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※民主法律協会より情報提供を受けました
大阪市を解体・分割する「大阪都構想」についての
橋下市長の「箝口令」を批判する
2015(平成27)年2月12日
民主法律協会
会長 萬井 隆令

第1 はじめに

 2015(平成27)年5月にも予定されている、大阪市の地域に特別区を設置し大阪市を廃止することの是非を問ういわゆる大阪都構想の住民投票に向けて、橋下市長は、市職員に対して、「公務員という肩書で職場内での個人的な見解の表明」や「権限を有さない立場での無責任な発言」を慎むようにと発言し、この橋下発言に留意を促す文書が、各職場の管理職に宛てて配布されている。

 橋下市長の発言は、職員がいわゆる大阪都構想(その実質は大阪市の解体・分割である)について、市民とコミュニケーションを図ることそれ自体を禁止し、橋下市長の方針について市民の理解が進むことや疑問が拡がることを阻止しようという思惑に基づくものである。この点、マスコミでも、「職員の間からは事実上の箝口令だと疑問の声も出ている」などと報じられている。

 市職員は、「全体の奉仕者」(憲法15条2項、地公法30条)であるから、本来、市民にとって重大な影響を与える大阪都構想について、市民に対し、大阪市の方針やその結果がもたらすものをできるだけ詳しく伝え、市民が大いに議論し、考えを深めることを支えるべき職責がある。

 橋下市長の発言は、これを阻害しようとするものであって、それ自体が民主主義に反するものといわざるをえない。

 なお、橋下市長の発言は、それが勤務時間内のことを問題としているのか、それとも勤務時間外のことなのか、判然としない。しかしながら、勤務時間の内外によって、市職員の置かれている法的立場はまったく異なるから、この区別をしないことは、それ自体、問題である。

 よって、以下、勤務時間の内外に分けてその問題点を指摘する。

第2 勤務時間内について

1 職務命令の限界

 今回、各職場の管理職にあてて配布されている文書は、行政内部の通知であって、職務上の指示や命令ではないが、仮に同内容の職務命令がなされたとしても、それはあくまで勤務時間内についてのものである。

 しかも、それは以下の限界を有している。

@市民から質問があっても一切答えてはならない、という指示・命令は許されない。市職員は、「全体の奉仕者」として、市民に対する説明責任を負っているのであり、行政の責任を放棄させるような指示・命令は許されない。この点、大阪市職員基本条例4条4項でも、「職員は、市政の透明性の確保に努めるとともに、自らの職務に関し説明責任を果たすよう努めなければならない。」とされているところである。
したがって、市民から、いわゆる大阪都構想(大阪市の解体・分割)に関して質問された場合に、市職員として職務上答えることができるものについては応答したうえで、自身では答えられない事項については別の担当部署に回答を求めてはどうかと助言することは何ら問題ない。

A市職員が、いわゆる大阪都構想(大阪市の解体・分割)に関して、客観的な事実、合理的に予想される事柄を伝えることは何ら問題ない。たとえば、市民から、「そんなこと本当にできるんですか?」との問いが発せられた場合に、現時点での進捗状況を客観的に説明したり、現時点での進捗状況から合理的に予想される実現可能性を説明することは何ら問題はない。また、「職員として、ここまではわかりますが、これ以上はわかりません」と応答したり、あるいは、現場の職員自身が十分な情報を与えられていない場合には「十分な情報がありません」と伝えることは当然のことである。

2 市民に事実を伝えることは職員の責務

 事実に反することを述べることは許されないとしても、市民に対する説明責任を負っていることをふまえれば、客観的な事実や合理的に予想される事柄を伝えることは、推奨されるべきことである。

 大阪市が解体・分割されることになれば、市民生活にどのような影響を与えることになるのかは、市民として、当然、知っておきたい事柄である。そのためには、市長やその側近からだけではなく、現場レベルの市職員からの情報発信が不可欠である。いわゆる大阪都構想(大阪市の解体・分割)に関する現時点での見通しや想定される事態について、「事実」を率直に語ることは、市民に対する責務でもある。

 したがって、市職員がその責務を果たすために事実に関する情報を発信することは、それがことさらに虚偽を述べたような場合でない限り、問題とされる余地はない。

 この点、橋下市長は、何かにつけて「市民が誤解する」と述べるが、市民は、ある市職員の意見が、個人としてのものか、大阪市を代表してのものかを判断する能力を持っている。「市民が誤解する」という主張は、市民の健全な能力を軽視するものと言わざるをえない。

第3 勤務時間外について

1 勤務時間外については職員の言論活動は原則として自由

 勤務時間外については、職務上の指示や命令が及ばないことは明らかであるから、市職員は、法令の制限に反しない限り、いわゆる大阪都構想(大阪市の解体・分割)についても、自由に言論活動をすることができる。この場合、肩書きを付すか、付さないか、場所がどこであるかは、問題とはならない。

2 地公法36条の制限

 市職員は、地方公務員であり、地公法36条により一定の政治的活動が禁止されている。
今回、問題となっている住民投票は、「大都市地域における特別区の設置に関する法律」7条に基づくものであるところ、これは、地公法36条1項の「公の選挙又は投票」に該当すると思われる。そうなると、「特定の人又は事件を支持し、又はこれに反対する目的」で、同条2項各号の政治的行為をすることは許されないということになる。

 しかしながら、同号各号で禁止されている「政治的行為」は、憲法適合性の見地から、限定的に解されている。

 たとえば、同号1号「公の選挙又は投票において投票をするように、又はしないように勧誘運動をすること」にいう「勧誘運動」については、一般に、「組織的、計画的、又は継続的に、勧誘すること」(人事院事務総長発「人事院規則14−7(政治的行為)の運用方針について」)、ないしは「その行為が、組織的計画的にして継続的かつ相応の規模を有するもの」(東京地判昭和40年9月30日判例時報433号56頁)とされており、「選挙に際したまたま街頭であった友人に投票を依頼するような行為は該当しない」ものとされている(前掲「人事院規則14−7(政治的行為)の運用方針について」)。

 同条2項2号以下の政治的行為についても同様であり、そこで禁止されている各行為は、組織をバックにしたかなりの規模のものに限られている。

 したがって、個々の市職員が、住民投票に対して、個別の機会に、個人的な見解を表明したり、賛成、反対の意思を表明したとしても、それだけでは、何の問題も生じない。
それは、公務員の肩書きを付す・付さない、(庁舎管理権による制限を受けない限り)職場の内・外、あるいは何らかの権限を有する・有しないによって変わるものではない。

3 いわゆる政治活動制限条例について

 大阪市は、地公法36条2項5号の根拠に、「職員の政治的行為の制限に関する条例」を制定した。同条例は、同項1〜4号の規制に加えて、市職員に対し、「職名、職権又はその他の行使の影響力を利用すること」などの一定の政治的行為を禁止している。これは、市職員に対する禁止対象となる政治的行為を国家公務員と同じ範囲に拡大したものである。

 しかしながら、国家公務員の政治的行為を列挙した人事院規則14−7も、憲法適合性の見地から、これまでも限定的に解されてきた。

 たとえば、「職名、職権又はその他の公私の影響力を利用すること」を禁止しているが、それは、「上官が部下に対し、選挙に際して投票を勧誘し、あるいは職員組合の幹部が組合員に対し入党を勧誘するためにその地位を利用するような行為」をいうものとされている(前掲「人事院規則14−7(政治的行為)の運用方針について」)。

 したがって、市職員が、市民に対して、政治的意見を表明したとしても、それが市民に対する具体的な職務権限を背景に働きかけたような特別の場合でない限り、「公私の影響力を利用すること」にはあたらない。

 なお、社保庁職員の政治的行為(政党機関紙配布行為)が国公法及び人事院規則14−7違反かどうかが問われた事案で、堀越・世田谷事件・最二小判平成24年12月7日判例時報2174号21頁は、たとえ、これらの法令で禁止されている政治的行為に形式的には該当するように見える場合でも、禁止されるのは「公務員の職務の遂行の中立性を損なうおそれが実質的に認められるもの」に限られるとした。この解釈は、大阪市の「職員の政治的行為の制限に関する条例」の解釈にもそのまま妥当する。

 橋下市長の発言は、こうした一般的な解釈と法的理解を何ら考慮せずに、市職員の政治的行為を、一律に全面的に制限しようというものであって、不当というほかない。

4 地公法の適用されない職員に対する制限はない

 もとより、地公法36条及び大阪市「職員の政治的行為の制限に関する条例」の規制は地公法適用職員に限られており、地方公営企業職員、現業職員、特別職非常勤職員については適用はなく、何ら制限はない。

5 市長と異なる意見を表明しても信用失墜行為にはあたらない

 橋下市長は、みずからの意に反する事実や意見を市職員が表明することは信用失墜行為(地公法33条)に該当するかのように考えているふしがある。

 しかしながら、信用失墜行為とは、「その職の信用を傷つけ、または職員の職全体の不名誉となるような行為」を指し、「その職の信用を傷つけ」とは、「たとえば、職務の執行に当たって職権を濫用したり、収賄を行って職務上便宜をはかることなど」が、「職員の職全体の不名誉となるような行為」とは、「たとえば、職員が勤務時間外に飲酒運転を行ったとき、常習の賭博を行ったとき、道徳的に強い非難を受けるようなスキャンダルに関係したときなど」が、これに該当するとされている(旧自治省出身である橋本勇氏の「逐条地方公務員法」)。

 これは常識的な説明であるが、既に見たとおり、地方公務員は、公職選挙法や地公法36条等の制限を除けば、政治的行為は自由にできるのであるから、たとえ、それが市長の意向と違うものであったとしても、それだけでその政治的行為が信用失墜行為となるものではない。

 これもまた、公務員の肩書きを付す・付さない、職場の内・外、あるいは何らかの権限を有する・有しないによって変わるものではない。

第4 職員団体・労働組合の言論活動

 第3までの議論は、あくまで、個々の職員が、個人の立場で活動する場合のことである。

 これに対し、大阪市職員の加入する職員団体ないし労働組合(以下、労働組合等)が、労働組合等としての政治的意見を表明したり、その実現に向けて活動することには何の問題もない(国労広島地本事件・最三小判昭和50年11月28日民集29巻10号1698頁)。

 また、労働組合等は、使用者である市長と対抗関係にあって、政治的意見を異にすることがあっても何ら不思議なことではない。労働組合等が市長の意見と異なる意見を表明したからといって、それが違法とされる余地はない。

 裁判例を見ても、労働組合等の言論は、指摘する具体的事実が真実に沿ったものであれば、論評は自由とされ(香焼町事件・長崎地判平成2年11月6日労働判例601号76頁)、当該記載が真実である場合、真実と信じる相当の理由がある場合、あるいは労働者の使用者に対する批判行為として正当な行為と評価されるものは適法とされている(三和銀行事件・大阪地判平成12年4月17日労働判例790号44頁)。

第5 結論〜職員の市民的自由である言論を規制することはできない

 橋下市長の発想には、組織のメンバーは、組織上部の意思と異なる意見を表明すること自体が許されないとの考え方があると思われる。

 それは、橋下市長が最初に大阪市長に当選した直後、市職員がマスコミのインタビューに答えて、橋下市長の語る「民意」に対する違和感を口にしたところ、橋下市長が激怒して、当該職員に反省文を書かせた事件を想起させる。あるいは、2012(平成24)年7月、大阪市従業員労働組合及び同労組環境事業支部が連名で、ごみ収集事業の民営化・非公務員化によって市民のセーフティネットが危ぶまれている旨記載したビラを配布したところ、これが信用失墜行為であると決めつけた事件でも、同様の考え方が示されている。これに対しては、多方面から批判が寄せられたところである。

 こうした橋下市長の発想は、市職員の言論の自由を頭ごなしに否定しようとするものであって、民主社会において許されない考え方である。

 いわゆる大阪都構想(大阪市の解体・分割)は、市民にとって、経済活動のみならず生活全般にわたって極めて大きな影響を与える。しかも、ひとたび大阪市の解体を選択したならば、それは後戻りのできない結果をもたらす。したがって、市民の判断に当たっては、この上ない慎重さが求められる。

 そして、市民が慎重な判断をするためには、賛成、反対に関わらず、十分な情報が提供される必要がある。この点、大阪市で現に働いている市職員が、職場の実態をふまえて提供する情報は、市民の判断にとって極めて重要な判断材料となりうる。

 しかるに、そうした現場の市職員からの情報発信が禁止され、大阪市の解体・分割を推進する橋下市長からの情報しか与えられないことになれば、市民は誤った選択をさせられかねない。

 それは民主主義に反するのみならず、大阪市民(のみならず大阪市の周辺に居住し、あるいはそこで働く者)すべてにとって、将来に禍根を残しかねないものである。

 そのようなことにならないよう、大阪市に働く市職員とその労働組合等が、事実にもとづく率直な情報発信をされることを期待するものである。

以上

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