1 本日、大阪高等裁判所第2民事部(田中敦裁判長)は、橋下徹前大阪市長が、2012年2月に実施した「労使関係に関する職員アンケート調査」について、これが職員の団結権を侵害し、また、プライバシー権を侵害する違法行為であると認定し、国家賠償請求を認容する判決を言い渡した。
2 判決は、@組合活動への参加の有無及びその態様を訊く質問(Q6)、組合加入の有無及びその理由について訊く質問(Q16)について、憲法28条の団結権を侵害するとし、A特定の政治家を応援したか否か及びその態様を訊く質問(Q7)、「紹介カード」配付を受けた事実の有無及びその態様を訊く質問(Q9)について、憲法13条のプライバシー権を侵害すると判断した。
そして、アンケートへの回答を求めた以上、橋下前市長には、アンケートが職員の権利を侵害しないよう確認すべき注意義務があるところ、違法な質問によって職務上の注意義務に違反し、国家賠償法上の違法行為を行ったとして、原告一人あたり金5000円の損害賠償を認めた。
もっともこの判決が、1審で団結権侵害が認められていた組合費の使途に関する認識を訊く質問(Q21)について、質問によって組合員が組合費の使途に不明朗な点があるとの印象を抱いたとしても組合の自治により解消すべき問題として、組合を弱体化させるものとはいえないとして団結権侵害を否定したことは、大阪市の不当労働行為意思に目をつぶるものであり、この点は強く非難するものである。
3 本判決の意義は、橋下前市長が、大阪市職員の憲法上の権利を違法に侵害したことを明確に認め、その違法行為を1審に引き続いて断罪したことにある。日本国憲法は、権力者により国民の自由・権利が不当に侵害されないよう、その行為に縛りをかけているが、本判決は、不十分な点はあるものの、この立憲主義という憲法の本来的役割に立ち返った判決であるということができる。
職員は、本件アンケートを強制されることで、自らの自由・権利と自らの尊厳を守りたいという思いと、回答しないことを理由に懲戒処分に付されるかも知れないという恐怖の中で、さまざまな葛藤と痛苦を受けた。橋下前市長、吉村市長らは、この判決を受けて自らの行為の誤りを認め、本件アンケートの対象となった全職員に対して真摯な謝罪を行うべきである。
4 橋下前市長は、就任直後から、労働組合を敵視し、職員を統制しようとしてきた。その手段として行われたのが、組合事務所の明け渡し請求、便宜供与の全面禁止などであり、その多くは裁判所や労働委員会で違法、不当労働行為との認定を受けている。
一方で、橋下前市長は、職員の労働条件を悪化させ、また、市民サービスを切り下げる施策を次々と打ち出してきた。橋下前市長の違法で強引な手法は、結局は市民の暮らしを切り捨て、権利や自由を押しつぶす役割を果たしているのである。
原告団・弁護団は、こうした橋下前市長の真の狙いを暴露し、職員個人の自由・権利のみならず、市民の暮らしや、その自由・権利を守るためにも、さらに一層、奮闘するものである。
2016年3月25日
大阪市思想調査国家賠償請求訴訟原告団
同弁護団 |