2015年10月13日 全大阪労働組合総連合 事務局長 菅 義人
9月30日、大阪市は職員基本条例による初の「分限処分」として、2名の免職(解雇)と1名の降任(降格)を公表した。懲戒処分や病気での長期療養などではなく、「能力不足」を理由とした免職(解雇)は異例だと報道されている。
橋下市長の主導で制定された職員基本条例では、5%の職員が必ず5段階の最下位にされる評価制度が導入され、最下位が2年連続の場合、「分限処分」を前提にした「適正化指導」の対象とされている。しかし、評価を賃金や雇用に直接結び付けること自体が問題であり、最下位が恣意的につくられるなど論外である。今回の免職(解雇)は、公務でも民間でも許されない、強権的な「首切り」以外の何ものでもない。
言うまでもなく、「解雇」は労働者の生活基盤を根底から崩すものである。労働契約法16条は、「解雇は、客観的に合理的理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして無効とする」と定め、労働者を保護するために解雇を厳しく制限している。
ところが、職員基本条例は、自治体の条例を使っての解雇を「正当化」するものである。憲法や労働基準法は、労働者保護を基本原則としており、公務員の労働基本権が不当に制限されている中であればこそ、その精神はなおさら尊重されねばならず、条例を盾に恣意的な解雇がまかり通ることがあってはならないことは当然である。
これらの観点からみれば、「能力不足」を理由に解雇者をつくりだす職員基本条例は、まさに解雇条例と言わねばならない。もし、条例の目的が組織全体の公務の能率を上げることにあるとするならば、「雇用者の責任」として、分限処分を招くことの無い職場運営と人材育成こそ求められる。
橋下市長はこれまで、自らの意に沿わない職員の言動を強権的に抑え込むと同時に、分限処分に積極的な考えを示してきた。今回はさらに、「国政でも地方政治でも、公務員の身分保障に切り込んだのは大阪維新の会だけ。仕事ができなければ辞めてもらう。公務員の給料は税金なので当たり前。できない公務員に税金を使うなら住民サービスに回す」としている。しかし実際には、この7年余の橋下維新政治は、住民サービスを削り続け、それに異を唱え、また反対する労働者や市民を目の敵のように攻撃し続けてきている。「ダブル選挙」を目前にしての今回の免職(解雇)処分と橋下市長の主張は、政治目的によるものであり、2重3重の姑息な態度だと言わざるを得ない。
いまの大阪市政と大阪府政に求められるものは、安倍暴走政治から住民のいのちとくらしを守ること、そのために職員が住民の声をよく聴き、いかせる職場運営である。
大阪労連は、橋下市長による強権的労務管理・職場運営に反対するとともに、労働者を選別し解雇する不当な職員基本条例の撤回、住民本位の府市政とそれを支える民主的な職場運営への改善を強く求め、引き続き、公務・民間すべての労働者の雇用を守るためにたたかうことを表明するものである。
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