3月28日の市会本会議において、自民党による議員提案で組合費のチェックオフを中止する「職員の給与に関する条例の一部を改正する条例案」が提案され、自民党・公明党の賛成、共産党の反対、民主党の退席により、不当にも可決されてしまいました。
可決された条例は、給与条例第27条第4号から「法第52条の規定による職員団体がその構成員たる職員から徴収する団体本来の運営に要する経常的な職員団体費並びに」の文言を削るもので、施行は2009年4月1日からとしています。自民党の提案理由によれば「労使癒着の象徴である職員団体への便宜供与を見直すことは市民の求める」ところとしています。しかし、市労組にとっては、労使癒着などと言われる所以はまったくありません。したがって、「団体本来の運営に要する経常的な職員団体費」としての組合費のチェックオフを中止することが労使癒着を断ち切ることだという主張は、何を根拠にしているかという説明もなく、荒唐無稽な主張といわざるを得ません。
そもそも、労働組合の組合費のチェックオフは、憲法が保障する労働基本権を具体的に保障する労働組合への便宜供与です。このことは、国際労働機構・ILOの結社の自由委員会が公正なチェックオフを使用者が一方的に禁止することは、ILO87号条約「結社の自由および団結権の擁護に関する条約」に違反するという趣旨を述べていることからも明らかです。ILO87号条約を1965年に批准した時にわが国が、国内法の「改正」に際して、労働基準法第24条から公務員労働者を除外し、地方公務員法第25条第2項を設けるなかで、「法律または条例により認められる場合」の公務員の組合費のチェックオフを保障してきたのも国際的な流れに対抗できなかったことによります。これまで大阪市における組合費のチェックオフについては、1957年から労使協定により行われてきましたが、このILO87号条約の批准にあわせて、1966年に「職員の給与に関する条例」を改正するなかで組合費のチェックオフが条例で担保されてきたものです
また、民間労働組合において、長年慣行として行われてきた組合費のチェックオフを当該労働組合と事前協議なしに突然一方的に廃止することは、労働組合の弱体化を狙い労働組合の困惑を期待して行った不当労働行為であるとの地方労働委員会の裁定や地方裁判所の判決もでています。このような事例から見ても、職員団体のチェックオフを中止する条例「改正」については、議員提案になじむものではないうえに、当該労働組合との協議もなしにチェックオフを一方的に中止するということは、議会の行為であったとしても結果として当局の不当労働行為につながるものと言わざるを得ません。それを避けるためにも、議会における自・公による数の力での今回の暴挙に対して、市長が地方自治法に定められている再議権を行使することを強く求めるものです。
さらに、あろうことか労働基本権をとりあげた代償として設置された大阪市人事委員会が、議会から今回の「職員の給与に関する条例の一部を改正する条例案」に対する意見を問われて、「異議ありません」と答えたようですが、なぜ中立の立場を投げ捨ててそのように答えたのか理解に苦しむところです。
今回の自・公による市会でのチェックオフを中止する条例「改正」は、労働組合敵視論を前提にしたものであり、社会進歩に逆行し労使が対等の立場で社会を築くという歴史の常識から外れるもので、国際社会からも笑われるような恥ずかしい行為といえます。また、市労組は、自らの賃金・労働条件の改善だけではなく、市民生活をいかにより良いものにしていくかということについても、真剣に議論し、市民運動と連帯して運動を展開している労働組合です。
今回のように、労使間で培われてきた問題に、数の力を背景に議会の場から介入してくることは絶対許すわけにはいきません。市労組は、常に良識ある市民とともに不当な攻撃に対しては跳ね返していく決意をここに表明するものです。
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