームページに掲載)

今回の報告は、まず、「経営コンサルタント」による、大阪“市政改革”の手法とその問題点を明らかにすることにより、この点からの全国への悪影響に警鐘を鳴らすこと。また、部落解放同盟幹部による「横領事件」や「芦原病院」など「同和問題」が如何に大阪市政を歪めてきたのか、その問題点を探ること。さらに、当局と「連合」労組との特殊な癒着構造の一端を明らかにすることにより「大阪市問題」の真相に迫ることである。


1.経営コンサルタント主導の大阪市改革

大阪市政改革本部は「市政改革マニフェスト(案)」を、2005年9月27日に発表し、市長選挙などいくつかの節目の後、本年2月14日に正式に確定させている。そして、3月1日には「市政改革推進会議」を発足させ、関西財界メンバーが市政改革推進に直接責任を持つ体制を確立させた。この動きの中心に位置しているのが経営コンサルタンを自認する上山信一慶応大学教授である。

「霞ヶ関や永田町の思いつきや机上の議論で作った政策には品質上の欠陥が多い」と批判しつつ、「自治体の経営改革こそが改革の近道だ」とする上山氏は地方自治体の場から小泉構造改革に「注文」をつける決意を表明していた。(日経メールマガジン、コラム「続・自治体改革の突破口」2004/9/9、以下「コラム」とのみ記述する。)

(1)改革のはじまりは、小泉「構造改革」直下型(2004年)

2003年11月の市長選挙で関淳一市長が当選し、その公約であった都市経営諮問会議が、2004年6月に設置され、政府の経済財政諮問会議のメンバーでもある本間正明大阪大学教授が座長に就任する。都市経営諮問会議では、本間氏から「官から民へ」という文書が出されるなど、NPM行革の手法を全面的に取り入れる議論がされ、12月20日には「関市長への提言」が提出される。提言には、「行政主導で行ってきた福祉施策が市民の自律意識を低下させ、さらなる都市・人の活力の喪失につながるという悪循環をもたらした」と福祉切り捨ての理念があからさまに述べられた。私たちはこの諮問会議の動きを小泉「構造改革」直下型だとして、いち早く警鐘を鳴らして批判してきた。

諮問会議は、月1回程度開催され、7月23日の第2回会議では「既得権益の問題」「労働組合との関係」が議論され、「改革をするには味方がいる。市民を味方にしなければ動かない。情報公開を思い切って進めていかなければならない」、さらに11月30日の第6回会議では、「給与・福利厚生についての見直し」について議論される。

奥田日本経団連会長(当時)が05年1月24日に「今後、社会保障関連の歳出増大が見込まれる中で、他の歳出の削減を進めようとするならば、国および地方公務員の総人件費削減に手をつけなければならない。特に地方公務員の数や給与の問題について、検討していきたい」(経団連ホームページ)と述べるが、前述の諮問会議の議論と、その後に加熱するマスコミ報道と労働条件の切捨てが、次に何をめざすのかの本音が見事に語られていた。

国も大阪市も、財政危機の根本原因は、大銀行・ゼネコンによる巨大公共事業の推進や、その破たん処理へのさらなる税金投入が最大要因であり、多くの市民の知るところでもある。しかし、あまりにも金額が大きすぎるため「理解」の範囲を超え怒りに転化しない。ところが、「背広」や「年金」などは、市民の生活感覚で理解でき、怒りに即転化することになる。国民の中に対立を持ち込み、足の引っ張り合いを策す小泉構造改革の「仕掛け」に見事に嵌められた。

このようにした「成果」が後の経済財政諮問会議の方針に引き継がれていく。(注参照)

(2)経営コンサルタントの登場による市政改革の推進

2005年に入り、大阪市の「厚遇問題」に対する報道はエスカレートするが、市政改革のリーダーを自認してきた本間氏は大平光代前助役らとの軋轢が表面化し、ドタバタ劇の後に退くことになる。

そして、2005年4月1日に市政改革本部が発足し、それまで、大阪市大の社会人大学院教授や「福利厚生事業等改革委員会」(「厚遇問題」の批判を受け2004年12月に発足)の委員を務めてきた上山信一氏が市政改革本部の本部員として全権をふるう立場に登場してくる。その後の経過は以下のとおりである。
  • @ 05年4月1日、市政改革本部を発足、都市経営諮問会議は解散。
  • A 05年9月27日、市政改革本部「市政改革マニフェスト(案)」を発表。
  • B 05年10月、関市長が突然の辞任、再出馬表明。選挙後、関市長再選され「選挙で改革マニフェストの信を得た」と表明。
  • C 05年12月15日、大阪市として「市政改革マニフェスト(案)」を発表。少しばかりの加筆補正を行った。
  • D 06年1月12日、「局長・区長マニフェスト」「市政改革マニフェストにもとづく新たらしい行財政改革計画」を発表。児童館・勤労青少年ホームの廃止などを発表。
  • E 06年2月14日、「市政改革マニフェスト」を決定。
  • F 06年3月1日、市政改革推進会議を発足させ、財界が改革推進の中心に名実とも座る。
上山氏は、A「マニフェスト(案)」発表の記者会見において「企業改革のノウハウ、定石をあてはめていった」(読売新聞)と表明している。上山氏は慶応大学などで教鞭をとる以前は、アメリカ資本の経営コンサルタント会社「マッキンゼー」の共同経営者であったが、それらの経験がフルに活用されたわけだ。

マッキンゼーは「1923年に創業の世界で最も成功している戦略コンサルティング会社」と言われているが、そのホームページには次のコメントが紹介されている。「マッキンゼーは、営利企業ばかりでなく、公共機関や非営利組織、政府機関などにもコンサルティングを行っています。(略)全社が有する専門知識を活用し、社外のアドバイザーやエキスパートがプロジェクトに参画するケースもあります。そして、実際にコンサルティングを行った組織、団体だけでなく、報告書や記事を通して、知識を広く提供しています。」

また、マッキンゼーが2004年の一年間に手がけたプロジェクトの内、公共分野は3%だという、「構造改革」が地方自治体を席捲する今日の日本の状況を、ビジネスチャンスと捉えても不思議ではないだろう。

(3)上山構想による「マニフェスト」と「行政評価」、そして市長選挙

市政改革本部は、発足後半年で「マニフェスト」を発表した。通常、マニフェストとは選挙に際して候補者が出すものであるが、大阪市では市長の任期途中で出された。これについて上山氏は「去年の2月『大阪市役所の改革を手伝ってほしい』と関市長と大平光代助役(当時)から頼まれた。」「市長と話し、すぐに『この人は大阪市のゴルバチョフだ』と確信した。即座に『改革マニフェスト』をつくるよう提案した。」(猪瀬直樹メルマガ2006/3/9、以下、「猪瀬メルマガ」とする。)と語っている。

そして、市政改革本部のマニフェスト作業は「マニフェストはピッチャー。行政評価はキャッチャー」であり「補完関係」(「コラム」2004/11/4)だとする上山氏の指導により、経営コンサルタント企業を総動員した行政評価・事業評価がはじまる。

この行政評価の作業は「昼夜敢行の6ヶ月間だった」とのことだが、その作業を経営コンサルメンバーが担ったのである。大阪市では事業評価システムは既に確立し、毎年公表されていたが、「現場職員と管理部門だけで行政評価をやっていても、戦略性やめりはりは期待できない」と批判する上山本部員の指示によって市職員による評価は「凍結」となり、外部メンバーによる「事業分析」として一切の作業がすすめられる。(詳しくは次項で紹介)

また、上山氏はマニフェストをつくるよう提案した理由の一つに「市長の辞任による市長選への準備」をあげていた。その見通しのとおり、関市長はマニフェスト発表の直後に「辞任」し、選挙が実施され、関氏が再選された。

関市長も上山氏も「マニフェストが信任を得た」と胸を張って見せる。しかし、投票率は前回と同じ低水準にとどまり、しかも関候補自身の得票は2年前を9万票も下回り、絶対有権者比でわずか13.5%にしか到らなかった。彼らの表明とは裏腹に、マニフェストが市民の信任を得たとは到底言えない。

ところが、関西財界は「関氏の市政改革路線が改めて市民に支持された」(関経連・秋山会長)、「抜本的な改革を不退転の決意と信念を持ってやりとげてほしい」(大阪商工会議所・野村会頭)といった評価や期待の声を真っ先にあげている。
市政改革が誰のための改革なのか、底が見えるひとコマである。

(4)経営コンサルタント企業による「事業分析」作業

上山氏は、マニフェストを飛行機が運行する場合の「航路」になぞらえる。パイロットが首長であり、レーダーが「行政評価」だとする。そして、外部メンバーによる「行政評価」の作業を極めて重視しているが、これは、改革をすすめるための「現状評価や課題発掘、進捗状況のチェック」などを全て財界を含む外部メンバーですすめるという手始めにしかすぎない。
市政改革本部は「行政評価」を「事業分析」と称しているが、「市政改革マニフェスト(案)」の基礎資料として盛り込まれるとともに、別途「経過報告」もされている。

それによれば、67の主要事業が「経営分析の手法を導入」することによって、分析されている。その手法とは、「事業と経営の実態を数値化」「他都市や民間との比較」「収支と生産性の分析」「経営的視点から課題の抽出」「経営体制の見直し(独立法人化、民営化など)や事業の廃止の可能性も検討」などであり、まさに経営コンサルタントの手法だ。

また、分析作業をすすめたパターンを次のように分類している。

タイプA「改革本部のプロジェクトチ−ムで分析または外部委員の協力を得ヒアリング等で分析」、タイプB「各局が自主的にプロジェクト等を設けて分析」、タイプC「市政改革本部の要請により各局が事業分析・自己点検」
(表)参照

タイプCには「各局が事業分析・自己点検」とあるが、該当部局の市職員が分析したと考えるのは間違いのようだ。その中の「公園管理」「下水道事業」「営繕」「道路・河川管理」「市街地開発」などには、上山氏が推薦し「随意契約」で分析作業を請け負ったのは「ボイヤンシー」というコンサルタント企業である。

実はこのボイヤンシーの経営者は、既に紹介したマッキンゼーの元「研究員」であり、「上山氏からも高い評価を受け、推薦があった」というのだ。ちなみにボイヤンシー以外のコンサルタント企業も全て「随意契約」となっている。一事が万事、上山氏お墨付きの「経営コンサルタント」による事業分析となっていることは明らかである。

(5)単なる経費節減計画=「市政改革マニフェスト」の特徴と問題点

@マニフェストの特徴と問題点

・5000人以上の人員削減目標を掲げ、更に上積みをする
「職員採用をストップし、5年間で5000人(7000人削減・新規採用2000人)を超える職員数を削減」「50歳から早期退職者制度を導入」など大幅な職員削減を打ち出した。しかし、他都市との職員数比較は、正規職員数を人口で割った単純なもの。どの部署のどこが「過剰」なのか、具体的に何も語っていない。生活保護世帯数に対する職員数は、大阪市は横浜市よりはるかに少ない。
さらに本年3月には財界代表が中心に座った「市政改革推進会議」が発足し、今後5年間の職員削減目標を7000名から、5500人上積みして約1万2500人削減と修正。

・コスト削減だけを目的に民営化・民間委託化・独立行政法人化
事業分析を行った全ての事業を民間企業の儲けの対象に切り売りする。
市民に「民営化」で効率が良くなり、コストを削減させ、市民負担が軽くなるかのような幻想を抱かせている。しかし本当のねらいは、公共サービスを営利企業の金儲けの対象にする財界の要望を実現することにある。「官から民へ」ではなく「官から営利へ」となる。

・文化施設の独立法人化、バス・地下鉄の公設民営化
「環境事業、博物館・美術館等の文化施設事業については独立行政法人化を前提とし、また、バス・地下鉄事業については公設民営化を前提として作業を行う」と明記した。
文化施設について、平山郁夫氏らが「文化芸術の振興には、そもそも市場原理や効率性・採算性とは相容れない。」と批判したが、それを受けとめた政府の対応に対して、上山氏は「消極的」と批判している。

・学校給食の民営化で「食育」が否定される
学校給食事業が「他の政令市に比べて人件費の占める割合が高い」「給食1食あたりのコストは591円となり、他の政令市に比べ割高」といい「給食調理員は05年度末から10年間を目途に退職不補充により概ね400名削減」

Aマニフェストの根本的な問題点と上山氏の言い分

・市民参加を拒否したマニフェスト作成
大阪市民は作成に一切関わっておらず、拒否された。しかも、その内容は膨大であり、読んだ市民は皆無に等しい。上山氏も「住民にとってのわかりやすさという点では落第点に近い」(猪瀬メルマガ)と自認しているが、もともと市民参加は口だけなのだ。今年に入り「マニフェスト案にもとずく、新しい行財政改革計画案」に対するパブリックコメントが実施され、多くの市民が声を寄せた。ところが、その締め切り日(2月15日)の前日の14日に市政改革マニフェストは案を取って確定された。まったく市民を馬鹿にしたパブコメであったし、彼らの本音が見えた。

・三セク・巨大開発のムダには手をつけず
大阪市の財政危機の原因について、上山氏も「誰の目にも明らかなハコモノ過剰投資」(猪瀬メルマガ)というように、第三セクターや土地信託事業の破たん処理が大阪市財政を圧迫していることは誰の目にも明らかである。
ところが、マニフェストでは、第三セクター破たんについて「見直しを怠ったことから経営が破綻し、その再建に多額の本市負担を余儀なくされるに至った」と認めつつ、「今回の市政改革ではこの現実を直視し、まず『身の丈』にあった市政にしようということを念頭に置いている」として、巨大開発・三セク支援を続けるという根本的なムダを改めず、逆に失政の付けを市民に押し付けることを表明している。
誰のための改革かこの点でも明らかだ。

・住民自治、参加を拒否し、サービス買えない市民を排除
市民を「サービスを買う顧客」とみなし、サービスを買えない市民を排除する。毎年、数十万人が利用しているが、会場使用料が無料の児童館・勤労青少年ホームは真っ先に廃止を打ち出した。
また、地方自治の単位である行政区から、税収の「効率性」を上げるためとして税務職場を引き上げ「市税事務所」をつくるとしている。住民自治の単位としての行政区を根本的に骨向きにする動きである。

(6)市民生活の将来像を何ら語れず、「格差」を拡大する「マニフェスト」、百害あって一利なし

以上の述べてきたように上山氏が進める「市政改革」は、市民生活の将来像を何ら語れない、単なる経費節減計画でしかない。

しかも、「財界人と学者からなる『市政改革推進会議』が発足」し、そこに「この一年の改革の成果を整理・報告した」(猪瀬メルマガ)と誇らしげに語る上山氏にとっては財界人こそが利益を共有するパートナーなのだ。

さらに、「大阪市役所の職員の厚遇の構図は、実は日本国政府の国民厚遇の構図と変わらない。前者の場合は、職員がタックス・イーターとなって市民の税金を食べる。後者の場合は、現役世代がタックス・イーターとなり、将来世代の税金を食べる。」(「コラム」2005/04/07)と述べているように、巨大な財政赤字の責任は国民がとるべきだとして、国民にガマンを押し付ける小泉「構造改革」の路線そのものだ。

上山氏の主張は、時に国民から「わが意を得た」とされるような部分もあるが、その議論は一貫性がなく、場当たり的だ。生活苦に喘ぐ市民の「不満」や「怒り」をリサーチし、それを煽る宣伝計画によって展開している感がある。この点でも、本間氏による「都市経営諮問会議」の議論で、「市民を味方に」との主張を実践しているのだ。情報がマスコミにリークされ報道が常に先行する手法であり、この点でも小泉路線と一致する。

いま、「格差社会」の弊害が叫ばれているが、その一因は、企業の利益を優先した「リストラ」の横行だ。それをマネジメントしたのが他でもない経営コンサルタントだろう。
こんな「改革」が国民の生活と未来にどんな展望をもたらすのだろう。百害あって一利もないことは明らかである。


2.「常識が通用しないダーティな大阪市政」の根源は「同和行政」、その総決算のために

(1)「同和行政」の歪みの一端に、犯罪捜査の手が

 「マニフェスト」には、昨秋の関市長辞任の理由の一つに、芦原病院への無担保貸付金(130億円)を環境保健局長時代に決裁してきた責任を挙げたのを受けてか、同病院への焦げ付いた貸付金問題に触れている。これまでタブー視されてきた「同和行政」も「改革」の対象に含んだものとして注目していた。

そして、大阪市の「同和行政」の歴史的歪みの一端が警察・検察の犯罪捜査として明らかになりつつある。

 その一つは、大阪市発注の公共事業を、大阪府同和建設協会(同建協)の加盟業者が独占受注できるよう大阪市が「優遇」していた競争入札妨害事件。

次に、一民間病院である芦原病院への無担保貸付金(130億円)の焦げ付きだけではなく、施設改修・医療機器購入だとした補助金が、目的外に流用されていたことが明らかになり、しかも、その支出から精算まで、市職員が不正を承知で申請から精算までの書類作成を行い、局長決裁が繰り返されていた公文書偽造、背任、詐欺事件。

 さらに、ヤクザと親密な関係にある部落解放同盟飛鳥支部支部長が、大阪市所有(大阪市開発公社)の駐車場経営の委託を受けた財団法人を使って、その収益を毎年数千万円横領していた事件などだ。

長期間にわたり、多額の公金が垂れ流され、横領されてきた。まさに異常事態である。しかし、市役所の中では「同和行政では当たり前」「他でも金額は違っても同じようなことがやられている」という会話が交わされている。むしろ、たまたま現時点で担当者となり、罪に問われている職員への同情の声が上がっている。

(2)いまも続く「解同」言いなりの歪んだ行政、その名は「人権」行政

2002年3月末に地域改善対策財政特別措置法が失効し、同和行政は「終結」した。大阪市でも個人給付は確かに無くなった。しかし実際は、「同和」を「人権」に読み替え、一般行政に潜り込ませ継続されてきた。

私たち市労組や大阪の民主勢力は、大阪市との毎年の予算交渉において、繰り返し同和行政を一般行政に潜り込ませ継続している事を告発し終結を求めてきた。にもかかわらず、一向に見直す姿勢を示さなかった大阪市だった。ここにきてその問題点が白日のもとに晒されはじめた。

大阪市職員の一人として実感していることは、「部落解放同盟」(以下「解同」という)言いなりの「同和行政」の影響は、「法(憲法・地方自治法)に違反して、あんなことが出来るのだから、なんでもあり」という歪んだ風土を行政全体に蔓延させたことだ。そして、「解同」言いなりの行政を批判した職員を「差別者」と決め付け、昇任・昇格で徹底して排除・差別することで、自由にものが言えない職場がつくられ、民主主義が破壊された。

(3)何故このようなことが続いたのか?何故いまになって問題になったのか?

何故30年以上もこんな不正が続いたのかについて以下簡単に述べる。

まず、「解同」の一部幹部による暴力的行政闘争と「窓口一本化」の押し付けが凄まじかったこと、そして、それに屈服した行政という構図だ。部落解放同盟は運動団体として大阪市との交渉を毎年行っているが、そこには市長・助役を含めたトップが出席する。他の団体では考えられない特別扱いである。しかも、「差別のある限り行政は続ける」と約束してきた。また、マスコミにも責任がある。これまで、どんな無法行為が「部落解放」の名で行われようと、タブー視して報道してこなかったのはマスコミ自身である。

 さらに、根本的な問題は、権力者による「政治利用」だ。もともと、部落差別は封建社会の身分制度を維持するために、時の権力者によって創られ、「分断支配」のために積極的に維持されてきた。

 戦後、日本国憲法制定により差別撤廃の条件が広がり部落解放運動の機運も高揚したが、同時に運動の中に「部落排外主義」「反共分裂主義」の潮流が急速に台頭する。当時、大阪では社会党と共産党の革新共闘の力によって革新府政実現が実現していたが、権力者は革新共闘の「分断」のために、「解同」の誤った運動を容認し利用したのだ。

 次に、大阪市の「同和行政」の根の深さを知る人たちから「何故いまになって、このように問題が表面化するのか?」という質問が寄せられている。
軽軽に答える時期でもないかもしれないが、私は次のように考えている。それは、新自由主義にもとづく「構造改革」、経営コンサルタントによる「市政改革」にとって、「同和行政」ほど酷いムダと浪費はないということ。このムダと浪費の清算なくして「市場化」できないのだ。

さらに、ここにきて新たな「政治利用」が始まったといえる。それは、財政危機の根本原因である大銀行・ゼネコンによる巨大公共事業がまだ進められ、破たん処理にさらなる税金投入されている。このことは多くの市民が知るところでもある。しかし、あまりにも金額が大きすぎるため「理解」の範囲を超え怒りに転化しない。ところが、「同和利権」では、小中学校・住宅など身近な公共事業を食い物となり同建協加盟の中小土建業者が登場するし、その額も市民の生活感覚でまだ理解の及ぶ範囲であり、市民の怒りはここで留まる。いま、同和行政に巣食う「談合事件」が暴かれ、不正が正されることは当然のことである。しかし、スーパーゼネコンや大銀行の巨大な不正のカモフラージュに再利用されてはかなわない。

(4)「人権」の名による思想統制、人権啓発・研修こそ止めさせよう

「同和」から「人権」に名を変えて続く「啓発」「研修」、そして教育の場での「同和教育」、これらを正すべき課題とはなっていない。しかし、マスコミで報道されているような「同和行政」の歪みを支えている思想的基盤は「啓発」「研修」「教育」で押し付けられている内容そのものであり、批判者への抑圧である。ここにメスを入れることなくして本当の改革はありえない。

これまで、「解同」や「同和行政」を批判した職員が「差別者」と糾弾され、抑圧され、自由な発言が出来ない風土がつくられたことは既に述べたが、批判者への「差別」を物理的背景にし、「意識改造」のための「啓発」「研修」が続いてきた。思想統制の為のハード・ソフトウエアの関係だ。

ここで、1972年に起こった事件を紹介したい。同和事業指導員(子ども会の指導員)をしていた女性職員が、「解同」の運動に批判的な考えを持っていたため、「解同」や市当局から思想転向を迫られ、長期間にわたり研修と称して中央公会堂の一室に「隔離」「幽閉」された事件だ。職員有志が、女性職員の窮状を告発し改善を求めるビラを市役所の各職場に配布し、「守る会」を結成してたたかった。これに対し、ビラを配布した職員のブラックリストが作成され、その後の人事異動で強制配転が強行された。

実はこのブラックリストを作成したのは、市当局ではなく大阪市職員労働組合(以下「連合市職」という。)の指示によるものだった。「守る会」の会長をした尾崎泰士氏は、職場上司の奮闘にもかかわらずヒラ職員のまま据え置かれた。1990年に提訴した裁判闘争によって勝利し、ようやく係長に昇任したのは退職直前だった。その他、「部落解放運動」の名による「暴力」「人権侵害」事件は数え切れない。

また、2000年4月には、「大阪市人権尊重の社会づくり条例」(いわゆる人権条例)が制定され、「市の責務」「市民の責務」が盛り込まれた。同和行政の永続化の根拠にもなり、市民・職員の思想統制にも通じるものだ。

改憲勢力による国民弾圧法案の策動が急ピッチですすんでいるが、「人権」に名を借りた「啓発」「研修」「教育」「条例」と、思想統制という点で通じるものであり、その終結をめざすとりくみが急務である。


3.正すべき「労使癒着」、守るべき公務員労働者・労働組合の権利について

(1)正されるべき、「労使癒着」の実像

 マニフェストには、「一連のヤミ・カラ・厚遇問題の総括」「不健全な労使関係の実態」など、労働組合への批判を最大限に活用して「市政改革」の必要性が強調されている。
そして、この一年余りの間に手当・福利厚生の廃止・削減がものの見事にすすめられてきた。私たち大阪市労組は、05年1月に「大阪市のいわゆる「厚遇な職員福利厚生」に対する市労組の反省と決意」(ホームページに掲載)を発表し、「廃止も含め、見直すものは見直す」との立場をいち早く表明し交渉に当たってきた。

しかし、見直しの経過は、味噌も糞も一緒くたの攻撃でもあったし、「厚遇」批判に便乗した行き過ぎについて批判してきた。
ここで、正すべきは何なのかをまず検討したい。

上山氏は「自由な発言すら許さない労組による職場統制と人事支配」「労組に半ば奪われている経営権を市長・当局が奪還する」(猪瀬メルマガ)と述べている。前述したように、大阪市の「同和行政」に批判的な職員のブラックリストを連合市職が作成し、それにもとづいて市当局が不当配転を強行した事例などは、その一例だろう。労働組合の魂をファシストに売り渡した行為であり、最も批判されることだ。しかし、上山氏の言うように労働組合だけの責任にする議論には異議がある。当局も共犯である。「労働組合」を使って労働者を支配する市当局も非難して当然である。

(2)公開サイトで糾弾される「組合」

次に、インターネットの公開サイトに「2チャンネル」というのがあるが、2002年ぐらいから「糞大阪市職員労働組合(市職)を糾弾しよう」というサイトが現れ、市職員が多数の書き込みをしていた。一つの労働組合が公開サイト上で、しかも名指しで「糾弾」されるのは、恐らく連合市職が初めてだろう。そこで展開された批判は、組合役員の人格にかかわること、連合市職出身の民主党市議の選挙運動に現役職員がいかに勤務時間中に「活躍」しているかの暴露など、多岐にわたっていた。

労働組合が特定の政党の支持を組合員に押し付けることは憲法違反である。同時に、当局の公然・非公然の認知なくして「選挙運動に専従」することなど出来るものではない。こんなことを「許しあえる関係」は、市長選挙で「ぐるみ選挙」をともにたたかった同志だからこその芸当である。

(3)最大の弱点「条例化」

 さらに、「厚遇」された福利厚生事業についてだ。批判された制度の多くは、市当局と市労連(連合系)との間で、過去に支給されていた一時金のプラスアルファーなどを「転換」するという「労使合意」によるものである。市当局による福利厚生制度等改革委員会が昨年4月1日に発表した報告に「福利厚生は一般に既得権益と捉えられ、見直しがされにくい分野である。特に公務員の場合、かつて給与が民間水準を大幅に下回った時代に賃金の補填手段とされてきた。」「市役所は職員に対して、負担(掛金)と公金支出(補助)と受益の関係を十分に説明してこなかった。そのため、職員においても市民の視点からみて妥当な受益かどうかを自ら問い直すという問題意識が生まれなかった」などと指摘している。

 この分析は誤りではない。後段にあるように、職員は当局からも組合からも中身の説明を受けてこなかった。

市当局のねらいは、大規模開発と「解同」優遇の市政をすすめることに協力し、職場の反発を押さえ込む「労働組合」を育成することだった。そのために、オープンの団体交渉をせずに、非公開の「労使協議会」で全てを決め、職員にも、ましてや議会や市民にも内緒の「労使合意」を結ぶこと。また、末端職制の人事や「連合労組」への批判者の昇進を妨害する「権限」を当局が組合に与えたのだ。

このようなことをしてきた「労働組合」が他に存在しただろうか。「労働組合」を名乗っているからといって、日本の労働運動全体が同一視され、否定的影響を受けることは許せない。また、上山氏やその尻馬に乗ったマスコミのように、全ての悪事が「労働組合」の責任とする立場は行き過ぎである。

(4)守るべき労働者・労働組合の権利について

昨年12月に、全労連のILO要請団に参加する機会を得て、日本の労働組合の無権利状態と労働条件の切り下げに対する抵抗力の弱さを実感して帰ってきた。
大阪市では「厚遇」批判の中で、それこそ一気の激変だった。

そこで私たちが労働者・労働組合として守るべき課題は何なのかの整理が必要だ。(紙面の関係で簡単に触れる)

マスコミで発表を先行した「トップダウン」によって労使協議のルールが破壊された。賃金・手当・福利厚生の変更・改廃には、労使協議・労使合意が必要だ。管理運営事項の拡大など、問答無用の風潮が強まっている。

福利厚生では、互助組合への当局負担「ゼロ」が強行された。1対1なら当然というのが定説だ。地公法42条にもとづく当局責任の放棄である。

 「ながら条例」の改悪、「懲戒処分に関する指針」の作成など、職制による「監視」が一気に強まった。賃金カットされる職務免除でも、当局が認知する活動でしか許可されない。地域住民との懇談や市政改革のとりくみは自治体労働組合運動の生命線だ、労働組合の活動への権利侵害は許せない。


4.「市政改革」の本質に怒る市民・職員のとりくみ

 今年1月12日に局・区長による「マニフェスト」が発表され、市民サービス切り捨ての項目がいきなり市民の前に突き出された。

それまで、「厚遇」「ヤミ」「カラ」の報道に怒っていた市民にとっては、「マニフェスト」の真相に接近した一瞬だった。とりわけ、勤労青少年ホーム(トモノス)・児童館の廃止に怒った市民・運動団体が反対運動は大きく盛り上がった。廃止条例案が3月の大阪市会で全会一致で「継続審議」となった。市長が提案した条例が可決されなかったのは40年ぶりの出来事という。

また、労働組合や市民団体が「黙ってられんわ市民のつどい実行委員会」を結成し、宣伝・交渉にとりくんでいる。これまで、大阪市では幾度かこのような実行委員会が組まれたが、今回ほど波状的に継続的にとりくみが進められてきた経過はない。

私たち市労組も、やられっぱなしではおれない。市民とともに、市民版マニフェストを作るために、6月18日にスタート集会を開く。

単なる批判だけではなく、市民の参加のもと、ともにつくる大阪市政の将来ビジョンづくりに向けいよいよ決意を固めている。

(注)経済財政諮問会議が昨年11月14日に出した「総人件費改革基本指針」の「(2)地方公務員給与」の項に「給与情報等の情報公開等により住民自治を原動力として不適切な手当等の是正を徹底する」というくだりがあるが、大阪市問題の「成果」を踏まえての記述である。この表現は、2005年5月24日に公務員の総人件費削減について論じられた経済財政諮問会議での麻生総務大臣(当時)の以下の発言に由来している。

麻生太郎「集中改革プランのフォローアップや給与情報の公表システムを通じ、住民自治を原動力にするということが一番大事であり、総務省がいちいち介入するよりは、そちらの方がよほど効果があることは大阪市の例ではっきりしたと思っている。人件費の抑制を実施したい。」と述べた。

(表2)上山信一氏が推薦したコンサル企業による随意契約の一覧
地下鉄事業、下水道事業、道路・河川管理、市街地整備、公園管理、市営住宅営繕部事業、環境事業、市バス事業 ボイヤンシー(有)
今後の区政のあり方と区役所業務 (株)UFJ総合研究所
職員の給与・特殊勤務手当・人事制度 (株)日本総合研究所
職員アンケート(職員の意識改革のための調査) (財)大阪市都市工業情報
市税の電子化、住民基本台帳関係システム、市民への新しい広報戦略、総合福祉(生活保護5法関係)、電子自治体推進に伴う財務・会計事務、教職員情報システム、学校事務センター財務会計システム、図書館情報システム (株)野村総合研究所
弘済院付属病院の経営改善 アイテック(株)
総合医療センターの経営改善 あずさ監査法人
クリスタ長堀の経済効果 (財)日本経済研究所
フェスティバルゲートの経営改善 (株)シー・ディー・アイ
(株)アズ マネジメント コンサルティング
新大阪用地事業提案協議、東成区役所・まちの活性化について (株)シー・ディー・アイ
住吉区役所・高齢社会における商店街について (株)関西総合研究所

大阪住民のための情報公開センター調べ

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